
給与や事業収入以外の所得は「一時所得」「雑所得」などに分類して課税される。一時所得とはどのような所得か、一時所得の具体例や税率、課税額の計算方法などをまとめた。
目次
所得には、給与や事業収入以外にも様々な種類がある。それぞれの所得は所得税法に従って課税対象となるが、所得の種類によって控除額(所得から差し引かれる金額)や税率が異なる。
特に、生命保険の満期金など、給与以外のまとまったお金が入ってきた場合に「一時所得」なのか「雑所得」なのか、どれくらい課税されるのか悩む人は多いだろう。
本記事では、「一時所得」の内容と税率、所得税の課税対象となる金額の計算方法について解説する。
一時所得とは?該当する収入と雑所得との違い
一時所得の税法上の扱いを知るために、まずは「一時所得」の定義から見てみよう。よく混同されがちな「雑所得」との違いも押さえておきたい。
■一時所得は営利目的でない臨時の所得のこと
一時所得とは、営利を目的とした継続的な所得「以外」の所得を指す。つまり、労務や役務の対価(労働やサービス提供の対価)で支払われる収入は、本業以外からもたらされるものであっても一時所得には該当しない。また、資産の譲渡により対価を受け取った場合も譲渡所得に分類されるため、一時所得にはならない。
※参考:No.1490 一時所得|国税庁
■一時所得と雑所得の違いは?税率は違う?
「雑所得」とは、給与所得や事業所得、不動産所得などに該当しない所得を言う。例えば公的年金や副業の所得などだ。
「一時所得」と「雑所得」の違いは、営利目的か否かと継続性の有無にある。雑所得の対象となるのは、ある程度の継続性がある所得。また、営利目的である場合も雑所得に分類されるケースが多い。
一時所得と雑所得は、どちらも控除額や経費分を上回った金額が課税所得として他の所得と合算され、所得税の課税対象となる(総合課税)。
つまり、一時所得や雑所得に個別の税率はなく、課税所得の合計額によって税率が決まる仕組みだ。ただし、課税額を決める前段階の所得計算(控除額や課税範囲)においては、一時所得と雑所得では計算方法に違いがある。
※参考:No.1500 雑所得|国税庁
一時所得の税率を調べるための計算方法
先述の通り、一時所得は他の所得と合算した上で課税される「総合課税」の一つだ。
ただし、一時所得があれば即課税されるわけではなく、一時所得のみの特別控除額や計算式がある。詳しく見ていこう。
■一時所得が年間50万円以下なら課税対象外
一時所得には、年間最高50万円までの特別控除枠がある。一時所得の金額が50万円を下回る場合は所得税の課税対象となることを覚えておこう。
また、50万円を超えた場合でも所得額を求める家庭で差し引ける金額があることもチェックしておきたい。
■一時所得の「所得金額」と「課税金額」の計算する方法
一時所得の「所得金額」を求める際は、以下のように計算する。
一時所得の所得金額=総収入金額-収入を得るために支出した金額(※注)-特別控除額(最高50万円)
(※注)の収入を得るために支出した金額とは、一時所得を得る上で直接必要とした金額だ。たとえば、フォトコンテストの賞金を得た際、エントリー費用やフィルム代、交通費などがかかっていれば、その金額を賞金額から差し引くことができる。
一時所得の「所得金額」が50万円を超える場合は、その金額の半分が「課税金額」として他の所得に合算される。つまり、上記の計算式に、さらに「×1/2」をした額が一時所得の課税金額だ。
■一時所得の税率は「総所得額」と「所得税の税率」で決まる
上記の式で求めた一時所得の課税金額と、その他の所得を合算することで、所得金額に応じた税率が決まる。
所得税の税率は以下の通り。金額が大きいほど税率が高くなるよう設定されている。
【所得税の税率】
課税される所得金額 |
税率 |
控除額 |
1,000円から1,949,000円まで |
5% |
0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで |
10% |
97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで |
20% |
427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで |
23% |
636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで |
33% |
1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで |
40% |
2,796,000円 |
40,000,000円以上 |
45% |
4,796,000円 |
一時所得は確定申告が必要?
一時所得があった場合、確定申告をする必要があるのだろうか。確定申告が必要なケースと不要なケースを見てみよう。
■一所得で確定申告が必要なケース
給与所得者の場合は、給与所得以外の合計所得が20万円を超えると確定申告が必要となる。たとえば、一時所得が50万円以下で課税対象外であっても雑所得や副業収入などがあり、課税額が20万円以上となる場合は確定申告が必要だ。
■一時所得で確定申告が不要なケース
一方、以下のようなケースでは確定申告は不要となる。
・給与所得や退職所得以外の所得が一時所得のみ、かつ一時所得の総収入が90万円以下の場合((90万円-50万円)×1/2=20万円となるため)
・給与所得や退職所得以外の所得額が、一時所得を含めて年間20万円以下の場合
■一時所得が1円でもあれば住民税の申告は必要
なお、確定申告とは所得税を確定させるための申告手続きであり、住民税に関しては1円でも収入がある場合、申告が必要となる。住民税のみを申告する際は、各自治体の方法に沿って手続き(窓口提出、電子申告など)をする必要がある。まずは住まいの自治体に問い合わせてみよう。
一時所得に該当するのはどんな収入?具体例をチェック
一時所得の具体例は、国税庁のホームページに以下のように記載されている。
(1)懸賞や福引きの賞金品(業務として受けるものは除く)
(2)競馬や競輪の払戻金(営利目的かつ継続的なものは除く)
(3)生命保険の一時金(業務として受けるものは除く)や損害保険の満期返戻金等
(4)法人から贈与された金品(業務に関連したもの、継続性のあるものを除く)
(5)遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等
(6)資産の移転等の費用に充てるため受けた交付金のうち、その交付の目的となる支出に充てられなかったもの
よくある身近な例で見ていこう。
※参考:No.1490 一時所得|国税庁
■一時所得に含まれるもの1:懸賞や賞金
雑誌の懸賞や懸賞サイトの懸賞金、福引でもらった賞金・景品は一時所得に該当する。公募の受賞やスポーツ大会の入賞でもらった賞金も一時所得だ。金額が50万円を超える場合、超過部分の2分の1に対して所得税がかかる。
■一時所得に含まれるもの2:競馬などギャンブルの払戻金
競馬や競輪、競艇といった公営ギャンブルで得た払戻金も一時所得に含まれる。払戻金の年間受領額から年間投票額を差し引いた額が50万円以上となった場合、その2分の1が一時所得金額となり課税対象となる。
申請時には、開催場所・開催日・受領額・投票額のデータが必要となる。
■一時所得に含まれるもの3:保険の一時金・満期金
生命保険や損害保険の一時金・満期金も一時所得に該当する。受け取った金額から支払済の保険料を差し引いた額が50万円以上であれば、それに2分の1を乗じた数が課税対象額だ。
なお、一時金を一括で受け取った場合は「一時所得」となるが、年金として複数回に分けて受け取る場合は「雑所得」に該当するため注意したい。
保険の契約人と受取人が異なる場合は、所得税ではなく贈与税や相続税(契約人死亡時)の対象となることも覚えておこう。
■一時所得に含まれるもの4:法人等から贈与された金品
法人企業や団体・組合などから50万円を超える金品を贈与された場合は、超過分の半分が一時所得の課税額に該当する。業務と関連のない収入が対象だ。
身近な例として、ふるさと納税の返礼品などが挙げられる。
■一時所得に含まれるもの5:遺失物等の報労金等
落とし物や埋蔵金などを拾得した場合、拾得者は金品の5~20%を持ち主に請求できる。持ち主が現れなかった場合は、拾得物をすべて受け取ることも可能だ。このような報労金も一時所得に該当する。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部