
筆者は、猫を飼っている。完全室内飼育である。
理由は単純。野外では交通事故、感染症、虐待、そして迷子といった、様々なリスクが存在するためだ。だから、網戸も使わない。猫がその気になれば網戸などは簡単に破れてしまう。引っ越しの際には玄関に至る経路に、もう1つドアのある家を探して入居した。とにかく万難を排して飼い猫の終生飼育を心がけるのが飼い主の務めと考えている。
ただ、毎日のように「もしも」の事態を考えてしまう。最善を尽くしても、時に最悪の事態は起きてしまう。その可能性は恐らくどんなに頑張っても完全な0%にはできない。
そこで大事なのは、もしペットを迷子にさせてしまった場合の捜索手段を常々認知しておくこと。ペット探偵に捜索を依頼したり、自分で近所をくまなく探してみたり、SNSを使って迷子情報を拡散してもらうなど、やれることはいくつかある。現在はインターネットを効果的に使って、ペット捜索の確度を高める方法だってある。
迷子ペットとの再会を目指す飼い主に、AIとICTでサポートするサイト、「Find MissingPets.jp」
勿体つけても仕方がないので、早速本題に入りたい。先日、筆者はX上においてたまたま、迷子ペットとの再会において大きな支えになりそうなサイト。
「Find MissingPets.jp」に巡り合った。
AIとICTを用いて、国内で迷子になったペットたちと飼い主の再会を補佐するというのが、このサービスの特徴。
ICTとは情報通信技術を指し、企業においては生産性の向上や迅速な業務の促進に用いられてきた。普段あまり意識していないが、私たちも日ごろ活用しているSNSで、ICT機器であるパソコンやスマホを介してコミュニケーションツールとして利用している。
この「Find MissingPets.jp」、筆者も実際に触ってみたがなかなか心強い。
サイトを訪れた人、それぞれの立場毎にどう利用すべきかということが簡潔なフローチャートでガイドされているので、老若男女問わずに、複雑な操作も不要で感覚的に閲覧と利用が可能となる。
ペットが迷子になった飼い主向けに、迷子ペットの捜索情報登録を促し、同時に近隣行政機関への届出も促す流れもシンプルだ。
簡単な条件を入力するだけで最寄りの保健所、愛護センター、そして警察署への連絡先を提示してくれるので、迷子になったペットの情報公開と、近隣の行政機関との連携をこのサイト一つで完了できる。
手間が減ればその分飼い主はペットの捜索に費やす時間を確保できるので、切迫した状況ほどありがたい。
既に「Find MissingPets.jp」では、犬や猫、うさぎや鳥などの迷子情報を登録し、再会を待つ飼い主からの、情報提供を求める投稿が寄せられている。
また、もう一つ目を引いたのが、迷子になったとおぼしきペットの情報提供も、この「Find MissingPets.jp」に寄せられている点だ。
こちらも簡単にアクセス可能で、飼い主が名乗り出るのを待っているペットたちの情報を確認することができる。
各自治体の保健所も、収容動物に関しての写真や保護した日にちなどはウェブサイト上で公開することはあるが、本サービスはさらにこの詳細についてもかなり掘り下げて掲載している。
たとえば所有者不明のままのペットを保護したという情報。
野外を歩いていた犬や猫に関しての目撃情報(直接保護していなくても写真がアップロードされているケースも多い)。
そして迷子とおぼしきペットを警察や役所、保健所に預けた旨の情報提供なども確認することが可能だ。
正直、自分のペットが迷子になるということが現実になってほしくはない。
が、絶対にそうならないとも言い切れない。まさかの事態を危惧していた立場としては非常に魅力的なサービスに思えた。
そこで筆者は、このサービスの開発・提供を行っているnekonareさんにインタビューをお願いしたところ、快く対応していただけた。
「Find MissingPets.jp」が誕生した経緯と、今後の展望について伺ったので、筆者のように万が一の事態を常々危惧している心配性なペットの飼い主さんたちには、ぜひ一読いただきたい。
元々保護猫譲渡会で活動していたnekonareさん。SNSとの連携しやすいサイトの開発に着手
松本 まずはじめに、「Find MissingPets.jp」というサービスを立ち上げるきっかけとなった理由や経緯を教えてください?
nekonareさん 私はもともと保護猫譲渡会のスタッフをしており、何か保護猫に関する課題を解決できるWebサービスを開発したいと考えていました。最初は猫の生体譲渡サービスを検討しましたが、既存のサービスが多かったため断念。その後、猫の避妊・去勢に関する補助金を可視化するサービスを開発しました。
次に着目したのが「迷子ペット」の問題です。
日本ではペットが迷子になっても、解決を専門とする職種が少ないことを知り、迷子ペットの情報を統合するサイトを開発しました。
さらに、震災時に迷子になったペットの存在にも問題意識を持ち、そうした不幸を減らすことを大きな目的としています。
開発のポイントとして、自治体の迷子ペット情報は更新が遅れがちで、古いシステムを10年以上使い続けることも珍しくありません。
そのため、レスポンシブ対応し、SNSと連携しやすいサイトを迅速に開発・改良し、最終的には環境省に運営してもらうことを目標にしています。
民間の迷子ペットサイトと異なり、自治体と連携し、実際にシステム統合を進めている点が大きな特徴です。
飼い主、迷子になったペット、そのペットを保護した方、そして行政という関係性を密に接続させるサービス
松本 本サービスに関して、私は最初、迷子になったペットが出てしまった場合に利用することで目撃情報を募ることに特化したサイトと思っておりました。
その機能ももちろん実装されているのですが、一方で迷子の届出先検索、保護された動物についての情報の一覧、屋外で目撃された迷子と思しき動物についての情報なども確認できたため、驚いております。
こういった機能も追加した理由と、利用者さんからの反応について教えてください?
nekonareさん「迷子ペット」の問題を分解し、飼い主・ペット自身・保護主・行政という関係者を整理しました。
迷子にしてしまった飼い主は、何をすべきか分からないことが多いです。そのため、「このサイトを見れば全ての情報が揃っている」という状態を目指し、届出先検索、保護情報一覧、迷子の目撃情報の統合などの機能を拡充しました。
加えて、ペット捜索業者と敵対しない仕組みとして、業者への依頼機能も提供しています。
行政との打ち合わせの中で得た知見も反映しました。
たとえば、犬が迷子になると広範囲を移動するため、複数の自治体に届出を出さなければなりません。しかし、自治体同士は必ずしも連携しておらず、情報の分断が生じていました。
「Find MissingPets.jp」では、隣接市区町村への届出をレコメンドし、自治体情報を一元化。これにより、Google検索で自治体を個別に調べる手間を削減しました。
利用者からの反響として、感謝の声が多く、迷子を経験した飼い主が他の迷子ペットの拡散を手伝ってくれる傾向があります。こうした協力の輪が、私の活動の原動力となっています。