
生活のちょっとした負担が軽減し楽になれば、人々の生活の質が向上する。また、環境負荷や社会問題が軽減することで、社会全体のウェルビーイングも向上する。企業はそれぞれの課題を見つけながら、人々や社会にとって良い商品やサービスを展開している。
トレンド発信企業19社が『2025年春夏ネタマッチ』に集結
そんな企業が一堂に会するイベントが開催された。食品メーカーやテープ材メーカーなど、複数企業が集結する『2025年春夏ネタマッチ合同記者発表会』だ。同発表会では企業によるプレゼンが行われ、実際に商品を説明しながら交流できるブースも展開されている。2025年の最新トレンドや新商品の紹介だけにとどまらず、流通や消費者動向、新商品誕生の舞台裏、企業が掲げる理念、取り組みなども知ることができる。
参加企業は、理研ビタミン、医食同源ドットコム、ニチバン、丸大食品、ヤマサ醤油、マルハニチロ、ハチ食品、霧島酒造、ライフコーポレーションのナチュラルスーパーマーケット『BIO-RAL』、CJフーズジャパンの美酢、日本緑茶センター、ふじや食品、三幸製菓、大塚製薬、キング醸造、久原醤油、一蘭、餃子計画、エスビー食品といった、業界大手企業や地方の優良企業、世界に展開する企業など19社。その他に、新商品を多角的な視点から審査した『新商品グランプリ』を主宰する日本アクセスも参加した。
“Soy(大豆) + Solution(解決)”=Soylutionで地球上の環境問題に応える大塚製薬
参加企業の中には、日々の生活を“楽”にするための商品開発や、環境や社会問題への貢献など、人々や社会にとってウェルビーイングにつながる取り組みを行っている企業も多く見られた。
例えば理研ビタミンは、消費者の生活の負担を軽減するための商品を開発。新商品『パッとジュッと(R) ねぎ塩麹チキン用/甘旨ヤンニョムチキン用』は、近年の時短や簡単料理のニーズに応えたもの。特に共働きで子育てをする世帯では、疲れた時や忙しい時に「メニュー決めや下ごしらえの手間を省きたい」といった声があがっている。
理研ビタミンの新商品『パッとジュッと(R) ねぎ塩麹チキン用/甘旨ヤンニョムチキン用』
同商品は、パサつきがちな鶏むね肉でもジューシーに焼くことができる、解凍いらずの下味冷凍用おかずの素。ジッパー付きの同商品の袋の中には下味が入っており、時間に余裕がある日に切った肉を袋に入れて揉み込む。その後はジッパーを閉めて冷凍庫で保存ができる。食べたい日に凍ったままの肉を袋から取り出し、大さじ1の水を加えて焼けば、料理が完成する。調味料をまぜる手間も、冷凍肉を解凍する手間も省くことができる。
食事作りは毎日のこと。仕事や子育てなどで日々忙しい中、毎日メニューを考え下ごしらえするのは地味に大変なことだ。メニューを考える手間だけでなく、味付けまで省略することができ、“今”ではなく“未来”の食事の準備ができるというのはタイパも良い商品といえる。生活を“楽”にして他に時間を割くことができるようになるため、人々のウェルビーイングにも貢献しているだろう。
また、大塚製薬は人々の健康や環境を考えた商品を展開している。同社の大豆バー『SOYJOY』ブランドからは、『SOYJOY 黒ゴマ』が登場。2006年に誕生した『SOYJOY』は、植物性タンパク質など豊富な栄養を含む大豆に注目した商品。大豆をまるごと粉にしたグルテンフリーの生地にフルーツやナッツなどの素材を加えた低GI食品だ。
大塚製薬の大豆バー『SOYJOY』ブランドからは、『SOYJOY 黒ゴマ』
近年はプラントベースフードを展開する企業も増えているが、大塚製薬は06年という早い段階から大豆の持つ可能性に着目。“Soy(大豆) + Solution(解決)”=Soylutionをテーマに、大豆を丸ごと使用した大豆粉を使用することで環境負荷を軽減し、地球上の健康や環境問題に応えていく。
“Soy(大豆) + Solution(解決)”=Soylutionを掲げている
近い将来に世界人口が90億人を突破するといわれている中、タンパク源のひとつである牛肉を1kg作るには、大豆など穀物を10kg使用するといわれている。同じ量の牛肉に対し、大豆を生産する時に必要な水の割合は50分の1に、エネルギーは20分の1に節約できるというデータもあることから、「もし大豆を直接人々が食べることができれば、地球上の健康問題や環境問題の解決にもつながるのではないか」という思いで、Soylutionを掲げ展開している。こうした大塚製薬の理念は、社会や地球のウェルビーイング向上につながるだろう。
焼酎製造工程で出る焼酎粕や芋くずを電力に 循環型システムを構築した霧島酒造
また、芋焼酎「黒霧島」などで有名な霧島酒造は、23年2月に発売した本格芋焼酎『KIRISHIMA No.8(キリシマナンバーエイト)』の販売本数が2年で累計42万本を突破したことを発表。『KIRISHIMA No.8』は「これまでにない焼酎をつくりたい」という思いから生まれ、マスカットやみかんを思わせる新鮮な果実感が特長。原料となるサツマイモ「霧島8(キリシマエイト)」は、約5年かけて自社単独で開発した新品種。焼酎メーカーが自社単独でサツマイモ品種を開発し、焼酎の製造・販売までを一貫して行ったのは日本初(※23年1月霧島酒造調べ)。
霧島酒造も環境に配慮し、循環型システムを構築している。「KIRISHIMA SATSUMAIMO CYCLE~さつまいもを、エネルギーに。」をテーマに掲げ、サツマイモをエネルギーとしても活用。焼酎の副産物である焼酎粕や芋くずをリサイクルする国内最大級の設備を持ち、バイオガス(メタンガス)を生み出す。焼酎の製造工程で生じる焼酎粕は1日あたり約850トン、芋くずは約15トン。これらを活用し、焼酎製造工場の燃料として利用している他、焼酎粕の一部を堆肥などとして有効活用している。こうした取り組みから、“ゼロミッション(廃棄物ゼロ)”の実現を目指している。
さらに14年からは、焼酎粕や芋くずから生成したバイオガスを電力へと変換する発電機を設置。発生した電力を電力会社に提供している。21年には本社工場内に充電スタンドを設置し、サツマイモ発電の電力を主電力とした社内EV(電気自動車)として「さつまいもEV e-imo(イーモ)」を4台導入。社内利用だけでなく、災害時の避難所の電力支援として、宮崎県都城市とEV・充電スタンドを貸与・開放する覚書を締結し、地域連携にも寄与している。26年春には、スターバックス コーヒー ジャパンとの共同プロジェクトとしてコラボレーション施設をオープン予定。施設内で利用する電力も「サツマイモ発電100%」で運用することを予定している。
焼酎を作るだけでなく、その後も持続可能な環境を整えている霧島酒造。製造過程で出た廃棄物をアップサイクルし活用する取り組みは、ウェルビーイングを体現しているといえる。
さまざまな企業が、人々の生活をより“楽”に“幸せ”にする商品や、社会問題や地球環境を考えた取り組みを行っている。多くの企業が個人のウェルビーイングや社会のウェルビーイングを実現するために、日々挑戦を続けている。
取材・文/コティマム