
今年も花粉症の季節が到来した。
花粉の飛散量は例年よりも増加しており、多くの人が不快な症状に悩むことになりそうだ。
日本国民の実に3人に1人が罹っており、もはや国民病ともいえる花粉症だが、簡単かつ有効な対策はないのだろうか。
今回は、「スギ花粉の症例数日本一」の喜平橋耳鼻咽喉科の村川哲也院長にうかがった。
花粉症患者が増加する理由
――花粉症患者は年々増える一方ですが、そもそもなぜ増えているのでしょうか?
村川哲也院長(以下、村川):杉の木が増えすぎて、飛散する花粉の量も増えているからです。
戦後、木材が足りないときに大規模な植林をしました。その後、価格の安い輸入材に押され、結局伐採されないまま育っている杉の木がたくさんあります。伐採するにも林業従事者の高齢化で思うようにいきません。それで、ここ10年で花粉の量は倍ぐらいに増えているのです。
都市部に花粉症患者は多いのも理由がある
――杉林のある山間部に住んでいる人よりもむしろ、都市部のほうが花粉症で悩んでいる人が多いのは、なぜでしょうか?
村川:杉の花粉は、偏西風に乗れば優に100km以上は飛散します。北海道、沖縄などを除いた津々浦々に花粉はあるのです。都市部も例外ではありません。
また、山間部の地面は土が多いですが、都市部ではたいがい舗装されています。土だと、落ちた花粉はそこで腐ったりします。
ですが、舗装面だとそうならず、風で舞い上がって、常に空気中に花粉が漂っているような状態になります。東京のような大都会だと、そこのいる人は常時、花粉にさらされているようなものです。
さらに厄介なのは、PM2.5や黄砂を含む様々な大気汚染物質の存在です。花粉にこうした微粒子がくっつくと、花粉症の症状が出やすくなります。
簡単にできる日頃の花粉対策
――日常的に症状を軽減する方法に、どんなものがあるでしょうか?
村川:外出時は、不織布マスクをしておくのが、手軽でとても効果的です。コロナ禍の頃は、ほぼ全員マスクをしていました。事実その間は、花粉症の新規発症者がかなり減りました。
マスクは、ウイルスや細菌だけでなく、花粉もブロックすることができるのです。さらに効果を高めるには、マスクの内側にコットンをガーゼで包んだインナーマスクを重ねるといいでしょう。
それから、花粉症対策をした眼鏡もおすすめです。眼鏡の周囲にゴーグルのようにフードがついていて、花粉が目に入るのを防ぐものです。さらに、つばの広い帽子をかぶるとか、日傘をさしておくと、上から降ってくる花粉にある程度対処できます。
帰宅時の対策も忘れずに
――外出先から帰ってきた時も、何かしら対策をしておくべきでしょうか?
村川:出歩いていると、目には見えないですが、服に花粉がたくさん付いています。そのままで家に入ると、室内も花粉だらけになってしまいます。
なので、玄関に入る前に、手でパタパタと服を払うといいでしょう。粘着用の医療クリーナーがあれば、もっと効果的に花粉を取れます。上着の素材も、ポリエステルなどツルツルしたものは花粉が付きにくいので、そうした衣類を選ぶのがおすすめです。
また、玄関を上がってすぐの壁にフックを取り付け、そこに上着や帽子を掛けておき、それから、洗面台に行って手や顔を洗い、できたら鼻うがいしましょう。ちょうど入浴タイムであれば、そのままお風呂に直行するのがベストです。
特に、花粉症の重症の方なら、家族も同じように対策を講じて協力してあげましょう。
家電も活用して室内の花粉を除く
――空気清浄機はあったほうがいいですか?
村川:空気清浄機はおすすめです。室内に漂う花粉を、短時間で取り去ってくれます。床に落ちている花粉については、掃除機をかけると舞い上がってしまいます。そこで、「ルンバ」といった、掃除ロボットがベターです。
一昔前と違って、家電量販店でそうした製品は割と安く買えますので、それらを活用すれば、かなり楽に過ごせると思います。
部屋の換気はどうする?
――窓を開けて換気をすると、どうしても花粉が入ってきますよね。花粉の飛散時期は換気をしないほうがいいのでしょうか?
村川:ネットで花粉飛散情報をチェックし、花粉があまり飛んでいない時間帯に換気するといいでしょう。その際も、レースのカーテンを閉めておき、花粉の流入を減らします。