
激戦区となっているミドルクラスのSUVから各社の自信作が続々と登場している。今回は、ドイツとフランスを代表するメーカーの個性を詰め込んだ最新モデルを紹介しよう。
全長4.5m前後のミドルクラスSUVは国内だけでなく、海外でも激戦区となっており、自動車メーカーは最新の技術を投入し、販売を競っている。
フォルクスワーゲン『ティグアン』は2007年に初代モデルを投入して以来、全世界で約800万台を販売。19年以降はグループ全体のラインアップの中でも評価の高い、ベストセラーモデルとなっている。そして24年11月には3世代目が日本に上陸した。
スタイリングもフロントマスクを力強いデザインに一新、ワイルド系SUVの印象を強調している。プラットフォームも最新のMQBevoを採用。アダプティブシャーシコントロールで複雑な制御ができるようになり、乗り心地とハンドリングが向上した。また、センターコンソールのダイヤルで運転モードの切り替えやオーディオの操作ができ、シートにも空気圧式リラクゼーション機能を標準で設定(※ベースグレードを除く)、快適性を追求した。パワーユニットは直4、1.5LのガソリンターボはFF車用、2気筒休止やマイルドハイブリッドを初めて搭載した。
一方、ルノー『アルカナ』は20年に発売されたフレンチSUV。ワゴンというより5ドアのハッチバッククーペのスタイリングが特徴。だが最低地上高は200mmあり、SUVを名乗る資格は十分。デビューから2年後の22年にフルハイブリッドモデルを開発し、市販化した。フルハイブリッド技術はトヨタが特許の大半を押さえているため、他メーカーにとってはハードルが高かったのだが、ルノーはF1で培った技術などを活用して特許をかいくぐり、独自のフルハイブリッドの実用化に成功。パワフルな走りと高い燃費効率が特徴で、最新モデルは傘下のスポーツカーブランド「アルピーヌ」のエッセンスを取り入れたグレード「エスプリ アルピーヌ」を追加。カタログ燃費の22.8km/L(WLTCモード)は輸入車でもトップクラスの数値だ。実際に今回の試乗でも21.0km/Lという数値を記録した。
ルーフレールや押し出しの強さを前面に出した『ティグアン』はドイツ車らしく堅実な印象。『アルカナ』はSUVには見えないアーバンスタイルがお洒落。最新のSUVでもお国柄を実感できそうだ。
上質感と逞しさを纏って進化したSUV
フォルクスワーゲン『ティグアン』
Specification
■全長×全幅×全高:4545×1840×1655mm
■ホイールベース:2680mm
■車両重量:1600kg
■排気量:1497cc
■エンジン形式:直列4気筒ガソリンターボ+モーター
■最高出力:150PS/5000〜6000rpm+18PS
■最大トルク:250Nm/1500〜3500rpm+56Nm
■変速機:7速DSG
■燃費:15.6km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:547万円
※eTSIエレガンス
3代目はフロントグリルとボンネットの位置を高くし、SUVらしい力強さを表現。ボンネットの高さを上げても空力性能を追求した結果、空気抵抗を示すcd値は0.33から0.28に向上している。
シャーシも進化しており複雑な制御が可能になった。ショックアブソーバーの内部を2系列独立回路とし、オイルを使用して減衰力をコントロール。試乗車のタイヤホイールは18インチだった。
パワーユニットは1.5Lが3気筒ガソリンターボ+マイルドハイブリッド。2.0Lはディーゼルターボ+フルタイム4WDを組み合わせている。1.5Lは2気筒休止やコースティングも装備している。
スポーツテイスト満載のクーペスタイルSUV
ルノー『アルカナ』
Specification
■全長×全幅×全高:4750×1820×1580mm
■ホイールベース:2720mm
■車両重量:1470kg
■排気量:1597cc
■エンジン形式:直列4気筒DOHCガソリン+交流同期モーター
■最高出力:94PS/5600rpm+20PS
■最大トルク:148Nm/3600rpm+205Nm+50Nm
■変速機:電子制御クラッチマルチモードAT
■燃費:22.8km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:499万円
※エスプリアルピーヌ E-TECH フルハイブリッド
フロントグリル中央にあるエンブレムのデザインが新しくなり、大きくなった。バンパー下の空気取り入れ口が大きく、スポーティーな印象。デイタイムランニングライトも個性的な形状だ。
『ティグアン』と比べるとホイールベースで40mm、全長は205mm長く、全高は75mm低いが、並べると『ティグアン』のほうが大きく見える。タイヤのサイズは225/45R19、ホイールは19インチ。
バンパー開口部の高さは地面から76cmでやや高め。写真ではわかりづらいが、欧州車のトレンドのひとつに車名をリアゲートやトランクに書くデザインが増えている。