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200万ダウンロード突破!超クローズドなSNS「TapNow」が若者にウケる理由

2025.03.06

「友達の友達」は友達ではない。そうしたことは、SNSに触れていれば骨の髄まで理解できるはずだ。

自分がアップした写真は、できれば友達以外には見られたくない。これはプライバシー保護という側面もあるが、たとえば見ず知らずの人に「いい写真ですね!」とコメントを入力されたら、それに対する返信をしなければならない。これがいわゆる「SNS疲れ」を生み出していることは間違いないだろう。

「全世界を友達にするSNS」が無条件にもてはやされた時代は終わった。今訪れているのは「仲間たちだけのSNS」の時代である。その代表格が『TapNow』だ。

ウィジェット機能を活用する新感覚SNS「TapNow」

スマートフォンには「ウィジェット機能」というものがある。

これは、ホーム画面に様々な情報を表示できる機能で、そうすることによりアプリを開かなくとも特定の情報を閲覧・確認することができる。たとえば、天気予報やカレンダーをウィジェットに組み込むのは最もポピュラーな使い方ではないか。特に天気予報は、それをチェックするために「アプリを開く」という挙動は極力省きたい情報だ。

TapNowは、アップロードされた写真が友達のウィジェットに表示されることを前提にした設計のSNSである。送信者は、その写真を誰のウィジェットに表示させるかを予め選択することができるのだ。

そうした設計が若年層に受け入れられ、実に200万ダウンロード数を記録するまでに至っている。

大手SNSとは意味合いが異なる「タイムライン」

そのようにして送り合った写真を後日振り返る機能を、TapNowでは「タイムライン」と呼んでいる。

大手SNSの「タイムライン」と方向性が異なる点に注意が必要だ。

たとえば、Xのタイムラインというものは自分のフォローしている人がリポストした投稿や、その時々のトレンドに沿った投稿、また自分がよく見る投稿と関連性の高い別の投稿までズラリと表示される。しかし、その中に自分の嫌いな人物の投稿が紛れ込んでいる……ということもよくある。

これはSNS運営者の配慮でそうなっていることもある。つまり、その人の好みと敢えて異なる投稿を加えることで、一方の過激な意見にのめり込まないようにしてあげよう……というややお節介な配慮だ。しかし、SNSを「友達とつながるアプリ」と解釈している人にとってそれは不必要な配慮。

Instsgramのような「友達の友達」のフォローをベルトコンベア式に勧めるような仕組みはTapNowにはなく、また「投稿主Aさんの友達Bさんが自分の友達でなければ、Bさんのコメントが表示されない(知らない人のコメントが表示されない)」仕組みのため、そこに気まずさが発生しづらいという。

「クローズドなSNS」の着想に至った経緯

これらをより平たく言えば、TapNowは大手SNSよりもクローズドな空間での交流を想定しているということだ。

なぜ、このようなSNSを着想するに至ったのか。開発者のサンゴテクノロジーズは、こう答えている。

従来のSNS (InstagramやX)については非常にオープンな繋がりをするプラットフォームでしたが、ユーザーはよりクローズドなプラットフォームを探していると感じていました。

その理由は、特に若年層においてInstagramやXで平均2~3個のサブアカウントを持っていると言われているからです。

これらオープンなSNSの良さも十分にあるものの、所属しているコミュニティ毎に若干なりとも本人のキャラクターは違うはずです。それらを切り分けていくためにサブアカウントを作成せざるを得なかったのです。

そのため、そういった密な関係性にフォーカスを当てたSNSが求められていると考え開発に至りました。

「コミュニティーの継ぎ目」に対する考え方

なぜ、若者はInstagramで複数のアカウントを作成するのか。一言で言えば、「一人の人間が内包するキャラは一つではない」からだ。

コミュニティーに応じてキャラを切り替えるのが人間である。これは何も若者だけの現象ではない。中高年ですら、仕事の時の自分と趣味に打ち込む時の自分を明確に区別しているではないか。「交流の範囲を限定する」というTapNowの仕組みは、自分がそれぞれ使い分けているキャラクター性を守るためには大事な条件だ。

現代のZ世代後半、そしてα世代は上の世代よりも「コミュニティーの継ぎ目」に対してセンシティブに捉えているのかもしれない。

「中高年ですら、仕事の時の自分と趣味に打ち込む時の自分を明確に区別しているではないか」と上述したが、しかし高度経済成長期やバブル期を知っている人は「男は常に仕事人間」という感覚を覚えているはずだ。まずは会社員としての自分が存在し、趣味やプライベートはあくまでも「会社員としての自分」という土台の上にある。したがって、日曜日の午前中に職場から電話がかかってきたとしてもそれに応対しなければならない。「24時間働けますか?」の世界である。

現代の若者は、それが労働搾取以外の何ものでもないことをよく知っている。職場のコミュニティーと趣味のコミュニティーは、その重さで言えば全く等しい。だからこそ、異なるコミュニティーの混同は絶対にしない。

そうした価値観に合致するSNSが登場し、また注目を浴びるのは極めて自然な流れと言えるかもしれない。

【参考】
TapNowが「Google Play ベスト オブ 2024」にて「隠れた名作部門」の大賞を受賞

文/澤田真一

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