
厚生労働省の推計によると、2025年には75歳以上の人口が全人口の約18%を占めるという。シニア世代の増加とともに増えているのが、働きながら親の介護をする「ビジネスケアラー」。地方に住む親のケアをしたくても、仕事の都合で都市部を離れられない「遠距離ビジネスケアラー」も増えており、その多くが離れて暮らす老親の安否確認や、日常的なコミュニケーションの難しさを感じている。
デジタル端末が苦手なシニアや、要介護者に特化して開発
筆者にも、地方の施設に入所している老齢の義母がいる。幸いiPadは使いこなせるので、コロナ禍の面会禁止期間中もLINEで日常的な会話ができ、コミュニケーションに不安はなかった。しかし最近になって、持病の悪化で指がうまく動かせなくなりLINEに文字を打ち込めなくなった。
さらに最近は、携帯電話の使用もおぼつかなくなり、コミュニケーションの頻度が激減。LINEに代わるいい方法を探していたが、今から新たなデジタル端末をおぼえてもらうのが不可能なため、ほぼあきらめ状態だった。そんな時、知り合いの編集者に教えてもらったのが、高齢者や、寝たきりの要介護者用に特化して開発された「TQタブレット」だった。
聞けば、タブレット側はほぼ操作無しでテレビ電話が使えるのだという。本当にそんなことが可能なのだろうか。同商品を企画したTQコネクト株式会社取締役副社長の江部宗一郎氏に話を聞いた。
TQコネクト株式会社取締役副社長の江部宗一郎氏。施設にいた祖母とコロナ禍で面会できず、コミュニケーションがとれないまま亡くなってしまった原体験から、TQタブレットを企画した
スマホのアプリから通話すると、タッチレスで自動的にテレビ通話が始まる!
2024年5月に発売された「TQタブレット」。本体価格が55,000円(税込み、以下同)、初期登録料が11,000円、合計66,000円で、それ以降にかかるのは通話料のみ。レンタルプランは初期登録料+タブレット使用料が21,780円、月額6,578円(契約期間は4か月からで、7か月以降から割引価格が適用され、最大20%割引)
実物を見せてもらってまず驚いたのが「テレビ電話」からイメージしていたより小さいサイズ(ちょっと大きめの写真立てくらい)だったこと。そして画面のシンプルさだった。表示されているのは「家族と話す」「アルバム」「お知らせ」の3つで、日常的に使うのは「家族と話す」「アルバム」の2つだけだという。
親とテレビ電話で話したい時には、スマートフォンの専用アプリから発信するだけ。10秒後には、タブレット側はタッチレスで自動的にテレビ通話が開始される。つまり、タブレット側の操作は一切不要なのだ。
逆にタブレット使用側がテレビ通話で話したい時には、「家族と話す」をタッチすれば、スマホに「電話してほしい」という通知が届く。文字を打つことができない義母でも、これなら問題なく使えそうだ。通話が可能なのはアプリに登録した10名のみなので、知らない人からかかってくる心配もないというのも安心。
スマートフォンの専用アプリから発信すると、自動的にテレビ電話がスタートする
通話時間を予約すれば、グループ通話もできる。江部氏によると、よく使われているのが誕生日や年末年始などのイベント時。「12月31日と1月1日は、はいつもの3倍ぐらいグループ通話がありましたので、やはりご家族でのイベントなどでグループ通話を使われる方が多いようです」(江部氏)。
使われ方として印象的だったのは、孫の結婚式に参加できない祖父母にスマホで撮影してタブレット越しに見てもらい喜ばれた例。また病院に入院中で、応援している野球チームの試合を見ることができない親に、スマホでテレビ画面を映して送って感謝されたという例もあるという。
また、これまではFAXで送っていた手紙や文書を画面に映して見せられるようになったので、FAXが不要になったという声も。「基本的に新規事業というのは何かのリプレイス(置き換え)なのですが、我々は固定電話やスマホ、FAXのリプレイスができていることで、ニーズが広がっているのではないかと見ています」(江部氏)
SIM内蔵だから、届いたらすぐ使用可能。病院でも使える
その話を聞いて「病院でも使えるのか」と驚いたが、江部氏によると、TQタブレットはスマホ同様SIM内蔵なので、インターネットネット回線の契約やWi-Fiの設定などをしなくても、届いたら電源を入れるだけですぐに使えることも特徴だという。家族と同居しているシニアが、ペットや世話をしている植物の様子を見るために、入院期間中だけレンタルする例もあるとのこと。現在の利用者の環境は施設入居者と自宅がほぼ半々。施設入居者の内訳は、8割が介護施設で2割ほどが病院だという。高齢になるほど入院を繰り返すことが多くなるので、病院でも手軽に使えるのはありがたい。
だがここで、素朴な疑問が…。シニアが使いやすいように機能を絞るなら、「家族と話す」だけでいいのでは?正直、「アルバム」って、いらなくない…?だが江部氏によると、この「アルバム」機能こそが、通信機器に苦手意識を持つシニア層に使ってもらうための秘策なのだという。