
急に暖かくなったと思ったら、朝晩はまだ寒さを感じ、寒暖差疲労を感じやすい今日この頃。ひときわ体調を崩しやすい時期だ。
3月から4月にかけては年度切り替えの時期ともあり、より体調は万全にしておきたい。
そこで今回は、ヨーグルトで寒暖差疲労に対策し、パフォーマンスを高める方法を、医師のもと紹介する。最後には40代男性医師ならではの健康術もお届けする。
【取材協力】
岡本宗史氏
医師 医学博士 埼玉みらいクリニック院長
1981年大阪生まれ。2011年愛媛大学医学部卒業、2022年東京大学医系大学院卒業。2020年に埼玉みらいクリニック開設。呼吸器内科、一般内科を中心とし、1日200 名程度の診療にあたりながら、「医療リテラシー」 「予防医学」 などの啓発活動を行う。医師として実際の勤務にあたりながら、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」 のコメンテーターやフジテレビ「ぼかぽか」の主治医として活躍中。
プレーンヨーグルトが免疫と睡眠の質を改善する
今回、取材した医師の岡本宗史氏は、先日、あるテレビ番組に出演した際、「食前の無糖ヨーグルトは痩せ体質を作り出す」とのコメントを寄せていた。
ヨーグルトに含まれる酪酸菌と乳酸菌が、体内でGLP-1 と呼ばれるホルモンを作り出す。その結果、腸管の動きが遅くなり、食欲を抑えられる上に、血糖値の上昇も抑えられるという。
まだ正月太りを引きずるビジネスパーソンにとって耳寄りな情報かと思われるが、この食前のヨーグルト効果に加えて、寒暖差疲労にも対抗できる効果も期待できるという。
ヨーグルトには、乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌などの微生物が含まれているが、それらを「プロバイオティクス」と呼ぶ。他にチーズ、納豆、キムチに多く含まれているという。
岡本氏によれば、プロバイオティクスは寒暖差疲労対策に有効という。その理由は「免疫力」と「睡眠の質」を改善することで基礎的な体力作りにつながるからだという。
●免疫力アップ
「プロバイオティクスを摂り、腸内細菌叢を整えることで全身、特に呼吸器系の免疫力が高まることが知られています。プロバイオティクスが、炎症に関与するタンパクであるサイトカインを調節することで、ナチュラルキラー細胞やヘルパー細胞などの免疫細胞を活性化し、抗ウイルス防御が刺激されると考えられています。プロバイオティクスが呼吸感染症を予防する効果があるエビデンスは複数あり、近年ではCOVID-19の流行時、プロバイオティクスを摂取した人たちはそうでない人たちに比べCOVID-19の発症リスクが有意に低かったという研究報告もあります(※1)」
●睡眠の質を改善
「最近では腸内細菌叢が睡眠の質に影響を与えるといった研究もあります。マウスを使った研究では、腸内細菌を抗生剤で除去したマウスは睡眠時のノンレム睡眠が減少したり、逆に起きているはずの時間帯に眠りに入ったりする行動が見られたとのことです。
一方、徳島大学の研究では、定期的に乳酸菌飲料を飲んでいた学生は、試験前にも入眠潜時(床に入ってから入眠するまでの時間)が長くなることなく、深い睡眠をとることができたとのことです」
「ヨーグルト×酢」でさらに働きがパワーアップ
このヨーグルトの働きをさらにパワーアップさせる食べ方があると、岡本氏は言う。それはヨーグルトに「酢」を足すこと。ヨーグルトに酢と聞くと、ちょっとなじみが薄いが、どんなメリットがあるのだろうか?
「ヨーグルトには主に乳酸菌、酢には主に酢酸菌が含まれています。最近の研究では、乳酸菌と酢酸菌を併用することで、自然免疫として大切なマクロファージが相乗的に活性化されることが分かってきました。
事実、乳酸菌と酢酸菌を組み合わせると相乗的な抗菌効果が得られることが近年の研究で明らかになっており、例えば鶏肉に使用したところ、冷蔵保存7日目にはサルモネラ菌の生菌数がゼロになったとの報告もあります(※2)。
またポリフェノールなどの抗酸化物質の活性にも相乗効果があるとされています。乳酸菌が生成する乳酸がpHを低下させ、また嫌気性環境を作ることで酢酸菌の活動が促進されること、酢酸菌が乳酸を基質として酢酸を生成することで、抗菌作用が高まることなどが考えられています(※3)。
結論として、乳酸菌と酢酸菌を一緒に摂取することで発酵効率が高まり、免疫力向上や抗酸化作用の相乗効果、また病原菌の制御を促進することが期待できます」
ヨーグルトを食べるなら、酢を加えるとよりお得になりそうだ。ところでプレーンヨーグルトに酢は流石に馴染みが薄い。
美味しく食べるには、ヨーグルトにリンゴ酢などの果実酢をかけて香りを楽しむほか、ハチミツを混ぜたり、ドライフルーツやナッツをトッピングしたりすると食べやすくなる。ぜひ実践してみてほしい。