
ウェザーニューズは、いざという時の避難行動や災害対策の一助とすることを目的として、防災・減災への意識の実態や変化を調査する「減災調査2025」を実施。結果をグラフと図表にまとめて発表した。
調査実施の背景と概要
本調査は2月20日から26日にかけてウェザーニューズのアプリやウェブサイトを通じて行なわれ、1万4210人から回答を得たものだ。
2024年8月に初めて発表された「南海トラフ地震臨時情報」について、内容を含めた認知は全国平均で約6割となり、特に想定震源域に近い東海〜西日本太平洋側では7割以上のところが多くなった。
また、東日本大震災で大きな問題となった帰宅困難への対策について、遭遇した時の行動を決めている人は約半数となり、特に東日本大震災で多くの帰宅困難者が発生した東北地方や首都圏、南海トラフ地震で大きな影響を受けるとされているエリアで意識が高いことが判明。
避難場所や非常食、非常持出袋など普段からの備えに関する調査では、避難場所の認知や非常持出袋の点検率が昨年よりも向上し、全国の平均備蓄日数は3年ぶりに増加に転じて調査開始以来過去最高になるなど、各項目から防災意識の向上が見られた。
2024年は元日に能登半島地震が発生し、8月には「南海トラフ地震臨時情報」の発表があり、備えを見直す方が多かったと考えられる。
■「南海トラフ地震臨時情報」は該当県とそれ以外で認知度に差
「南海トラフ地震臨時情報」の認知について「南海トラフ地震臨時情報について知っていますか?」と質問したところ、「内容も知っている」もしくは「名前だけ知っている」と答えた人を合わせた名前の認知度は97.4%と高かったものの、「内容も知っている」と答えた人は61.3%と名前の認知度と内容の認知度に差が生じていた。
都道府県別に見ると、南海トラフ巨大地震の想定震源域となっている太平洋側の地域で内容の認知が高いことがわかる。
また、情報発表時の行動について「昨年「南海トラフ地震臨時情報」が発表された時、何か行動に移しましたか?」と質問したところ、「対策した」と答えた人は約3割で、認知度と同様に想定震源域に近い東海〜西日本の太平洋側で割合が高くなっている。
具体的な対策としては水や食料などの備蓄や非常持出袋の準備・確認をした人が多く、ポータブル電源の購入や避難場所・経路の確認をした人もいた。
一方「特にしていない」と答えた人の理由としては、「南海トラフ地震の想定被害地域から離れている」という地理的な要因が多数を占めた。
さらに巨大地震に対する意識について「南海トラフ地震と同程度の地震に、自分自身は遭遇すると思いますか?」と質問したところ、4人に1人が「思わない」と回答した。
都道府県別に見ると、普段地震が起こりにくい山陰や九州北部で「自分は遭遇しないだろう」と思っている人が多いようだ。
東京都防災会議によると、2022年(令和4年)以降、M7クラスの首都直下型地震が30年以内に発生する確率は70%であると推定されている。巨大地震は今この瞬間に発生してもおかしくはない。
普段地震が起こりにくいとされている場所でも大地震が発生する可能性はゼロではなく、また他県にいる時に遭遇する可能性もある。命や財産を守るためにも、油断せずに対策をするようにしたい。
■帰宅困難時の行動、約半数が未定
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、首都圏で公共交通機関が止まり、帰宅困難者は515万人に達したという。将来、首都直下地震が発生した場合、帰宅困難者の数はこれ以上になると推定されている。
帰宅困難となった場合の行動について「職場や学校で被災し帰宅困難者となった場合、まずどのように行動するか決めていますか?」と質問したところ、「決めている」と答えた人は約半数だった。
都道府県別に見ると、東日本大震災で大きな影響を受けた宮城県や東京都、神奈川県、千葉県、南海トラフ地震の想定震源域に近い三重県、和歌山県、宮崎県で60%前後の対策率となり、他の都道府県と比べて高くなっている。
また、過去の震災からの教訓として「帰宅困難に備えて、東日本大震災をきっかけになにか対策したことはありますか?」と質問したところ、約4割が対策をしていた。
対策内容としては、モバイルバッテリーや充電器、非常食などの見直しや、歩きやすい靴(スニーカー)での通勤、徒歩での帰宅ルートの確認、さらに実際に歩いて試してみるなどが挙げられていた。
■避難場所の認知度:自宅付近は94%、会社・学校付近では74%
避難場所の認知について「自宅付近の避難場所を知っていますか?」と質問したところ、「経路も場所も知っている」と答えた人は67.4%(昨年比+0.9ポイント)、「場所のみ知っている」と答えた人は26.5%(昨年比+0.8ポイント)となった。
上記2つを合わせて93.9%の方が自宅近くの避難場所を知っており、昨年よりも1.7%向上した。ただ、26.5%は避難場所は知っているものの経路まで確認できていないことが判明。
また「会社や学校付近の避難場所を知っていますか?」と質問したところ、「知っている」と答えた人は73.8%で、昨年よりも4ポイント向上していたが、自宅付近と比べると約2割減少する結果となった。
自宅周辺の避難場所の認知が高い一方で、会社や学校付近の認知は十分ではないようだ。
■非常食の備蓄状況:平均備蓄日数は3.32日、3年ぶりに増加して過去最高に
非常食の蓄えについて「非常食、何日分備えていますか?」と質問。回答は「約1日分」「約3日分」「約1週間分」「用意していない」から選択してもらった。
その回答を集計した結果、81.6%(昨年比+5.6ポイント)が非常食を準備していると回答、平均備蓄日数は3.32日となった。
これを都道府県別に見ると、特に東北太平洋側から関東、東海や西日本太平洋側で備蓄日数が高い傾向であることがわかる。平均備蓄日数の変化を見てみると、2022年をピークに2年連続で減少していたが、今年は増加に転じて歴代で最も高い値を記録。
昨年は元日の能登半島地震や日向灘地震に起因する南海トラフ地震臨時情報の発表など、備えを再確認するきっかけが多かったことが、平均備蓄日数が増加した理由として考えられる。
■非常持出袋の点検状況:1年以内に点検した割合が伸長
非常持出袋の点検状況について「非常持出袋を最後に点検したのはいつですか?」と質問したところ、「1年以内」と回答した人は43.2%で、昨年の33.6%から大幅に割合が増加した。
非常持出袋の点検を「していない」と回答した人も昨年の45.2%から38.1%へ、7.1ポイント減少しており、生活者の防災意識が高まっていることが明らかになった。
非常持出袋の点検は、半年〜1年に1回など、定期的に行なうことが呼びかけられている。点検により非常食や水の賞味期限切れを防いだり、電池の使用期限切れや液漏れを防ぐことができる。
非常持出袋の中身を使い、使った分を買い足す「循環備蓄(ローリングストック法)」は、中身の期限切れを防ぎ、備えを見直す機会になるためおすすめの方法だ。
災害情報の入手方法:天気・地震アプリやニュースアプリが主流
災害が発生した際の情報入手の方法について「災害の情報入手の際、主に何を使いますか?」と質問。「ニュースアプリ・サイト」「ライブ動画配信」「SNS」「天気・地震アプリ・サイト」「テレビ」「ラジオ」「防災無線」から選択してもらった。
その結果、「天気・地震アプリ・サイト」が最も多く33.3%、次いで「ニュースアプリ・サイト」が24.7%となり、合わせて全体の約6割を占めた。年代別に見てもこの2つの選択肢が多数派で、大きな傾向の違いは見られなかった。
各年代で差が大きかったのが「SNS」や「ライブ動画配信」、「テレビ」、「ラジオ」の選択肢で、若い世代ほどSNSやライブ動画配信を情報源としている割合が多く、世代が上がるほどテレビやラジオを情報源としている割合が多い。
近年、防災に役立つ様々なアプリやサイト、さらにSNSの利用が急速に拡大している。これらのツールは場所を選ばずリアルタイムの情報が得られることが大きな利点となる。
一方で被害が広範囲にわたるような災害や大規模な停電の発生時には、回線の混雑や端末の電源が切れて使えなくなる場合も考えられる。またSNSではデマなどにも注意が必要。
情報をすぐには信用せず、ソースや信憑性を確認して、自ら取捨選択することも求められる。いざという時に備え、信頼できる複数の情報源を準備しておくことも大切だ。
関連情報
防災意識の現状: https://weathernews.jp/s/topics/202502/260185/
備えの実態調査: https://weathernews.jp/s/topics/202502/260175/
構成/清水眞希