
日常生活で適度な運動を取り入れることが、脳の健康に大きく貢献する可能性を示す新たな研究結果が発表されました。活動量計を用いた大規模な調査により、中強度から高強度の身体活動が、認知症、脳卒中、精神疾患、睡眠障害のリスクを大幅に低減することが明らかになったのです。この研究は、私たちのライフスタイルが脳の健康に与える影響を再認識させ、日々の活動習慣を見直すきっかけとなるかもしれません。
中強度~高強度の身体活動は脳の健康に有益
体を動かすことは、脳に良い影響を与えるようだ。
新たな研究で、中強度から高強度の身体活動でエネルギーを消費する人では、エネルギーの消費量が少ない人に比べて認知症、脳卒中、不安症(不安障害)、うつ病、睡眠障害を発症するリスクの低いことが明らかになった。復旦大学(中国)のJia-Yi Wu氏とJin-Tai Yu氏によるこの研究結果は、米国神経学会年次総会(AAN 2025、4月5~9日、米サンディエゴ)で発表予定。
この研究でWu氏らは、7万3,411人の参加者(平均年齢56.08±7.82歳、女性55.72%)を対象に、活動量計で測定した7日間分の身体活動量および座位行動と精神神経疾患との関連を検討した。身体活動量は代謝当量(METs)として定量化し、3METs以上を中強度~高強度の身体活動と見なした。例えば、ウォーキングや掃除などの中強度の身体活動は約3METsの消費、サイクリングなどのより激しい身体活動は、速度にもよるが、約6METsの消費に相当する。
解析の結果、中強度~高強度の身体活動でエネルギーを消費していた参加者は、エネルギー消費量が少なかった参加者に比べて、認知症、脳卒中、不安症、うつ病、睡眠障害を発症するリスクが14~40%低いことが明らかになった。疾患を発症しなかった参加者での中強度~高強度の身体活動による1日当たりのエネルギー消費量(1kg当たり)は平均1.22キロジュール(kJ)であったのに対し、認知症発症者では0.85kJ、睡眠障害発症者では0.95kJ、脳卒中発症者では1.02kJ、うつ病発症者では1.08kJ、不安症発症者では1.10kJだった。また、座位時間が長いほどいずれかの疾患の発症リスクが上昇し、座位時間が最も短い参加者と比べてリスクは5~54%高かった。
こうした結果を受けてWu氏はAANのニュースリリースの中で、「この研究結果は、脳の健康状態を向上させ、これらの疾患の発症リスクを低減させ得る、修正可能な因子としての身体活動と座位行動の役割を強調している」との見方を示す。同氏は、「人々に、中強度~高強度の身体活動量をライフスタイルに組み込むよう促すことで、将来的には、これらの疾患の負担を軽減できることが期待できる」との見方を示している。
Wu氏はまた、「これまでの研究の中には、試験参加者の報告に基づき身体活動量を測定しているものもあった。それに対し、今回の研究では、非常に多くの参加者の身体活動量を、客観的な測定が可能なデバイスを用いて評価した。そのため、得られた結果は、リスク因子の評価や、これらの疾患に対する予防的介入策の開発に影響を及ぼすだろう」と話している。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2025年2月28日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://aanfiles.blob.core.windows.net/aanfiles/56bf3add-5deb-4b9e-ad6f-3193bdafe3ba/2025%20AAN%20Annual%20Meeting%20Abstract%20-%20Physical%20Activity%20and%20Neuropsychiatric%20Diseases
Press Release
https://www.aan.com/PressRoom/Home/PressRelease/5238
構成/DIME編集部
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