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スズキ「ジムニー」が南アフリカでも熱狂的なファンに愛される理由

2025.03.16

予約殺到によりわずか5日で受注停止になったスズキの新型車、5ドアの「ジムニー ノマド」。日本でもファンが多いジムニーだが、日本から遠く離れた南アフリカでも人気車のひとつ。実は、日本より早くから「ジムニー5ドア(Jimny 5-door)」が発売されていた国でもあるのだ。2023年には国内のジムニーオーナーが集結してギネス記録を更新したことも話題となった。南アフリカでジムニーが人気の理由を、生活体験を交えて紹介する。

トヨタ、スズキ、いすゞ…街中では日本車が珍しくない

そもそも南アフリカでは、ジムニー、スズキに限らず日本車をよく見かける。2024年の販売台数ランキングでは1位トヨタ、3位スズキ、6位いすゞ、7位日産。ドイツ車やアメリカ社、韓国車や中国車など世界中のメーカーがある中で、約半数が日本車だ。日本車が人気の理由は、品質への信頼感と燃費の良さ。さらに、耐久性が高いことから中古市場でも価値が落ちづらいのもポイントだ。周りでも、多少の損傷があっても購入時とほぼ同じ価格で売れた例が少なくない。

高い人気の日本車の中でも、手ごろな価格に定評のあるスズキ車の人気は上昇中。販売台数における2024年の市場シェアは11.6%で、今年2025年にはランキング2位に上がると予測されている。実際、直近の1月、2月の単月販売台数では、スズキは2位を維持している。

ショッピングモールの駐車場で見かけた「ジムニー5ドア」。日本より早く2023年に発売された

ジムニーオーナーが集結してギネス記録を更新!

ジムニーに限らずスウィフトなど複数車種を取り扱うスズキ南アフリカの公式サイトでは、「カルト的人気」との記載があるジムニー。SNSでは、ジムニー好きが集まるコミュニティがいくつもあり、コミュニティ内では“ジムニーに乗って”行く旅行や、ただ“ジムニーに乗って”集まるイベントがたびたび計画されている。イベントによっては、ジムニーを持っていなくても“ジムニー愛があれば参加OK”というものもある。

第1回ジムニー・ギャザリングの航空写真

そんな人気を背景に、2023年9月には国内のジムニーオーナーを集めて初となる「ジムニー・ギャザリング」が開催された。ロードトリップやキャンプで人気な風光明媚なクラレンスという町に796台のジムニーが大集結。ライブミュージックステージやジムニーの良さが活かせる四駆トラックなどが用意され大いに盛り上がった。イベントのメインは最終日に予定されたギネスチャレンジ。787台のジムニーが一斉にライトを点灯し「最も多くの車が同時にライトを点灯させる(The most cars to switch on their lights simultaneously)」というギネス世界新記録を達成した。

各地から様々な種類のジムニーが集まり、新型車の展示も行われた

イベントは3日間にわたり、連日参加する人向けにキャンプサイトが用意された

今年9月には待望の第2回ジムニー・ギャザリングが開催予定で、さらなる記録更新が期待されている。このイベントがSNSで発表されると、ファンは大喜び。コメント欄も盛り上がり、「もう周辺エリアの宿泊を予約した」という報告、「チケット発売が待ちきれない」「それまでにジムニーを手に入れなきゃ」という意気込み、さらには「サウジアラビアから参加できる?」という国外からの参加希望者も。そのほか、ジムニーオーナーに向けて悪路を走破するための運転トレーニングクラスを用意する企業や、ジムニー・ギャザリングに参加するための10日間旅行を企画する団体もある。コミュニティ活動もより一層活発になり、各コミュニティの投稿をジムニー・ギャザリング公式アカウントがリポスト。連日10前後の投稿が確認できるほど、盛り上がりを見せている。

アウトドア好きに愛されるジムニー

南アフリカは、日本の国土の3倍の面積をもち、豊かな自然がとても身近な存在だ。世界の都市の緑化指数が分かるツリーペディアによると、最大都市ヨハネスブルグは23.6%で、人口密度が近い神戸の9.4%と比べると約2.5倍。野生動物や野鳥、花々を楽しめるような公園も多い。週末や長期休暇には、少し離れた国立公園へハイキングやキャンプ、ゲームドライブ(サファリ)に出掛ける人も少なくない。

そんな彼らが好んで行くような場所には、オフロード(未舗装道路)が多い。「この先は四駆のみ」という道も多く、めいっぱい楽しむためには四駆は不可欠。ロードトリップを楽しむ彼らにとって、長距離での乗り心地も大切だ。

この先はオフロード(未舗装道路)の道路標識

南アフリカのゲームドライブ(サファリ)では、サファリカーではなく自家用車で周る「セルフドライブ」ができるところも。オフロード(未舗装道路)が多く、四駆だと通れる道が増えるため動物に会える確率が高くなる

デザインが似ているメルセデス・ベンツ「Gクラス(旧称ゲレンデ)」に対抗し、「スモール・ゲレンデ」と呼ばれることもあるジムニーは、大型で高性能な他のSUVに比べるとお手頃価格なことも人気の秘訣だ。ジムニーと同カテゴリのトヨタ「フォーチュナー」は739,100ランド(約628万)からに対し、「ジムニー3ドア」は390,900ランド(約332万円)からと約半額。最新型「ジムニー5ドア」でも429,900ランド(約365万円)からだ。その手ごろな価格から2台目、3台目として所有する人もいて、大型のキャンピングカーで移動しながら、小回り用にジムニーを牽引している様子も見かける。ルーフテントを付けるなど、各々の趣味や目的に合わせてカスタマイズする人も少なくない。

キャンピングカーに牽引されるジムニー

 同じようにジムニーを牽引してグループ旅行を楽しんでいるジムニーオーナーたち

友人の南アフリカ人(20代前半の女性)はハイキングやサファリが趣味で、毎週のようにどこかに出かけて楽しんでいる。彼女にとってジムニーは「小さくて実用的。いつでもどこにでも出かけられる」ため、早く手に入れたいとよく話している。彼女は出かけた先でジムニーオーナーに会うことも多く、「ジムニーに乗っている人はみんなフレンドリー」と乗っている人たちのことも好きになっている。きっとこの連鎖が、ますますジムニーへの憧れやジムニー愛を強め、人気を高めているのだ。

文・写真/村上未来
旅行会社勤務、外資系航空会社機内誌編集長を経て、2022年より南アフリカ共和国在住。南アフリカ観光局SAスペシャリストプログラム修了。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ(https://www.kaigaikakibito.com/)」会員。

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