
プロランナーの大迫傑選手が「ランの後に飲みたいビール」を横浜のイエローモンキーブリューイングと共同プロデュース、3月に限定販売された。走った後に大迫選手が飲みたいビールとは? そもそもマラソンランナーってビール飲むの? そんな興味と驚きを持って発表会に向かった。
3月7日、東京・二子玉川で開かれた「ハシルエール」の発表会は、約200人のランナーが参加したイベントの後に行われた。大迫傑選手とイエローモンキーブリューイングの駒田博紀代表。
トレーニングとプライベートの区切りをつける一杯
「ビールを一緒につくりませんか」
提案してきたのは大迫選手のほうだった。イエローモンキーブリューイング(以下YMB)は2023年9月創業の、まだ新しいクラフトビールブルワリーだ。しかし、その代表を務める駒田博紀さんの前職は、スイスのスポーツブランドOnの日本法人オン・ジャパンの代表。スポーツを愛する者同士、大迫選手と駒田さんは偶然ながらSNSで繋がっていた。
2024年春にYMBのタップルームがオープンする頃、「おそらくランナーが走り終わった後に飲みたい」をコンセプトにしたビールづくりが「ハシルエール」の開発が始まった。大迫選手はアメリカでトレーニング中だったが、帰国したときは時間をつくってYMBに寄り、ブルワーが造ったプロトタイプを次々と試飲。大迫選手がブルワーに要望したこだわりポイントは、「フルーティでありながらスッキリとして、最後に“シュッ”と切れる感じ」。
大迫選手はアメリカではトレーニングが終わった後、よくスーパーに立ち寄った。クラフトビールが棚にズラーッと並んでいる。「今日はどれにしようかな」と選ぶのが楽しみだったと言う。プロのマラソンランナーがそんなにビールが好きだとは!
「僕にとってはビールはトレーニングとプライベートの区切りをつける、僕にとって大切な一杯ですになります」と大迫選手。だからビールにはこだわる。
ランナーのリアル「ビールのために走りたい!」
一方、YMBの駒田代表はオン・Onジャパン時代からラントリップというイベントを開催してきた。景色を楽しみながら、仲間と楽しみながら走り、ゴールしたらビールで乾杯! そんなラン・フォー・ビールなイベントだ。
駒田さん自身、アイアンマン・トライアスリート(トライアスロンの完走者)。レースやランイベントに数多く参加するうちに、「ランナーのリアル」が見えてきた。
「ランナーはなぜ走るのか? レースに勝ちたい、タイムを伸ばしたいという人ももちろんいますが、どちらかというと走り終わった後のビールや、仲間ができることを楽しみに走っている。それがランナーのリアル。ランの後に飲みたいビールがあってもいい。もっと自由で遊び心をもったビールがあっていい」
ちょっと走って、ちょっと飲むか。そんな楽しみ方が広がっている。走ることと飲むことがこんなに近いとは思わなかった。飲むために走る。いいじゃないか!
ワイン酵母で発酵させたアメリカン・ホッピー・ウィート・エール。フルーティで爽やか、スッキリした後味。アルコール分4.5%。走った後でなくても一杯飲めばスキッと気分爽快。走っているのはコヨーテ。イラストレーターが大迫選手のイメージに近い動物として選んだという。よく見ると耳にピアスをしている。
また、大迫選手もプロランナーでありながら、ただひたすらレースに勝つために走るのではなく、「走る×なにか」を追求してきた。楽しいから走る、今よりもう少しランニングを楽しむプロジェクト「Saltz」を主宰している。その「なにか」の第1弾がビールだった。
「今回のハシルエールはプロトタイプ1です。今後もSaltzチームとYMBチーム、飲んでくださる方のインプットを生かしながらアップデートしていきたい」(大迫選手)ということで、プロトタイプ2,3が期待される。
近年、クラフトビールも差別化の段階に入り、サウナの後のビール、温泉後のビールなど、飲むシーンまでを取り込んで企画されるビールも目にする。走った後なら何でもおいしい気もするが、それが日本を代表するマラソンランナー大迫傑選手がこだわりを持って開発に加わったとなると、飲み応えに差が出る。グッとうまくなる。
「走った後に飲むビールは、罪悪感なしに飲めておいしいという心理も働きます。ビールとスポーツの掛け合わせ、もっと広げていきたいです」と、YMBの駒田さん。
運動後のビールは充実感、達成感を高めて、しかもギルティフリー。ランの後だけでなく、ウォーキングの後の一杯、勝った後の一杯、負けた後の一杯、いろいろシーンを意識してみるとビールはさらに楽しい。もちろんおいしいからと言って飲みすぎないようにしたい。
ランイベントには飲み仲間でもあるらしいマラソンランナー神野大地選手(中央)、池田耀平選手(左)も参加。3人のトークで盛り上がった。
取材・文/佐藤恵菜