女性がメンズスタイルのスーツを好んで選び始めた背景
「Quality Order SHITATE』で仕立てたメンズスタイルスーツの例
女性がメンズスタイルスーツを選んでいる背景として、どのようなことがあるだろうか。星川氏は「ジェンダーレスファッションのトレンド」「女性の社会進出の定着」の2点を挙げる。
「仕事着だけではなく日常着も含めてジェンダーレスなデザインの人気が高まっていることから、スーツにおいてもその傾向が見られます。
また、仕事内容・立場においても男女の差がなくなってきたことの表れが仕事着として代表的なスーツにも『女性ならでは』よりも『女性っぽくないもの』『メンズスタイルのスーツを着て女性らしさを消す』というファッション表現に反映してきたとも感じています」
特にスーツにおける「ポケット」を求める想いもあるようだ。
「メンズスタイルのスーツは、軍服からの由来で現在の形になっているため、ポケットが付いているのが当たり前ですが、女性は従来、ワンピースやドレスを基本としていたため、ポケットがついていないことが当たり前でした。さらに身体の凹凸も多く、ポケットにモノを入れるという発想が起きにくかったと考えられています。
ところが昨今の女性の社会進出により、名刺入れやリップなど、ちょっとしたものをポケットに入れることが増えてきたため、ポケットのニーズが高まってきたことも背景と思われます」
20年以上も前から女性が男性のスーツを購入するケースは存在していた
今でこそ、ジェンダーレスファッションは当たり前になったが、そもそも同店は20年以上前からメンズスタイルのスーツ・レディススタイルのスーツ両方を取り扱ってきた経緯がある。
「弊社では以前より、男性が女性のスーツを、女性が男性のスーツを購入されることについては、ごく普通に対応してまいりましたので、特に珍しいことに感じておりません。お客様がよくおっしゃられるのは『メンズスーツが欲しいなんて言いにくかったけど、普通に対応してくれて嬉しかった』ということ。今後も、お客様の個性や希望に合わせて、男女問わずスーツを提案できる環境を目指していきます」
たくさんのポケットにモノを入れておきたい気持ちは、確かにわからなくはない。今後、さらに女性が“男性らしい”スーツを着用しても、違和感を生じない時代になっていくだろう。
取材・文/石原亜香利