
フェイクニュースや誹謗中傷などのネガティブなムードや度重なる仕様変更など、様々なストレスから「Xからの卒業」を宣言し、別のSNSに引っ越すユーザーが増えている。
その受け皿として注目されているのが、2022年誕生のBlueskyと2024年末誕生のmixi2だ。それぞれどんなものなのか、加えて既存のSNSにも起きている変化とは。
相次ぐ「X卒業」、日本のSNSのこれまでを振り返ると…
度重なる仕様変更による使い勝手の変化や自分が望まないフォロー外の投稿がサイト閲覧時に優先表示されるなど、どんどん変化するX(旧Twitter)にストレスを感じ、投稿を止める宣言をするユーザーが散見される。
アカウントを完全に消してはいないものの、プロフィールに「X卒業」を宣言している人も多い。実際に企業アカウントの離脱も多く、ある上場企業の担当者は「ネガティブな情報の方が広まりやすく、我々の企業サービスとしてはインスタグラムなどに力を入れたほうがいい」という判断になったという。
アカウントは削除していないが、「X卒業」を宣言しているアカウントもちらほら。
SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)の歴史を振り返ってみると、90年代の「Classmates.com」や日本では「この指とまれ!」など、高校や大学など既存の学校組織をネットワーク上に可視化したものに始まった。
2000年代に入り、友達同士という単位でつながれる「Friendstar」、ビジネス向けの「LinkedIn」、当初は大学生向けだった「Facebook」などが誕生。
実名での活用が一般的だったところに、日本では2004年に「mixi」と「GREE」が公開されたタイミングで一気にSNSの利用者層が広がった。
Twitterはアメリカの実業家イーロン・マスク氏により2022年10月に買収されて以降、Twitterはその名を「X」に変え、仕様も大きく変わっている。
表示の形式やアルゴリズムが変わったことでフォロー外の投稿も目に入りやすくなり、望まない投稿を目にすることが増えるなど利用した際に感じるムードが悪くなったとして利用を控えるユーザーが増えていった。
最近もお笑いタレント・EXITの兼近大樹さんやが「X卒業します」と宣言したり、芸能人がXのアカウントを削除することがテレビ番組のコンテンツにもなるなど、ひとつのトレンドのようになってもいる。
TwitterとXの比較表
卒・Xの受け皿としての注目される「Bluesky」、「mixi2」ってどうなの?
では、「卒・X」したユーザーは新たにどんなSNSを使っているのだろうか?
1つの移籍先として注目されているのが、「Bluesky」。2024年2月に正式リリースされたXのように使える短文投稿型のSNSで、実はその創業者はTwitterの共同創業者のジャック・ドーシー氏。
2023年2月のベータ版ではアプリを安全に運営するために招待制だったが、正式リリースのタイミングで自由にアカウントを作成できるようになり、ユーザー数が一気に増加。
同年8月30日にはブラジルでは司法妨害を理由に最高裁判所がXの利用停止を指示し、ブラジル国内ではXが利用できなくなったため、新たにBlueskyを選択するユーザーが急増。
新規ユーザーのうち85%がブラジルからとなり、一気に世界で一番利用している国に躍り出た。その結果、Blueskyは2024年10月下旬時点で約1300万人までユーザー数が増加。この時点での利用者数は、ブラジルに次いで、米国と日本が多いと公表されている。
もう1つが、2024年12月に招待制でスタートしたmixi2だ。
一見すると日本でのSNS利用が一気に広まった2004年に誕生した「mixi」の後継っぽいが、そのスタイルは大きく異なっている。
mixiが当初はパソコンユーザーを主体に「ミク友」と呼ばれる友達とつながり、それ以外のユーザーとはコミュニティを通じてコミュニケーションを取る形式だったのに対し、mixi2は現状はアプリからのアクセスのみで、Xのようなフォローしている人の投稿が読めることに加え、コミュニティを作ってそのグループ内でのやり取りを楽しむことができる。
投稿した文字を動かせる「エモテキ」や投稿へのリアクションを豊富な絵文字から選んで行うことができる。公式発表によるとmixi2の利用者数は2024年12月時点で約143万人だ。
卒・Xの状況について、ITジャーナリストの三上洋氏はマスク氏による買収による大幅な仕様や運営ポリシーの変更の結果としてネガティブな発言とか炎上目的のものが目立つようになってしまったものの、「結局はXは残るし、Xに戻ってくる人はいる」と見ている。
「X(Twitter)に代わるSNSという話は、これまでも何度も話題に上っています。Blueskyとmixi2以外にも、過去にはnostr、Threads、Mastodonなどみんな“ポストツイッター”として注目されて、結局Xの方がユーザー数は多いという状況が続いています。
現状Blueskyはジャック・ドーシーが大元を設計した“古き良きTwitter”様式で、Mastodonのように個々にサーバーを立てる分散型の使い方ができます。
一方のmixi2 は、mixiが昔のTwitterを再現しようとつくっている。ただ、mixiの名前であるが完全な新規。特徴はコミュニティ機能で、これは昔のmixiからあったもの。
同じ趣味や目的、同じアーティストのファン、同じ病気と戦う人などが集まることができる。注目度が高いため、スタートダッシュが比較的にうまくいきました。
ただ炎上が起きやすかったXの問題点を予防しています。まず、18歳未満は利用登録できません。そうしたほうが荒れにくいだろうという配慮でしょうが、一番SNSを活発に使う10代を除外しているため、新しい層が入ってこない。
そのため残念ながら『インターネット老人会』といわれてしまっている。また、選挙運動禁止という規約もある。これも政治運動ができないことで、単純に荒れないようにする対策だと思われます」(三上氏)