
ボーナスにも税金はかかるのか、かかるとすれば額面からどれくらい引かれるのだろうか。所得や扶養人数によっても異なるボーナス手取り額の計算方法をまとめた。
目次
ボーナスが支給されると、会社から聞いていた額面と実際の手取り額の違いに戸惑う人も多いだろう。
毎月の給与と同じく、ボーナスにも税金がかかる。さらに社会保険料も引かれるため、「思ったよりも手取りが少ない」と感じるケースが少なくない。具体的に何がどの程度引かれているかを知っておくと、不可解さや釈然としない気分を減らせるはずだ。
本記事では、ボーナスから引かれる税金・社会保険料の種類と計算方法、ボーナスの手取り額をざっくり知りたい場合の考え方を解説する。
ボーナスにかかる税金の種類は?
ボーナスの額面(支給額)からは、税金と社会保険料が天引きされている。具体的には「所得税(源泉所得税)」「健康保険料」「雇用保険料」「厚生年金保険料」「介護保険料」の5種類だ。それぞれの内容を見ていこう。
■ボーナスにかかる税金:所得税(源泉所得税)
所得税とは、所得にかかる税金のこと。前年の所得額に応じて税率が決まり、所得が多いほど税率もアップする。家族を扶養している場合は、扶養人数によってボーナスにかける税率も変化する。
なお、給与所得者の所得税は「源泉所得税」といい、会社があらかじめ一定額を差し引いた上で年末調整によって正確な所得税額を計算&精算する。そのため、年末調整時に還付がある場合は、ボーナスから差し引かれた所得税も戻ってくる。
■ボーナスにかかる社会保険料1:健康保険料
健康保険料は、病気・ケガで治療を受けた際の治療費負担を軽減するなど医療費の財源となる。出産時の出産育児一時金や産休中の出産手当金も健康保険から支給される。
加入する健康保険組合(協会けんぽetc.)や住んでいる地域によって保険料率が異なる。
給与所得者の場合、健康保険料は他の社会保険料と共に給与やボーナスから天引きされている。
■ボーナスにかかる社会保険料2:雇用保険料
雇用保険料は、失業時の失業給付や育児休業中の育児休業給付金などの財源となる。
給与所得者の場合は、他の社会保険料と同じく給与やボーナスから天引きされる。
■ボーナスにかかる社会保険料3:厚生年金保険料
厚生年金保険料は、老後に支払われる老齢年金や障害者となった場合の障害年金などの財源となる。
厚生年金の保険料率は、健康保険とは異なり、企業や地域に関わらず一定(18.3%)だ。
給与所得者の場合は、他の社会保険料と同じく給与やボーナスから天引きされる。
■ボーナスにかかる社会保険料4:介護保険料
介護保険料は健康保険の一部で、40歳以上になると加算される。介護サービスの運営財源であり、自身が要介護者となった場合も介護サービスを利用できるようになる。
介護保険の保険料率は、加入する健康保険に準じるため、健康保険と同様に組合や地域、年度によって異なる。
給与所得者の場合は、健康保険料に上乗せされるかたちで給与やボーナスから天引きされる。
ボーナスと給与で引かれる税金は違う?
ボーナスと給与はどちらも給与所得として所得税・社会保険料が引かれるが、異なる部分もある。両者の違いを見てみよう。
■給与とボーナスでは法律上の扱いや税金の税率が異なる
給与は労働基準法や最低賃金法によって支払い方法や金額、労働者への告知義務などが定められている。
一方、ボーナス(賞与)は、支給の有無や回数、金額などが企業の判断に委ねられており、支払いに関する法的義務はない。
所得税(源泉所得税)を計算する際の税率表も、給与とボーナスでは別のものが使用される。
■ボーナスは住民税の課税対象外
給与とは異なり、ボーナスは住民税が引かれない。ただし、住民税を計算する際の給与所得にはボーナスも含まれる。
■ボーナスの支給については会社の就業規則や労働契約をチェックしよう
ボーナスは給与よりも個々の企業による差が大きいため、会社の就業規則や労働契約の内容をチェックしたい。
ボーナスの支給時期や回数・金額などが記載してある場合は、給与と同じく賃金の一部として企業に支払い義務が生じる。
ボーナス手取り額の計算方法は?
ボーナスの手取り額を計算したい場合は、総支給額から所得税と社会保険料を差し引けば金額がわかる。
・ボーナス手取り額=ボーナス総支給額-所得税-社会保険料
ここでは、ボーナスから差し引かれる所得税と社会保険料の計算方法を見ていこう。
■ボーナスから差し引かれる所得税の計算方法
ボーナスから引かれる源泉所得税は、以下の式で計算可能だ。ただし、実際に計算する際は自分の社会保険料と所得税率を知る必要がある。
・所得税=(ボーナス総支給額-社会保険料)×所得税率
社会保険料は、先述の「健康保険」「雇用保険」「厚生年金保険」「介護保険」を合算した金額。
所得税率は、ボーナスが支給される月の前月の給与額(社会保険料控除後)を元に決まる。扶養家族がいる場合は、扶養人数によってボーナスの額面にかける税率が異なるため注意したい。
※参考:賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和 6 年分)
■ボーナスから差し引かれる社会保険料の計算
ボーナスから引かれる社会保険料は、それぞれ以下の式により計算する。
・健康保険料=標準賞与額(1,000円未満切り捨て)×健康保険料率(40歳以上の場合は健康保険料率に介護保険料率を加算)×1/2(労使折半のうち労働者負担分)
・雇用保険料=ボーナス総支給額(1,000円未満切り捨て)×0.3%(労働者負担分の雇用保険料率)
・厚生年金保険料=標準賞与額(1,000円未満切り捨て)×厚生年金保険料率(18.3%)×1/2(労使折半のうち労働者負担分)
※健康保険料率は健康保険の種類や地域、年度により異なる
※雇用保険料率は業種、年度により異なる
■ボーナスの手取り額は、税金を考慮して総支給額の2割から3割で見ておく
このように、ボーナスから差し引かれる税金と社会保険料は、きちんと求めると複雑な計算が必要になる。ざっくり手取り額のイメージが知りたい場合は、ボーナス総支給額の2割から3割、と考えておくと良いだろう。
同じボーナス額面であれば、扶養人数が多いほど税率が下がるため、手取り額は増える。また、ボーナス額面と扶養人数が同じでも40歳以上は雇用保険料が加算されるため、手取り額が少なくなる仕組みだ。
なお、年齢や扶養人数が同じでも、ボーナス額面が大きいほど所得税率は上がるため、総支給額に占める手取りの割合が小さくなることも覚えておきたい。
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文/編集部