
見た目が悪いトマトや白菜、規格よりも大きく育ったり、まっすぐ育たなかったり。野菜は自然のもの、すべてを機械のように同じ形・色・サイズで揃えることは不可能なのだ。規格に合わない野菜は現状、安い値付けで販売されるか、廃棄にまわされることがほとんど。しかし、まるで腐っているような見た目だが、通常のフルーツトマトよりも高値で取り引きされる『闇落ちトマト』のような人気商品も存在する。
情報とネーミングの工夫で消費者の意識を変える
「これは〝尻腐れ〟と呼ばれる現象ですが、実は正規品よりも甘みが強い。味はとてもいいのに見た目でバイヤーに拒否されていました」と話す曽我農園の曽我新一さん。少し怖い顔のトマトは、素質は凄いのに闇落ちした映画『スター・ウォーズ』のアナキン・スカイウォーカーを想起させるという発想で命名。Xで発信した際は最大で25万「いいね」がつき、その後は新聞や雑誌など各メディアにも紹介されるように。まさにネーミングからバズった好事例だ。
多様な色に変化するパプリカをカメレオンと名付けるなどオイシックス・ラ・大地のネーミングもユニーク。「ネットで販売するので創業当初からネーミングには気遣ってきました。規格外品は親しみを持てる名前と、なぜこういう姿になったのか、味は?など、〝ならでは〟の魅力を伝えるようにしています」(オイシックス・ラ・大地 広報室 有賀佳奈さん)
JA共済連では、おいしさゆえに違和感のある姿になった野菜を〝レア物〟とし、宝物のように探してみようというプロジェクトを今冬に開始した。白菜の汚れに見える黒点は栄養素であるポリフェノール、割れた人参は鮮度と瑞々しさの証など、ポジティブな情報ととがったビジュアルでHPを作成。「フードロスの見方を変え、身近なものとして日常の中で考えるきっかけとしてもらいたい」(JA共済連 和泉崇之さん)
廃棄からブランド野菜へ、情報とネーミングの工夫で消費者の意識を変える取り組みに今後も注目したい。
若い世代にも響くネーミングセンス
曽我農園
トマトとアスパラガスをメインとした農園。雪深い新潟の地で、寒さ深まる冬においしさを増すフルーツトマト『越冬トマト』を栽培している。写真左上のようにSNSには「ちいかわに似たトマト」など、「いいね」したくなるユニークな野菜を日々アップしている。
見た目より味!という食通が殺到する高級トマト「闇落ちトマト」
糖度を上げるために水を減らして栽培した『越冬トマト』の一部に起こる尻腐れという現象。非常に甘いため正規品より価格は高額。
チンアナゴみたいなかわいいアスパラガス「チンパラガス」
曲がったアスパラガスがチンアナゴに似ていたことからネーミングし、Xや直売所などで人気を博した。B級品になりがちな曲がり野菜だが、正規品と同価格で販売。
出合えたらラッキーなレア野菜
JA共済連『隠レア野菜プロジェクト』
食品ロス問題を減らす取り組みの一環として始動したプロジェクト。傷に見える、汚れに見えるなど、売り場に出せるレベルの野菜ながらも、見た目を理由に手に取られづらい青果の隠れた魅力を発信。さらに生産者の想いや日々の努力をも伝えている。
黒い点々はレアな幸運のほくろ。栄養たっぷり!「隠レア白菜」
農家の「もったいない」をなくす
オイシックス・ラ・大地『おたすけOisix』
猛暑や雹害など気候変動で急増する規格外品などを、お得な価格で販売。全国4000軒の生産者ネットワークからつかむ「もったいない」情報を受け、親しみやすいネーミングと納得できる情報をつけて消費者に発信する、農家にも家計にも優しいサービスだ。
長ねぎの青い部分を集めて販売「ねぎっぽ」
どんな色かは届いてからのお楽しみ「カメレオンパプリカ」
取材・文/嶺月香里 編集/寺田剛治