
世界の肥満率は増加の一途をたどり、2050年には成人の過半数が過体重か肥満になるとの予測が発表されました。小児や若年層でも同様の傾向が見られ、特に肥満の増加が顕著です。このままでは、世界の健康に深刻な影響を与える可能性があります。世代を超えた肥満対策が急務となっています。
2050年までに世界の成人の過半数が過体重・肥満に
過去30年の間、世界の人々のBMIの上昇が続いてきており、この傾向が続いた場合、2050年までに成人の過半数が過体重か肥満になることが明らかになった。米ワシントン大学のEmmanuela Gakidou氏らの研究によるもので、3月8日に2報の論文が「The Lancet」に掲載された。
この研究では1990~2021年の204カ国・地域の人々のBMIデータを用いた解析と予測が行われた。BMIに基づき25以上30未満を過体重、30以上を肥満と定義し、年齢層を5~14歳の小児と、15~24歳の若年者、25歳以上の成人に分けて解析されている。結果の詳細は以下のとおり。
まず、小児については、1990年時点で過体重が6.7%(95%不確定区間6.5~7.0)、肥満は2.0%(同1.9~2.2)であったものが、2021年時点では過体重11.2%(10.8~11.6)、肥満6.9%(6.6~7.2)となっており、この間の有病率の相対的変化は過体重が66.0%(57.2~74.8)、肥満は236.9%(213.5~259.3)だった。さまざまな因子を考慮して今後の有病率の変化を予測すると、2021~2050年に過体重は26.2%(21.3~29.7)、肥満は126.0%(85.6~147.3)の増加が見込まれた。これに基づき2050年には、小児の過体重の有病率は14.1%(13.4~14.8)、肥満の有病率は15.6%(12.7~17.2)になると推測された。
続いて若年者については、1990年時点で過体重が8.0%(7.8~8.2)、肥満は1.9%(1.8~1.9)であったものが、2021年時点では過体重13.7%(13.2~14.3)、肥満6.6%(6.4~6.8)となっており、この間の有病率の相対的変化は過体重が72.1%(64.1~80.1)、肥満は253.3%(236.5~269.1)だった。今後の有病率の変化を予測すると、2021~2050年に過体重は28.0%(22.6~31.4)、肥満は114.4%(74.2~135.5)の増加が見込まれた。これに基づき2050年には、若年者の過体重の有病率は17.5%(16.7~18.3)、肥満の有病率は14.2%(11.4~15.7)になると推測された。
成人については、2021年時点において、10億人(9億8900万~10億1000万)の男性と、11億1000万人(10億1000万~11億2000万)の女性が、過体重または肥満と推計された。有病率は1990~2021年の間に男性は155.1%(149.8~160.3)、女性は104.9%(100.9~108.8)増加しており、2050年までに男性は77.7%(48.3~92.5)、女性は62.3%(38.9~73.7)のさらなる増加が見込まれた。このような傾向が続いた場合、2050年までに過体重や肥満の成人の総数は38億人(33億9000万~40億4000万)に到達し、世界の成人人口の過半数を占めると予測された。著者らは、「世代間での肥満の伝播を防ぐ対策が不可欠である」と述べている。
なお、日本の成人の肥満(BMI30以上)の有病率については、以下のように示されている。男性は1990年が1.7%(1.6~1.9)、2021年が5.8%(5.1~6.6)で、この間の有病率の変化が240.4%(188.2~296.9)であり、2050年までに122.74%(75.3~159.4)の増加が見込まれ、2050年時点の有病率は13.0%(9.71~16.0)。女性は1990年が3.0%(2.7~3.2)、2021年が5.8%(5.1~6.7)で、この間の有病率の変化が98.3%(67.5~132.5)であり、2050年までに69.5%(39.6~93.7)の増加が見込まれ、2050年時点の有病率は9.8%(7.5~12.0)である。(HealthDay News 2025年3月4日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(25)00397-6/fulltext
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(25)00355-1/fulltext
構成/DIME編集部
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