
急速に一般化し、需要を伸ばし続けているスマートウォッチ。また近年、投資目的も含めて人気を集める高級腕時計。
そんな状況を、カジュアルな価格帯の腕時計ブランドはどうみているのか。そして今、スマートウォッチではなく、あえてアナログの腕時計を選ぶ理由はどこにあるのか。TIMEXの日本代理店を務める、ウエニ貿易 マーケティング&コミュニケーションズ スーパーバイザーの中田俊介氏に聞いた。
※本稿では、クオーツ、自動巻き、手巻きの製品を称して「腕時計」と記載する。
成長を続ける国内時計市場。引っ張るのは高級ブランドとスマートウォッチ
Apple Watch、Pixel Watch、Galaxy Watch、GARMIN…。優れたプロダクトが数々登場し、スマートウォッチはあっという間に一般化した。
その機能性は“腕時計”の枠を超え、ヘルスケアデータやアクティビティデータの測定、睡眠トラッキング、電子決済、音楽再生、SNS、チャットなど、さまざまな用途で活躍する。
株式会社矢野経済研究所が行った調査によると、2023年の国内腕時計市場規模は、小売金額ベースで前年比126.6%で成長している。若い世代の富裕層による実物資産として高級腕時計の購入が活発で、その需要が増加したことが要因だという。なお、この「国内腕時計市場」にはスマートウォッチも含まれる。
株式会社矢野経済研究所による、「国内ウォッチ(腕時計)小売市場規模と予測」の調査結果。
引用元●https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3739
MM総研によると、スマートウォッチの国内販売台数は2015年の調査開始以来、2022年まで順調にプラス成長を続けてきた。2023年は前年比で3.7%減となったが、2024年度は2022年度規模まで回復し、2028年には拡大成長していくと予想されている。
MM総研による「スマートウオッチ販売台数の推移・予測」。
引用元●https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=625
スマートウォッチの継続的な需要増と、投資目的も含む高級腕時計の人気の高まり。その間にいるのが、いわゆるカジュアルウォッチと呼ばれる、低~中価格帯の腕時計ブランドだ。
競争が激化するミドルクラスの腕時計。TIMEXの戦略は?
データから推測するに、10万円以下の価格帯の腕時計ブランドは競争が激しくなっている。TIMEXの腕時計は最多価格が1~3万円程度。まさにそのレンジにある。そんな中、どのような戦略をとっているのだろうか。
「先シーズンから、ブランド本国と“アナログライフ”というテーマを掲げ、シンプルで美しい時計づくりをアピールしています。腕時計だからこそ得られる“1秒1秒を大切に生きる”という価値観を、TIMEXブランドを通して提供していく狙いです。腕時計を見たときに“時間以外の情報が入ってこない”というのも、機能が限定された腕時計ならではの特徴ですよね」
スマートウォッチは「バッテリ持ち」が大きな課題だ。中には1週間程度持続するものもあるが、それでも定期的な充電が必要である。一方の腕時計は、クオーツであればおおよそ2~3年程度電池が持続する。また自動巻きや手巻きであれば、電池切れの心配はない。
「“受け継いでいく”という使い方ができるのも、伝統的な腕時計ならではの魅力です。電子機器であるスマートウォッチだと、その楽しみ方はなかなかできません。ちなみに、TIMEXはファーストウォッチとしても人気があり、腕時計趣味の入り口にもなっています。高級腕時計好きの方々の中にも、TIMEXのファンは多いんですよ」
TIMEXは、1854年、アメリカ・コネチカット州ウォーターベリーで誕生した「ウォーターベリークロックカンパニー」を源流とする歴史ある腕時計メーカーだ。大衆に向けて発売した1ドルのポケットウォッチ「ヤンキー」は、発売から20年間で4000万本を売り上げた。そういったバックボーンと、長年をかけて培った技術力により、高級腕時計好きからも愛されるわけだ。
ベストセラーとなった1890年代の懐中時計「ヤンキー」。“ドルを有名にした時計”とも呼ばれる。
写真●TIMEX