
少し前までは、APS-Cサイズのミラーレス一眼レフカメラでもエントリーモデルなら5万円台で購入できたはずだ。
しかし、今はそうではない。APS-Cミラーレス一眼レフの場合、ボディだけでも10万円近く。レンズキットは優に15万円、20万円も珍しくない。これはもちろん、コンパクトデジタルカメラも同様だ。
いや、それ以前に今は電気代もガス代も水道代も食品価格も高騰している。もはやデジカメを新調するどころではない。というわけで、今回は10年以上前に発売されたデジカメを引っ張り出して撮影していこうではないか。
物価高の時代だからこそ、2010年代発売のカメラに目を向けるのも一つの有効な手段と言えるのだ。
かつての相棒『Nikon COOLPIX P520』を引っ張り出した!
筆者が『Nikon COOLPIX P520』を購入したのは、この製品が発売された直後だったはずだ。ということは、2013年2月か3月である。そこから3、4年ほどは仕事でもプライベートでも使っていたが、APS-C一眼レフカメラを買ってからは触る機会がめっきり減った。というより、保管箱に長年閉じ込めていた。
というわけで、まずはこのP520の性能諸元から。
有効画素数
1808万画素
撮像素子
1/2.3型原色CMOS、総画素数1891万画素
レンズ
光学42倍ズーム、NIKKORレンズ
焦点距離
4.3-180mm(35mm判換算24-1000mm相当の撮影画角)
開放F値
f/3-5.9
レンズ構成
10群14枚(EDレンズ4枚)
電子ズーム倍率
最大2倍(35mm判換算で約2000mm相当の撮影画角)
動画
1080P対応
ざっとこんなものである。動画撮影が4K対応ではないあたりが、確かに10年以上前の機種だということを匂わせている。
そして、このP520が発売された当時は「光学42倍ズームの大型コンデジ」は驚くべき代物だった。
これよりも2倍の光学ズームを可能にした『Nikon COOLPIX P900』の登場は、2015年である。センサーサイズこそ小さいものの、それを補って余りある望遠性能は筆者の目には憧れに写った。当時、筆者はライター業には手を出しておらず、工場で働くただの派遣社員だった。かなり奮発してP520を購入したことを未だに覚えている。
迫力十分の光学ズーム
それから12年経った今、このカメラで自宅の周囲の景色を撮影してみた。なお、下の写真はいずれもオート撮影モードで撮影したものだ。
階調表現やそれが形成する立体感に関しては、まぁAPS-Cカメラに勝てるものではない。筆者なりの表現だが、色合いが何だか「ぺったり」しているような気がする。
しかし、やはり光学ズームは圧巻の一言である。
上の写真の中央に写っている鉄塔の足元を、光学ズーム一杯で撮影してみる。
ここまで大きくすることができるのだ。三脚を使えば、手ブレの心配もなくなる。
P520の3.2型約92万ドットバリアングル式モニターは、表示される画像も含めて正直チープな感じが否めない。それ以上に、約20万ドット相当という電子ビューファインダーの画質は全く満足できるものではなく、撮影後のSDカードをPCに差し込んでようやく本来の画像クオリティーを確認できる……といった感じだ。
2025年の今において、進化し続けるスマホカメラにP520が大きく勝る点は望遠性能である。それしかない、と言い切ってしまうのは酷だが、残念ながらスマホカメラに凌駕されている部分も多数見受けられる。
筆者がこの記事を書いている時点で、中国Xiaomiのハイエンドスマホ『Xiaomi 15』と『Xiaomi 15 Ultra』の日本発売が間近に迫っている。特にXiaomi 15 Ultraは、ライカと共同開発したカメラが注目を集めている。
この製品の超望遠カメラは光学4.3倍で2億画素、センサーサイズは1/1.4インチという怪物だ。そもそも、見た目からしてスマホではなくデジカメに近い姿をしている。スマホカメラは、ここまで進化してしまったのだ。
しかし、非常に世知辛い話になってしまうが――そんなスマホの長足進化についていけるほどの可処分所得を持っている人は、割合としては多くないはずだ。
4K動画撮影機能は必要ない?
奮発して購入したデジカメを10年以内に代替わりさせてしまう行為は、今や「贅沢な行い」になってしまったことは間違いない。
今回の記事のために引っ張り出したP520も、12年という時間の中でスマホに追い抜かれてしまった点も多くあるが、それは「実用に足るスペックではない」という意味にはならない。むしろ、スペックに関しては「これで十分」と思える点がいくつもあり、まだまだ撮影の第一線で使えると言い切ってもいいだろう。
現代はスマホですら4K動画撮影ができるようになっているが、現実問題4K撮影をする機会などどれだけあるだろうか?
筆者はYouTubeチャンネルを運営しているが、公開する動画は例外なく1080P。4K動画など、一度も配信したことがない。今日び視聴者が動画視聴のために使うのは専らスマホだからという事情もあるが、編集者からしてみれば4K動画は容量が大きく、保存するのも大変なのだ。
筆者はそうしたことも経験として踏まえているため、1080Pが「時代遅れの規格」とは全く考えていない。
そして、その論拠に立てば12年前に発売の大型コンデジは今も大活躍できる余地があるということになる。
【参考】
Nikon COOLPIX P520
文/澤田真一