
電力自由化により、セット割の契約を検討したり、新たに参入した小売電力事業者の割安メニューに乗り換えた人、乗り換えを検討する人は多いだろう。これから電力会社を変更する場合、特にオール電化の人は注意しておきたい。
オール電化の検針票の見方
電気料金は、基本的に以下となる。
・基本料金
・電気使用料金(燃料調整額含む)
・再エネ発電促進賦課金
基本料金は、契約電気容量により決まる(実際の使用量によって決まるプランもある。)。
そして、実際の使用量に応じて計算される電気使用料金は、1kWH×〇〇円と使用量に応じて計算される。1kWhあたりの価格は、使用量が多いほど高くなる設定だ。
なお、この電気使用料金には燃料調整額が含まれ、火力発電に使われる燃料価格により使用料金にプラスマイナスされる。今のように、燃料費が高い時は使用量に応じてプラスされる。
一方、オール電化の料金プランはこの電気使用料金の部分が通常と異なり、使用量に応じて高くならず、時間帯により1kWhあたりの価格が決まっている。
この1kWhあたりの価格は使用量が多くなっても高くはならない。この時間帯設定は電力会社により異なり、例えば、東京電力EPでは、6:00~翌1:00がデイタイムとして高い価格設定とし、夜中の1:00~6:00をナイトタイムとして安い価格設定にしている。
筆者が契約する中部電力を例に出すと、平日は10:00~17:00をデイタイムとして最も高い価格設定とし、8:00~10:00、17:00~22:00をホームタイムとして中間の価格、22:00~翌8:00をナイトタイムとしても最も安い価格設定となっている。
オール電化は、ガスがない分電気料金が高くなるため、電気をうまく使う必要がある。オール電化の昼間は価格が高めとなるため、うまく使わないと、せっかくオール電化なのに、ガス+電気の人より光熱費が高くなってしまうことがある。
具体的には、昼間に使用する電気を太陽光発電や蓄電池で補い、できるだけ昼間の電気を使わない必要がある。エコキュート等でお風呂に使用するお湯を夜中の安い電気価格帯の時に沸かしておくことが必要だ。もし、エコキュートのお湯が足りずに追加で18時ごろにお湯を沸かすことになると、電気代が高くなってしまうのだ。
オール電化特有の割引として、全電化住宅割引額がある。電化住宅割引額は、オール電化の契約をする人が適用される割引である。
ただ、既にこの全電化住宅割引額を受けられる新規申込みは終了しており、今から新たにオール電化の契約をする人は適用されない。また、全電化住宅割引額の適用を受けている人は引き続き割引を受けられるが、なかにはこの適用を終了する電力会社もある。東京電力EPでは2025年3月末をもって適用終了となる。
新たに契約すると金額が上がる可能性の方が高い
電力自由化により、今の電力会社ではなく、新たな小売電力事業者と契約し、電気料金を安くしたり、スマホやインターネットとセットで契約することでスマホやインターネット料金を安くしたりしたいと考えるだろう。そして、そのような案内や営業も多いだろう。
そもそも、オール電化の人は、契約できる小売電力事業者が実はかなり少ない。もし、電力の案内や営業がしつこくあっても、「オール電化です。」というだけで、断ることができるはず。
それでも、オール電化に対応している小売電力事業者があった際は、その電気使用量あたりの価格を現在の検針票と見比べてほしい。
以下は、2015年にオール電化を契約した筆者の検針票と今の料金メニューである。
今契約したときの方が、1kWh当たりの価格が高くなっている。契約を変えることで、当時のお得な価格設定を手放すことになる可能性がある。
また、全電化住宅割引額も、今から契約する場合は受けることができないだろう。
オール電化の人で契約を違う電力会社に変更する場合は、1kWhあたりの価格と安い時間帯が、自分が電気を使用する時間帯と設備(太陽光発電や蓄電池等)を合っているか、よく比較して決めてほしい。
(参考)
料金の仕組みと料金メニュー例のご紹介|資源エネルギー庁
文/大堀貴子