
“ウェルビーイング”という状態は、人間だけに限定している言葉ではない。ウェルビーイング事業では、人々の癒しの存在になっているペットの健康や状態、過ごし方まで含めて、より良い・幸せな状態を考えている。
ペットとして人気の高いネコは、実は腎臓病で亡くなることが多い。一度傷ついた腎臓は回復することなく、完治することはない。また人間にとっても他人事ではなく、日本国内には慢性腎臓病患者が1330万人いるとわれている。2030年には2000万人に達する見込みで、腎臓を見直し、ケアする意識が求められている。
ネコの腎臓病対策にシルク糸タンパク質のサプリNEXT NEW WORLDが開拓する「腎活」の市場
動物病院専売の動物用サプリメント『SILKFULL PRO』 ペットのご飯にまぜて腎臓ケア
群馬県・桐生市に本社を構える株式会社NEXT NEW WORLDは、そんな「腎臓」に対する「腎活」を応援する製品の開発を行っている。もともとタンパク質の研究開発や、動物用のサプリメントの自社ブランド『SILKFULL(シルクフル)』などの運営、食品や美容原料等の卸販売などを行っているが、この度、動物病院専売となる動物用のサプリメント『SILKFULL PRO』を21日に発売した。
NEXT NEW WORLDの代表取締役CEOの高島耕太郎氏によると、同社は信州大学やシンガポールの国立機関、横浜市立大学の腎臓循環器科や近畿大学などとシルク糸のタンパク質について共同研究を行い、シルク糸の網目状になっているタンパク質の水溶化に成功。糸状となったシルク糸のタンパク質は、摂取することで体内の不要なものを吸着し、外に排出する。同社はこれを『カラダシルク(R)』と名づけ、ヒト向けやペット向けの製品に展開している。
株式会社NEXT NEW WORLD代表取締役CEOの高島耕太郎氏
腎臓は、体内の不要なものを尿として出すフィルターのような役目を果たしている臓器。しかしプロテインや塩分、コレステロールなどの過度な摂取により、アンモニアが発生してしまう。このアンモニアが腎臓に悪影響を及ぼすとされており、『カラダシルク(R)』はこうしたアンモニアやコレステロールを吸着して体外に出す。高島氏によると、実際にネコやイヌの腎臓に関する数値が下がる臨床データが出ているという。
この『カラダシルク(R)』を配合している動物用のサプリメントが『SILKFULL PRO』。もともと一般向けシルクサプリとして『SILKFULL』が発売されており、こちらには『カラダシルク(R)』が1包につき90mg配合されている。『SILKFULL』は発売開始からで約1年経過し、既に100万食以上販売された。この度の動物病院専売となる『SILKFULL PRO』には、1包につき160mgの『カラダシルク(R)』を配合。水溶液状で無味無臭な生態親和性の高いタンパク質なので、味やニオイを変えることなく、ペットのご飯に混ぜで使用することができる。
この日は同社取締役の旭恭平氏も『SILKFULL PRO』について解説。現在、一般向けのお店で販売している『SILKFULL』はシルクの成分を純度100%で配合をしたシルクサプリメントで、ペットショップやトリミングサロン、一部の動物病院でも取り扱っている。「『SILKFULL PRO』は従来の『SILKFULL』と使っている原料は一緒ですが、より高配合されています。1包あたりで約2倍近くのシルク成分が摂取できるため、飼い主さんがパウチを何度も開ける手間を少し減らせますし、コストパフォーマンスも高いです」と説明した。
「従来の『SILKFULL』サプリメントは腎臓負担の予防を目指していくものでしたが、今回お伝えする動物病院専売の『SILKFULL PRO』に関しては、もう少し“腎臓の課題感が強いネコちゃん”に対して届けていくことができます」
『SILKFULL PRO』に関しては誰でも購入できるわけでなく、取扱の動物病院を受診し、医師の診断のもと処方された場合に購入可能。手軽に「腎臓病の予防」として摂取するなら、一般販売向けの『SILKFULL』を選ぶことになる。
旭氏は『SILKFULL PRO』について、「老廃物の吸着では、アンモニアやコレステロールといったもの(数値)のエビデンスも出ておりますので、かなり直接的に腎臓に対して負担を軽減できるのではないかと感じております。また、シルクには強い抗酸化作用が期待できますので、この2つがしっかり“シルクの成分の良さ”としてパフォーマンスを発揮し、メリットが期待されます」と語った。
ゼロから始まる腎臓ケア市場 早期発見よりも予防を目指す『腎臓テック3.0』
NEXT NEW WORLDはシルク糸のタンパク質の研究から、「腎臓」に着目。肝臓でも大腸でもなく、まだあまり日の目が当たっていない「腎臓」だが、慢性腎臓病が増えていることから市場の課題と捉えている。高島氏は、「我々は『腎臓テック3.0』を掲げています。『腎臓テック3.0』の定義は、予防や悪化防止です」と語る。
「現在、予防できる食品がないというのが現実です。『Tech1.0』は腎移植や透析などの腎代替療法。第2次世界大戦から変わっていないソリューションです。お薬ももちろんありますが、なかなか効かないと言われています。『Tech2.0』は早期発見。バイオマーカーなどで早く見つけることも、今はいろんな形でやっています。でも我々としては、早期発見と、それ以前に『予防する』というところに重点を置き、定義付けしています」
『SILKFULL PRO』の商品発表会に登壇したモデルの貴島明⽇⾹(左)
また、今回NEXT NEW WORLDと共に『カラダシルク(R)』の認知拡大のために参画する株式会社インテグレートの代表取締役CEO・藤田康人氏は、「腎臓ケアというマーケットは、日本ではまだ食品やサプリメントではないです。腎臓は相当悪くなってないとは自覚症状がないということで、みなさんも『腎臓をケアしなきゃ』という感覚ってあんまりないんじゃないかなと思います」と語り、「食品のようなもので腎臓をケアできる素材やテクノロジーは、今までありませんでした。それが今回、『カラダシルク(R)』ということで、おそらく世界で初めて、“食べられる原料”で腎臓をケアできる。今までなかった腎臓ケアの市場を、ゼロから作っていくというお手伝いをさせていただければと思います」と意気込んだ。
高島氏は「この『カラダシルク(R)』の原料をいろんな各メーカーさんに卸して、『カラダシルク(R)』をこの世の中に伝えることによって、日本中の慢性腎臓病の方々に対してアプローチというものを考えていきたい」と語る。そして「私たちの社会的な意義は3つ。まず、腎臓病患者の軽減、そして国の医療費の削減。そして2つ目は、GX、グリーントランスフォーメーションという形で、石油や既存の原料を代替し、環境負荷の低い会社を実現するような会社になる。そして3つ目。日本のシルク産業は今本当になくなりかけておりまして、元々200万件あった農家が160件まで今減ってきております。ここで我々が新しい形で産業をアップデートすることによって、“教科書に載るような会社”を目指して進めさせていただいております」と意気込んだ。
この日はネコ好きなモデルで俳優の貴島明⽇⾹や、苅⾕動物病院の医師・伊藤裕⾏氏も登場し、ネコの腎臓病対策にまつわる食生活や生活の仕方などのトークセッションも行われた。
取材・文/コティマム