
賃貸物件にスマートロックを導入する大家が増えている。電子的に書き換えが可能なスマートロックなら、退去のたびにカギを交換する手間とコストが不要。入居者にも喜ばれるため、物件の付加価値を高め、入居率アップにもつながると注目を集めている。大家、入居者の双方にうれしい、賃貸物件をスマートロック化するメリットと、選び方をチェックしてみよう。
導入事例が急増中!賃貸物件向けのスマートロックとは?
スマートロックは、スマートフォンやICカードなどを使ってカギを解錠できるしくみだ。従来のシリンダー錠のように物理的なカギを必要としないため、紛失などのトラブルを防げるだけでなく、オートロック機能が利用できるため、カギの閉め忘れも防げる。使用できるスマートフォンやICカードを管理できるほか、一時的に解錠ができる権限を発行することも可能。解錠、施錠の履歴も残せるなど、利便性とセキュリティの両面から、物件の付加価値を高められる設備となっている。それでいて大規模な工事は不要。原状回復可能な状態で設置できるものも多く、低コストで導入できるため、導入が広がっている。
大家の悩み別!スマートロックで物件管理はこう変わる
スマートロックがあると具体的にどういうシーンで役立つのか、賃貸物件の大家が抱える、カギに関する困りごとから見てみよう。
入退去のたびに鍵交換のコストがかかる
→電子的に書き換えるだけでOK、鍵交換不要
カギを持ったままの前の住人が不正侵入するといったトラブルもあるため、今や退去時の鍵交換は必須だが、そのたびに費用の問題がのしかかり、さらに工事への立ち合いなどの手間も発生する。スマートロックなら都度カギを物理的に交換する必要がなく、電子的に書き換えるだけ。権限を削除すれば前の入居者のカギは瞬時に無効化できるし、新しい入居者への権限の発行も簡単だ。
空室時の内見、業者対応が大変
→受け渡し不要。一時的なカギも発行できる
住人が入れ替わるタイミングには、様々な人が物件を出入りする。内見希望者や業者が来るたびに、都度対応しなければならないのも大家の悩みの種だ。遠方に住んでいるなど、カギの受け渡しが困難なために、管理費を支払い、管理会社を利用するケースも多いが、スマートロックならカギの受け渡しは不要。たとえばテンキー入力ができるものなら、暗証番号を伝えるだけでいい。一時的な権限の発行もできるし、誰がいつ解錠、施錠したかの履歴も残せるので、手間なくセキュアにカギを管理できる。
カギの紛失、トラブル対応が大変
→紛失の心配なし。トラブルも遠隔対応が可能
カギのトラブルで最も多いのが紛失。入居者がカギをなくして入れないとなったら、マスターキーを持っている大家や管理会社は、否が応でも現地へ駆け付けなければならない。スマートロックでは物理的なカギを持ち歩かないので、そもそも紛失することがない。万が一、解錠に必要なスマートフォンやICカードを紛失した場合も、遠隔操作ができるものなら、遠隔から解錠、施錠が可能。新しいデバイスへのカギの発行にも、素早く対応することができる。
物件価値を高めて入居率をアップしたい
→人気のオートロックが安価に実現
スマートロックにはオートロック機能が搭載されているため、導入するだけで自動的にオートロック対応の物件にアップグレードできる。入居者の鍵の閉め忘れを防ぎ、防犯性能が向上するだけでなく、物件の付加価値を高め、入居率アップや空室対策への貢献も期待できる。大規模な設備投資をせずに、物件価値を高められるのは大きなメリットと言えるだろう。
入居者の悩み別!スマートロックのある物件入居のメリット
次に入居者の立場から、スマートロックのメリットをチェックしてみよう。カギのどんなトラブルを回避できるだろうか?
カギを紛失して部屋に入れない!
→スマートロックなら紛失リスクゼロ
終電で帰宅したらカギがない……ありがちなトラブルだが、業者を呼べば高い料金を請求されるし、近くに身を寄せる場所がなければ、ちょっと絶望的なシチュエーションでもある。スマートロックならそもそも物理的なカギを持ち歩く必要がなく、紛失するリスクがないので、こうしたトラブルを回避できる。
カギを閉め忘れて出てしまった
→オートロックだから閉め忘れの心配なし
スマートロックにはオートロックの機能が備わっているため、カギは開けたら自動的に閉まる。カギを閉めたかどうか思い出せず、1日気が気ではない……なんてことにはならないので、安心して外出することができる。
宅配便や急な来客にも対応したい
→遠隔操作で開閉ができるものもある
スマートロックにはインターネット経由での遠隔操作に対応するものもある。こうした製品では、大家が許可していれば、入居者が遠隔操作でカギを開閉することも可能だ。たとえば宅配便業者に荷物を入れてもらう、家族や友人などの急な来客時に先に入ってもらうなど、スマートな対応が可能になる。
賃貸物件向けスマートロックの選び方
スマートロックの導入は簡単で、既存のカギの上に後付けできるものも多い。以下に紹介するのは、後付けが可能な主なスマートロックだ。
後付けタイプには、導入コストを抑えられるというメリットもある。扉に直接ネジ止めせず取り付けるスマートロックは原状回復ができるものの、扉にネジ止めしている製品は、原状回復が不可能だ。一方で、両面テープだけで使用する場合は落下のリスクにも考慮する必要があるだろう。
Bluetoothは一般的な通信方法だが、環境によっては接続にタイムラグが生じるなど不安定になることもある。NFCはセキュリティが高く、ICカードやスマートフォンで利用可能だ。解錠方法がアプリの場合は、入居者のスマートフォンの種類に関わらず利用できるように、「iOS」と「Android」の両方をサポートするものを選ぶ必要がある。
解錠方法がテンキーの場合は、暗証番号の入力で解錠でき、一時権限の発行とあわせて、内見や清掃、修繕などで複数の人が出入りする際には利便性が高い。一方で毎日の開け閉めとなると、面倒に感じる入居者もいるかもしれないので、ICカードなどとの併用が理想的だ。生体認証は事前の登録手続きが必要になるが、オートロックに加えて最新設備の導入は、物件の付加価値向上につながる。
遠隔操作は内見や業者への対応、入居者にも操作が可能になれば宅配の受け取りや来客対応などのメリットがある。一方でインターネット接続が必須となるため、あわせてWi-Fiなどの整備も必要だ。インターネットにつながること自体がリスクとなる可能性もあるため、セキュリティ対策も重要になってくる。
電源は電池で動作するため、停電時なども安心だが、電池の交換時期には注意しておく必要がある。メンテナンスは大家や管理会社が行うのが一般的だが、入居者に電池交換をしてもらう場合には、電池の入手のしやすさなどにも配慮したい。また万が一の故障などに備えて、保証や緊急時のサポートが充実したメーカーを選択することも大事なポイントになるだろう。
スマートロックは、賃貸物件の管理コスト削減やセキュリティ強化に加えて、入居者の利便性を向上させ、物件の魅力を引き上げる設備だ。手軽に導入が可能なので、賃貸物件にさらなる「安心」と「快適」を加味する手段として、取り入れる価値ありだ。
取材・文/太田百合子
今、スマートロックが注目されるワケとは?仕組みと8つのメリット
SNS投稿が前年比2.2倍増の「スマートロック」とは? スマートフォンなどを使って、鍵の管理や施錠・解錠ができる「スマートロック」への関心が高まっている。スマー...
たくさんあるけど何が違う?意外と知らないスマートロックの種類と便利な機能
我が家に合うのはどれ?設置方法と施錠、解除方法の違いをチェック スマートロックとひと口にいっても多種多様な製品が発売されている。 試しにAmazonで検索してみ...
なぜ、三菱地所がスマートホームの旗振り役を担うのか?総合スマートホームサービス「HOMETACT」のPJリーダーが語るインフラ化の未来
スマートホーム体験スペース「playground 大手町」@千代田区 大手町ビル内(要予約) 年々注目度が高まるスマートホームだが、日本では未だ本格的な普及には...
全然スマートじゃない!?スマートロックのあるあるトラブルを徹底調査
スマートロックには、スマホやICカードを使って解錠できる、オートロックでの施錠ができる、入退室の履歴が確認できるなどたくさんのメリットがある一方で、デメリットも...
スマートロックは本当に安全なのか?無線通信が抱える3つのリスク
スマートロックの多くは、BluetoothやWi-Fiでつながったスマホから専用のアプリを操作することで、解錠や施錠ができるようになっている。 例えばBluet...
ドアのあるところには鍵があり、その鍵は今の時代なら簡単にスマートロックに置き換えることができる。 スマートロックにするとどうなるのか、どんなメリットがあるのかを...
オフィスのセキュリティ強化や、カギの管理、入退室管理の効率化のため、最近では多くの企業がスマートロックを導入している。今回はオフィス向けのスマートロックでは何が...
店舗運営が変わる!お店にスマートロックを導入すべき7つの理由
飲食店から各種小売店まで、店舗運営において悩ましい課題のひとつに「カギの管理」がある。そこで今、導入が増えているのがスマートロック。もしお店のカギを従来のシリン...