「テレビ電話」に抵抗を抱くシニアには「写真スタンド」「デジタル時計」として置いてもらう
「シニアの方々は新しい通信機器に苦手意識を持つことが多いので、テレビ電話だと言うと『自分には無理』と使ってもらえないことも多い。だから最初は『家族のアルバムを見ることができる台だよ』と言って置かせてもらうことを想定しました」(江部氏)
つまり、テレビ電話に対する心のハードルを下げるために、あえて入れている機能なのだ。
わが家にあてはめてみても、それでなくても義母はLINEをうまく使えなくなってから不安を抱くようになり、「変になったら困るから」とLINE画面を触ることにも警戒するようになった。ましてや「テレビ電話を置く」と言ったら「そんなのは無理」と言いそうだが、「アルバムを見ることができる台」なら、抵抗なく置いてくれそうだ。
さらに、テレビ電話機能もアルバム機能も使わない時は、卓上カレンダー・時計としても利用できる。確かに時計であれば、電源を切られてしまう心配もない。
「高齢化や認知症が進むと今日が何日で何曜日か分からなくなりますが、大きな文字、大きな画面で見やすいTQタブレットは時刻が見やすいと歓迎されています」(江部氏)
「薬を飲む時間だよ」「病院に行く日だよ」など、わざわざ電話するほどでもない内容をリマインドすることもできる
見守りIoT(アイオーティー)以上、監視カメラ以下
遠距離に住む老親の安否確認には監視カメラなどもあるが、プライバシーが侵害されると嫌がる親も多い。そういう親のために、メールで湯沸かしポットの使用状況を知らせるなど、IoT(アイオーティー)の「見守り」機能がついた商品もある。だが、そうした間接的な見守りでは頼りないと感じる人もいる。TQタブレットはシニア世代のプライバシーに配慮しつつ、子世代の不安も解消できるツールといえる。また見守りツールや監視カメラと違い、相互コミュニケーションが可能なことも差別化要素となっているのだろう。
江部氏によると、TQタブレットのメインユーザーは、介護が必要な親と離れて暮らしていて様子がわからない心配を抱える50代後半から60代の家族。タブレットを使用する側のボリュームゾーンは、要介護1から要介護3くらいのシニアだそうだ。「もちろん要介護4から5ぐらいの方でも使っていただけますが、そういう方々だとボタンがあると必要がなくてもつい触れてしまうというシーンが想定されますので、完全にボタン操作がない仕様にしました。我々は操作させないタブレットを目指しているので、発売後ももっとシンプルにできないかと追求し、UXを進化させ続けています。今後はスマホ画面も、もっとシンプルにしていきたいです」(江部氏)
最近、同じようにシンプルな使い勝手を売りにしたシニア向けのテレビ電話も見かけるが、TQタブレットの振り切ったシンプルさを見た後だと正直、「いらない機能がけっこう多い」「これだと使ってもらうのは難しそう」と感じる。現在、発売10か月の累計で900台以上が売れているそうだが、正直、もう2桁くらい多く売れていい商品では?と思っている。スタートアップの第一号商品なので、存在自体が知られていないのだろうが、使用者のクチコミで認知が広がりつつある。実際に使用してその便利さを実感したメディア関係者からの取材申し込みもあったそうだ。筆者もレンタルを申し込んでいるので、実際に使ってみた感想を追ってレポートしたい。
取材・文/桑原恵美子
取材協力/TQコネクト株式会社