DIME MAGAZINE
ここ近年「性的同意」という言葉を耳にすることが増えた。性的同意とは、性的な行為を行う際の意思確認のことだ。性的な行為とは、セックスだけではなく、キスをする、手を繋ぐなどの行為全般を含んでいる。
そんな「性的同意」に関してウェブサービスを提供するのが株式会社ねお巳だ。性的同意サービス「キロク」を2023年12月にリリースし、2025年2月末からは有料プランの提供も始めた。いったいどのような思いから有料プランの提供に至ったのか、代表の新美達矢さんに話を聞いた。
きっかけは恋愛不得手の人の声
ログイン画面
10の質問に答えることで同意を確認するシステム
「性的同意サービス“キロク”」は、性交渉の際に、相手に同意があることを確認してキロクするというウェブ上のシステムだ。「相手から暴力を振るわれていないか」や「飲酒などで、冷静な判断ができない状態でないか」など、弁護士監修のもと作成された10個の項目を確認しあう。
刑法法改正により、人々の性行為との向き合い方に変化が訪れている
「このサービスを考えたきっかけは、令和5年7月13日から、性犯罪に関して、刑法改正により、『不同意性行等罪（刑法177条）』が新設されたことです。この法律の新設により、“後で何か言われたらと心配で次のステップに進めない”“誘っていいのかすごく悩む”など、性行為に至るまでの心理的ハードルが高くなった……という旨の相談をいくつかいただいたんです」
このような相談をしてきたのは、主に恋愛が不得手な人達だったという。不安を赤裸々に語る彼らの想いを新美さんは受け止め、「カップルの健全な関係を育むため」のサービスとして「キロク」を誕生させた。
「同意のない性行為で場合によっては性犯罪に問われることもあります。性的同意を得ないと、パートナーであったとしても常にOKなわけではありません。訴えられるかもしれない、という不安を取り除くために。そして逆に相手に不安にさせているかもしれない、という心配を取り除くために、サービスを活用していただきたい。だからこそ、ホテルに入る直前ではなく、食事をしている会話の中で使用してもらうような形がいいのではと考えています」
たしかに性行為は、その場の雰囲気で流されることもあるだろう。しかし、お互いを大切にするためにも、一度自分の本心に向き合い、冷静に考えるタイミングを持つことが大事だ。お互いの気持ちを確認しあう「同意」をおざなりにしてはいけないのだ。
なぜ今、有料プランを取り入れたのか
「このサービスは一見すると“トラブル時の証拠”、つまりリーガル的な側面のために使うものと見えがちだと思います。たしかに、証拠を残すということは大切なことで、もしものときは活用をしていただきたいと思っています。しかし、私たちが目指しているのは、お互いが安心して関係を深めるために活用するサービスになってほしい。つまり、“ロマンス”的な側面を大切にしています」
現在登録者数は1万4000人を超え、1日の利用者数はだいたい100人ほど。着々とユーザー数を伸ばしているそうだが、認知度が広まるとともに、様々な声が集まってくるという。
「中でも特に多かったのが、男性のユーザーさまからの、同意後の取り消し機能があるため、あとから不同意だったと言われることに対する不安でした。一例だと美人局などがわかりやすいと思います」
昨年12月、有料プランがスタート
この声を踏まえ、搭載することになったのが3月中旬リリース予定の有料プランだ。現在、48時間以内であれば同意を取り消すことが可能になっている。有料プランにすることで、同じアカウント同士で2時間以内にもう一度同意した場合、“同意確定コマンド”が可能になり、同意した位置情報が保存されるという。
「“同意確定コマンド”を利用して、より安心してお互いの関係を深めてもらえればと考えています。位置情報など含む個人的な情報を私たちが集めることはしていないので、安心して使用していただければと思います」
これからも、ユーザーの声を参考にしつつ、さまざまなサービスを提供し続けていきたいという。
ウェブサービスや契約書をもって同意を形に残す人も増えている
「今後は記念日機能の搭載や、出会いの数を提供するサービスにも繋げていきたいと考えています。人と人とが出会い、良好な関係を築くサポートをこれからもし続けたいですね」
「性的同意」を取るというのはどこか気恥ずかしさも感じる。スマートではないという意見もあるだろう。しかし、お互いが心から触れあいたいという思いを言語化することで、関係が深まるという側面もきっとあるのではないだろうか。
得手不得手は関係なく、誰しもが安心して恋愛ができる世の中を築くため、「キロク」の進化は続く。
【アンケートの調査概要】
・調査期間 2024年6月13日～8月7日
・調査機関 性的同意サービス「キロク」運営会社 株式会社ねお巳
・調査対象 10代～60代までの無作為抽出の男女
・有効回答数（218件）
・調査方法 X（旧Twitter）,街頭アンケートによるGoogleフォームへの入力
取材・文／田村菜津季
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