
毎年2月から3月にかけてニュースや新聞等で目にする機会が多くなる「春闘」。労働組合が賃金引き上げや労働条件などの改善を要求して、経営側と交渉を行なう全国的な労働運動だ。
長期にわたり実質賃金の低下が指摘される中、今年はどのくらいのベースアップが見込まれるのか。三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩 氏から分析リポートが到着したので、概要をお伝えする。
連合は春闘で昨年と同じ5%以上の賃上げを要求、第1回の回答集計結果は3月14日に公表
労働団体の「連合」は2024年11月28日、2025年の春季労使交渉(春闘)における賃上げ目標を正式決定。基本給を底上げするベースアップ(ベア)は3%以上、定期昇給(定昇)を合わせた賃上げ率は5%以上に設定した。
大企業を含む全体の賃上げ率は2024年の春闘と同じ5%以上としたが、中小企業については6%以上と、より高い水準の目標を掲げた。
2024年は、定昇込みの平均賃上げ率が全体で5.1%と、33年ぶりの高い水準となった一方、大企業と中小企業の賃上げ率の差は前年から拡大した。今回は2024年の平均賃上げ率をどの程度上回るか、また、大企業と中小企業の格差が是正されるかが焦点となる。
連合はこの先、主要労働組合の賃上げ要求の集計結果を3月6日に公表、12日の集中回答日を経て、14日に第1回の回答集計結果を公表する予定だ。
■2025年度に賃金改善を見込む企業は調査開始後初の6割超、帝国データバンク調べ
こうしたなか、帝国データバンクは「2025年度の賃金動向に関する企業の意識調査」を実施。結果を2月20日に公表した(調査期間は1月20日~1月31日、調査対象は全国2万6765社で有効回答企業は1万1014社)。
同社発表によれば、2025年度に正社員の賃金改善(ベアや賞与、一時金の引き上げ)が「ある」と見込む企業の割合は61.9%と、4年連続で増加。2006年の調査開始以降、初めて6割を超えた(図表1)。
規模別では、「大企業」が62.3%、「中小企業」が61.9%、「小規模企業」が51.9%となり、いずれも昨年から賃金改善を見込む企業の割合は上昇した。業界別では「製造」が67.3%と最も高く、次いで「建設」が66.0%、「農・林・水産」が65.3%、「運輸・倉庫」が65.0%となっており、2024年4月から時間外労働の上限規制が始まる運送業界や建設業界などで、賃金改善を実施する企業の割合が昨年より高まっている。
■賃上げ率5.1%を予想、実質賃金も前年比プラスの定着で国内経済と株価を下支え
賃金改善の具体的な内容は、ベアが56.1%、賞与(一時金)が27.4%だった。ベアはこの質問を開始した2007年以降の最高値を4年連続で更新した(図表2)。
また、調査では、総人件費の変動に関する回答を基に給与などの試算結果を公表しており、2025年度の従業員の給与は平均4.50%増、賞与は平均4.44%増、各種手当などを含む福利厚生費も平均4.46%増と、いずれも昨年から改善の見通しが示された。
三井住友DSアセットマネジメントは2025年の平均賃上げ率について、2024年と同じ5.1%を予想しているが、2024年の実質賃金は、物価上昇に賃上げが追い付かず、前年比マイナス0.2%だった(毎月勤労統計調査、速報値)。
弊社では2025年の消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比伸び率は、振れ幅を伴いつつも減速方向を見込んでおり、実質賃金の前年比伸び率は年後半にもプラスが定着。日本経済と日本株を一定程度支える材料になるとみている。
構成/清水眞希