
日本労働組合総連合会は、20歳~59歳の男女を対象に「夫婦別姓に関する調査2025」を実施し、その結果を公開した。
「選択的夫婦別氏制度」の認知率は51.6%、既婚女性では57.5%
同調査は、「夫婦の姓のあり方」や「選択的夫婦別氏制度」に対する意識や実態などを把握するために行なわれたもの。「夫婦の姓のあり方についてどう思うか」という質問では、「夫婦は同氏でも別氏でも構わない。選択できる方がよい」(46.8%)が「夫婦は同氏がよい」(26.6%)を大きく上回った。
また、「選択的夫婦別氏制度が導入された場合、どうしたいか」という問いに対しては、「夫婦同氏にしたい」が31.5%、「夫婦別氏にしたい」が9.5%、「どちらでもよい」が37.9%、「わからない」が21.1%という結果になった。
【調査結果】
・夫婦の姓のあり方に対する考え、「夫婦は同氏でも別氏でも構わない。選択できる方がよい」(46.8%)が「夫婦は同氏がよい」(26.6%)を大きく上回る
全回答者(1,000名)に、夫婦の姓のあり方についてどう思うか聞いたところ、「夫婦は同氏がよい」は26.6%、「夫婦は同氏でも別氏でも構わない。選択できる方がよい」は46.8%、「わからない」は26.6%となり、同氏か別氏かを選べることが望ましいと考える人の割合は同氏が良いと考える人の割合を大きく上回ることがわかった。
男女別にみると、「夫婦は同氏でも別氏でも構わない。選択できる方がよい」と回答した人の割合は、女性では52.0%と、男性(41.6%)と比べて10.4ポイント高くなった。
男女・年代別にみると、「夫婦は同氏でも別氏でも構わない。選択できる方がよい」と回答した人の割合は、40代女性(57.6%)が最も高くなった。
男女・婚姻状況別にみると、既婚女性では「夫婦は同氏でも別氏でも構わない。選択できる方がよい」が55.3%と、他の層と比べて高くなった。
・「婚姻届を提出した際、名字(氏)を変えた」、女性では85.5%、男性では8.1%
婚姻届を提出した人(女性228名、男性185名)に、婚姻届を提出した際、名字(氏)を変えたか聞いたところ、女性では「変えた」が85.5%、「変えていない」が14.5%と、婚姻届を提出した女性の大多数が、名字を変更したことがわかった。
一方、男性では「変えた」が8.1%、「変えていない」が91.9%と、婚姻届提出時に名字を変更した人はごく少数にとどまった。年代別にみると、40代男性では「変えていない」が98.2%と、他の年代と比べて高くなった。
また、婚姻届を提出していない人(女性272名、男性315名)に、婚姻届を提出する際、名字(氏)を変えると思うか聞いたところ、女性では「変えると思う」が36.8%、「変えると思っていない」が15.8%、「わからない」が47.4%、男性では「変えると思う」が9.2%、「変えると思っていない」が49.2%、「わからない」が41.6%となった。
・婚姻届の提出により名字(氏)を変えた際に感じたこと、「銀行口座やクレジットカードなどの名字(氏)の変更が面倒」が69.0%で最も多い
婚姻届の提出により名字(氏)を変えた人(210名)に、婚姻届の提出により名字(氏)を変えた際に感じたことを聞いたところ、「銀行口座やクレジットカードなどの名字(氏)の変更が面倒」(69.0%)が最も高くなった。改氏に伴う銀行口座やクレジットカードの名義変更の手続きを煩わしく感じた人が多いようだ。次いで高くなったのは、「結婚したと実感した」(54.3%)、「自分が違う人になったように感じた」(14.8%)、「できれば変えたくなかったが仕方なかった」(14.3%)、「生活をするうえで不便・不利益があった」(12.4%)だった。
また、名字(氏)を変えていない人(未婚者を含む)(790名)に、婚姻届の提出により名字(氏)を変える場合感じるであろうことを聞いたところ、「銀行口座やクレジットカードなどの名字(氏)の変更が面倒」(45.7%)が最も高くなり、「結婚したと実感する」(18.5%)、「生活をするうえで不便・不利益がある」(14.3%)、「自分が違う人になるように感じる」(10.9%)、「できれば変えたくないが仕方ない」(8.1%)が続いた。
・婚姻の際いずれか一方が名字(氏)を改めなければならないことが婚姻の妨げになると思うか、「どちらともいえない」が36.7%で最も高く、「妨げになる」は11.4%
現在の民法のもとでは、婚姻に際して、いずれか一方が必ず名字(氏)を改めなければならないことになっている。全回答者(1,000名)に、婚姻に際していずれか一方が必ず名字(氏)を改めなければならないことが、婚姻の妨げになると思うか聞いたところ、「妨げになる」は11.4%、「妨げにならない」は28.5%、「どちらともいえない」は36.7%、「わからない」は23.4%となった。
男女・年代別にみると、「妨げになる」と回答した人の割合は、20代男性では20.8%と、他の層と比べて高くなった。
男女・婚姻状況別にみると、「妨げになる」と回答した人の割合は、男女とも既婚(女性10.1%、男性7.0%)と比べて独身(女性14.2%、男性11.7%)のほうが高くなった。
さらに、「妨げになる」と回答した人(114名)と「妨げにならない」と回答した人(285名)に、それぞれ回答した理由を聞いたところ、婚姻の妨げになると思う理由としては、「女性ばかりが変えないといけない現状が理不尽だと思うから」や「キャリアの中断が発生するから」、「今の自分の名字が気に入っているから」といった回答が挙げられた。
一方、婚姻の妨げにならないと思う理由としては、「名字が変わることで、結婚したと実感できるから」や「通称使用で十分だから」、「戸籍制度が重要と考えているから」といった回答がみられた。
・選択的夫婦別氏制度の認知率は51.6%、既婚女性では57.5%
“選択的夫婦別氏制度”とは、夫婦が望む場合に、婚姻後も夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(氏)を称することを認める制度。改氏によるアイデンティティの喪失、職業生活や日常生活上の不便・不利益などを背景に、選択的夫婦別氏制度の導入を求める意見がある。
全回答者(1,000名)に、選択的夫婦別氏制度(選択的夫婦別姓制度)について知っているか聞いたところ、「よく知っている」が9.4%、「少し知っている」が42.2%で、合計した『認知率(計)』は51.6%、「全く知らなかった」が20.5%、「あまり知らなかった」が27.9%となり、選択的夫婦別氏制度について、半数近くの人は認知していなかったことがわかった。
男女別にみると、『認知率(計)』は、女性では53.4%と、男性(49.8%)と比べて3.6ポイント高くなった。
男女・年代別にみると、『認知率(計)』は、40代女性(60.0%)が最も高くなった。
男女・婚姻状況別にみると、『認知率(計)』は、男女とも独身(女性50.6%、男性47.3%)と比べて既婚(女性57.5%、男性56.8%)のほうが高くなった。
・「選択的夫婦別氏制度が導入された場合、夫婦別氏にしたい」9.5%、「どちらでもよい」37.9%
全回答者(1,000名)に、選択的夫婦別氏制度が導入された場合、どうしたいか聞いたところ、「夫婦同氏にしたい」は31.5%だった。他方、「夫婦別氏にしたい」は9.5%、「どちらでもよい」は37.9%、「わからない」は21.1%だった。
婚姻状況別にみると、「夫婦同氏にしたい」と回答した人の割合は、独身では26.7%と、既婚(39.2%)と比べて12.5ポイント低くなった。
男女別にみると、「夫婦別氏にしたい」と回答した人の割合は、女性では12.4%と、男性(6.6%)と比べて5.8ポイント高くなった。
男女・婚姻状況別にみると、既婚女性・既婚男性では「夫婦同氏にしたい」(順に41.2%、36.8%)が全体と比べて5ポイント以上高くなった。また、独身女性では「夫婦同氏にしたい」(25.7%)が全体と比べて5ポイント以上低くなった。
男女・就業状況別にみると、就業女性では「夫婦別氏にしたい」が13.8%と、他の層と比べて高くなった。
■選択的夫婦別氏制度が導入された場合に夫婦同氏にしたい女性の77.3%が「自分が配偶者の名字(氏)に変える」と回答
選択的夫婦別氏制度が導入された場合に夫婦同氏にしたい人(315名)に、夫婦同氏になる場合、自分が配偶者の名字(氏)に変えるか、配偶者が自分の名字(氏)に変えてほしいか聞いたところ、「自分が配偶者の名字(氏)に変える」は45.1%、「配偶者が自分の名字(氏)に変えてほしい」は25.1%、「どちらでもよい」は25.7%、「わからない」は4.1%となった。
男女別にみると、女性では「自分が配偶者の名字(氏)に変える」(77.3%)が大多数となりました。一方、男性では「配偶者が自分の名字(氏)に変えてほしい」(48.7%)が最も高く、次いで、「どちらでもよい」(34.9%)となりました。婚姻時は女性が名字(氏)を変更するという考え方が広く浸透していることがうかがえる。
男女・年代別にみると、30代男性では「配偶者が自分の名字(氏)に変えてほしい」と「どちらでもよい」が同率(42.9%)となった。
■選択的夫婦別氏制度が導入され、夫婦別氏で子が複数いる場合、「子はいずれも同じ名字(氏)に統一した方がよい」43.1%
全回答者(1,000名)に、選択的夫婦別氏制度が導入された場合、夫婦別氏で子が複数いる場合に、子の名字(氏)についてどう思うか聞いたところ、「子はいずれも同じ名字(氏)に統一した方がよい」は43.1%、「子の名字(氏)は同じでも違ってもどちらでもよい」は24.6%、「わからない」は32.3%となった。
男女・婚姻状況別にみると、既婚女性では「子はいずれも同じ名字(氏)に統一した方がよい」が53.1%と半数を超えた。
さらに、選択的夫婦別氏制度が導入された場合の意向として「夫婦別氏にしたい」「どちらでもよい」と回答した人(474名)に、選択的夫婦別氏制度が導入され自分が夫婦別氏を選んだ場合で、子が複数いる場合の子の名字(氏)についてどう思うか聞いたところ、「子の名字(氏)は同じでも違ってもどちらでもよい」が43.5%と、「子はいずれも同じ名字(氏)に統一した方がよい」(32.5%)より高くなった。また、「わからない」は24.1%だった。
男女・婚姻状況別にみると、既婚男性では「子の名字(氏)は同じでも違ってもどちらでもよい」が51.6%と、他の層と比べて高くなった。
・「職場では旧姓の通称使用が認められている」37.9%、[金融業、保険業]では48.6%、[サービス業]では20.2%にとどまる
有職者(773名)に、職場では、旧姓(結婚前の名字)の通称使用が認められているか聞いたところ、「認められている」は37.9%、「認められていない」は10.6%、「わからない」は51.5%となった。
業種別にみると、旧姓の通称使用が認められていると回答した人の割合は、[金融業、保険業](48.6%)が最も高く、[製造業](45.5%)、[情報通信業](45.0%)が続いた。他方、[サービス業](20.2%)では2割にとどまった。
・婚姻で名字を変えた人の16.2%が「旧姓を通称使用している」
婚姻届の提出により名字(氏)を変えた人(210名)に、旧姓を通称使用しているか聞いたところ、「使用している」は16.2%、「使用していない」は83.8%と、旧姓を通称使用している人は少数にとどまった。
女性の回答を年代別にみると、「使用している」と回答した人の割合は、年代が低いほど高くなる傾向がみられ、20代・30代では24.0%が旧姓を通称使用していた。
また、就業女性(123名)についてみると、「使用している」と回答した人の割合は18.7%となった。
年代別にみると、「使用している」と回答した人の割合は20代・30代では34.0%と、3人に1人が旧姓を通称使用していることがわかった。
さらに、名字(氏)を変えていない人で、婚姻届を提出する際に名字を変えると思う人、または名字を変えるかわからない人(389名)に、婚姻により名字(氏)を変える場合、旧姓を通称使用するか聞いたところ、「使用する」は17.0%、「使用しない」は16.7%、「わからない」は66.3%となった。
男女別にみると、男性では「わからない」が76.9%と、女性(59.0%)と比べて17.9ポイント高くなった。
男女・年代別にみると、「使用する」と回答した人の割合は、30代女性(29.2%)が最も高くなった。
雇用形態別にみると、「使用する」と回答した人の割合は、正規雇用では24.1%と、非正規雇用(11.5%)と比べて12.6ポイント高くなった。
男女・雇用形態別にみると、「使用する」と回答した人の割合は、正規雇用の女性では29.7%と、他の層と比べて特に高くなった。
【調査概要】
調査タイトル:夫婦別姓に関する調査2025
調査対象:ネットエイジアリサーチのモニター会員を母集団とする20歳~59歳の男女
調査期間:2025年2月7日~2月10日の4日間
調査方法:インターネット調査
調査地域:全国
有効回答数:1,000サンプル
実施機関:ネットエイジア
関連情報
https://www.jtuc-rengo.or.jp/
構成/立原尚子