
昨今、高校の制服がまた新たな進化を見せている。
一流デザイナーが手掛けるファッション性を重視した制服やストレッチ性など素材にこだわったアイテムも登場する中、近年増えているのがパーカーやハーフパンツを制服として採用する学校だ。
新しい制服を発表した岡山県の倉敷翠松高等学校
令和に入ってから私立公立問わず、パーカー制服が増え始めたらしく、生徒たちの選択肢を増やして着まわせるなどの楽しみを与えたいとの思いも学校側にあるという。
個性や多様性を尊重する昨今、学校の制服にもその波は見てとれる。生徒一人一人が自分らしさを表現しやすい制服が今求められているのかもしれない。
そこで今回、2年前に「デザイン」や「過ごしやすさ」を重視した、新しい制服を発表した岡山県の倉敷翠松高等学校を取材した。
パーカーやハーフパンツも取り入れ、1000通り以上のコーディネートを楽しめる制服を導入した理由、制服に込めた思いを広報部の上森さんに聞いた。
――新制服導入のコンセプトから教えてください
「昨今の気候の変化に対応するなどの「機能性」に加えて、「多様性」を重視する社会へ変わっていく中で、制服ももっといろいろなバリエーション(コーディネート)を持つべきであるというコンセプトで新制服を導入しました」
――以前と比べ、どう変わったのでしょうか?
「それまでは夏服・冬服ともにブレザーをメインに全員同じアイテムを購入してもらっていましたが、新制服では全員購入の「正装スタイル」セットの他は自由購入という選択の自由度を増やしました」
「女子はスカートまたはスラックスから選べますし、パーカーとハーフパンツなども自由購入のオプションアイテムとしてあります。素材もオールシーズン着用可能なもので、夏物・冬物を買わなくてもよいため、保護者負担も以前よりも軽減していると思います」
部活動も盛んな倉敷翠松高校。全国大会へ出場する部も多く、部活動に励む生徒たちが動きやすい制服を目指したとか。
新アイテムには、自由購入の「パーカー」「ハーフパンツ」、「オプションスカート」(ピンク・ブルー)に加え、初採用された女子用スラックスも登場。
かつての制服にはなかったアイテムが揃い、比較的自由なコーディネートが可能となった。
そんな制服の魅力もさることながら、学校公式HPの制服紹介サイトがまた凄い。アパレルブランドのカタログ並みの作りが印象的だ。
「制服リニューアルを大々的にアピールすべく、プロのモデルさんを起用して「新制服スタイルブック」を制作しました」(広報部 上森さん)
また、オープンスクールでは体育館にランウェイを設えて、ファッションショーを開催。その時は在校生がモデルを務め、盛り上げたという。単なる制服リニューアルだけではない、学校側の新たな戦略、こだわりを感じる。
新たに見えてきた「変えるべきこと」と「変えてはいけないこと」
新制服を導入したことで、全国の中学生からの資料請求や問い合わせが増えたという倉敷翠松高校。広報部の上森さんは「入学者数が増えた理由の一つはこの新制服が担っているかもしれません」とも話してくれた。
実際に新たな制服に身を包み、スクールライフを謳歌する生徒はもちろん、親御さんからも嬉しいコメントが寄せられているという。
「式典以外の普段の授業ではジャケットよりパーカーの方が動きやすいため、着用する生徒が多いです。また、夏にエアコン使用の教室でも、長そでシャツやポロシャツの上にパーカーを着用することで個別に体温調節がしやすいようです」
「また、新制服のオプションは自由購入なので、保護者からは費用負担も思ったよりも多くなくて安心という声を聞きます」
おしゃれや個性を規制され、がんじがらめだった筆者の学生時代とは違い、多様性に配慮した学校教育の新たな姿がそこにはある。
「毎日着用する制服だからこそ、実用性が求められているはず。パーカーやハーフパンツなど動きやすいもの、手入れが簡単な完全ノーアイロンの長そでシャツはオプションでピンクとブルーから選べるなど、制服でも個性を表せるよう選択肢を増やすニーズがあるのではないかと思います」
こんな調査結果がある。
関東の高校生男女を対象に「学校で不要だと思う校則」についてアンケートを取ったところ、「髪色や髪型の指定」、「メイク禁止」などが上位にランクインする中、「セーターやパーカー等の着用禁止」を支持する声も多かったという。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000161.000026876.html
これは、ティーンに特化したマーケティング&プロモーション支援を提供する株式会社アイ・エヌ・ジーが調査したものだが、そんな声に応えて制服を刷新する学校が増えているのかもしれない。
少しずつ変わりゆく学校の規則や教育の在り方。これからどんな変化を見せていくのか?
「今回の新制服導入を機に改めて「変えていくべきこと」と「変えてはいけないこと」があるということを再認識しました。時代のニーズをしっかりとらえながら、これからも一人ひとりの個性を大切にする教育を守り続けていくことが本校の役割だと考えています」
取材協力
倉敷翠松高等学校
文/太田ポーシャ
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