
2019年11月にトヨタは「スープラ」の3Lモデルの一部を改良。さらに、特別仕様の「スープラ A90 ファイナルエディション」をリリースしました。「スープラ」は2019年に17年ぶりに復活しましたが、惜しまれつつも生産終了となります。そこで、生産終了の理由を確認。歴代スープラを振り返ってみました。
目次
「スープラ」は1978年に初代(日本での車名は「セリカXX」)が誕生してから、直列6気筒エンジンを搭載したトヨタのFRスポーツ車として人気を集めてきました。
4代目となるスープラ(国内では2代目)が2002年7月に生産を終了してからその名は久しく途絶えていました。
「スープラ RZ」(A80)
しかし、2019年5月17日、17年ぶりに復活。モータースポーツでもSUPER GTなどを中心に活躍してきました。
そして、2024年11月28日にトヨタは、スープラの3Lモデルの一部を改良。さらに、特別仕様の「スープラ A90 ファイナルエディション」をリリースしました。
特別仕様車の名前から想像できるでしょうが、トヨタは現行スープラの生産終了を決定しています。
直列6気筒エンジンでFR、しかも6MT車がラインアップする、そんな貴重なスポーツカーがなぜ生産終了するのでしょうか? また、名車の歴史はどのようなものだったのでしょうか?
A90スープラ生産終了はなぜ? その理由は
スープラが生産終了となった背景には、国際情勢の変化や環境問題など複雑な事情があります。
A90スープラは、トヨタが2013年1月にドイツ・BMW社と包括提携を結び、その初の製品でした。オーストリアのマグナ・シュタイヤー社グラーツ工場で生産し、海路で運ばれた後、トヨタ自動車元町工場を経由して、日本中のユーザーに届ける形。つまり、逆輸入車ということです。
スープラが誕生した2019年ごろの為替相場は、1ユーロが120円前後のレートでしたが、2025年2月末は156円前後。一時は170円を超える時もありましたので、その頃に比べれば円高になりましたが、それでも、単純に3割ものコストアップになっているのです。
2019年5月17日の発売当初のメーカー希望小売価格は、SZというエントリーグレードが消費税込みで490万円でした。一方、2025年2月末時点での価格は499万5000円です。
為替相場どおりであれば、2019年の490万円は、2025年では3割アップの637万円が妥当になります。
上位のRZグレードは、2019年のメーカー希望小売価格が690万円、対して2025年2月末は731万3000円です。
発売当時の「スープラ RZ」
2019年当時の価格690万円の3割アップと想定すると、897万円が妥当です。つまり、スープラの為替変動による価格上昇コストをトヨタが負担しているわけです。
その企業努力には頭が下がる思いですが、RZでいうなら1台あたり165万7000円相当の負担は……正直、販売継続に限界を感じてもやむを得ないのではないでしょうか。
むしろ、今までトヨタはスープラの価格維持を良くぞ続けてくれた、そんな思いがします。
生産終了はいつ
2024年11月28日のリリースで、トヨタは発売予定時期を、3Lモデルの一部改良モデル2025年春以降順次発売予定、スープラ A90 ファイナルエディションを欧州は2025年春、日本を検討中としています。
つまり、生産終了時期については明確なコメントを避けています。
オーストリアのマグナ・シュタイヤー社グラーツ工場では、スープラ以外での生産もあります。そのため、生産は同車と調整しつつ、相応の数ができたなら随時、という形になるでしょう。
新型は出るの?
スープラの後継モデルは今後、生産されないのでしょうか?
ご存じの通り、現行スープラはマスタードライバーのモリゾウこと、トヨタ会長の豊田章男氏の強い想いで17年ぶりの復活を果たしています。
豊田章男氏はスープラ復活の際に、このようにコメントしています。
「スープラ復活を待ち望んでいたのは世界中の多くのファンだけでなく、私も『スープラを復活させたい』という想いを密かに持ち続けていました。新型GRスープラは、ニュルブルクリンクで鍛えられ、生まれたクルマです。走る楽しさ以上の経験を提供できるクルマになったと、自信を持ってお伝えします」
また、「自分にとって『特別な旧友』のような存在です」(豊田会長)ともコメントしています。
つまり、トヨタは簡単にはスープラを見捨てない、それだけ重要な存在だと言えそうです。
そして、トヨタ広報は「『スープラ A90 ファイナルエディション』を集大成として、現行スープラの生産は終了を予定していますが、今後もモータースポーツ活動を通じてスープラを鍛え続けていきます」とも伝えてくれています。
A90は生産終了しますが、近い将来、スープラの新型が登場する……その復活は十分期待できるのではないでしょうか。
スープラの歴代モデルはどうだった?
それではここから、名車スープラの歴代モデルを確認していきましょう。スープラ前史といえる、セリカについても簡単にご紹介します。
1978年に初代スープラ、国内名「セリカXX」誕生
1970年12月1日に、スープラの祖ともいえる、日本初の〝スペシャルティカー〟「セリカ」が誕生しました。
そして、1973年4月6日には、ファストバックシルエットで3ドアの2+2クーペである、「セリカ リフトバック」がラインアップに加わりました。
1977年8月22日には、セリカ、セリカ リフトバックともにフルモデルチェンジ。スタイリングはトヨタの北米デザインスタジオCALTY社が行っています。
「セリカ」
「セリカ リフトバック」
当時北米では、〝Zカー〟こと「フェアレディZ」が大成功を収めており、その対抗馬としてのグランドツアラーの必要性が高まっていました。
そこで、トヨタはセリカ リフトバックをベースにホイールベースと全長を130mm/270mmそれぞれ延長し、直列6気筒エンジンを搭載した「スープラ」(国内向けは「セリカXX(ダブルエックス)」)を登場させました。セリカXXの発売日は1978年4月13日です。
ロングノーズのプロポーションを持ち、Tバーをあしらったフロントグリルや横長で立体感のあるリアコンビネーションランプが特徴。
高級スペシャルティカーにふさわしく、最高級「G」グレードには、英国コノリー製レザーシートをオプションに設定していました。
エンジンは、1988cc直列6気筒OHCと、2563cc直列6気筒OHCの2タイプを用意。最高出力はそれぞれ、125PS/6000rpm、140PS/5400rpmを発揮。1980年8月のマイナーチェンジでは、2.6Lエンジンは2.8Lに換装されています。
ボディサイズは全長4600×全幅1650×全長1310mm、ホイールベースは2630mm。重量は2600Gで、1180kgでした。
1981年に2代目スープラ誕生
1981年7月に発売した2代目セリカXX(北米名スープラ)は、「セリカ リフトバック」をベースとして、リトラクタブル式ヘッドライトを持つウェッジシェイプデザインとなりました。
エンジンは、1988cc直列6気筒OHCと、2759cc直列6気筒DOHCの2タイプを用意。最高出力はそれぞれ、125PS/6000rpm、170PS/5600rpmを発揮。1983年夏には5M-GEU型エンジンのパワーアップとM-TEU型SOHCターボの投入、DOHC4バルブの1G-GEU型が追加されました。
ボディサイズは全長4660×全幅1685×全高1315mm、ホイールベースは2615mm。重量は2800GTが1235kgでした。
1986年に国内では初代、グローバルでは3代目となるスープラ(A70)が登場
1986年2月のフルモデルチェンジにより、高性能で高級なスペシャルティカーとしてセリカから独立。国内向けモデルもグローバル向けと同様に車名をスープラとしました。
「スープラ 3000 TWINCAM24 TURBO・3.0GT TURBO」
エンジンは2954cc直列6気筒DOHCターボの7M-GTEU型を初め4種類設定。
2954cc直列6気筒DOHCターボの最高出力は230PS/5600rpm、1988cc直列6気筒DOHCツインターボの最高出力は185PS/6200rpm、1988cc直列6気筒DOHCの最高出力は140PS/6400rpmを発揮しました。
7M-GTEUエンジン
サスペンションは4輪ダブルウィッシュボーン式を採用。同年6月には前席の上部ルーフを着脱可能なエアロトップを追加しています。
「スープラ 2000 TWINCAM24 TWIN TURBO・GT TWIN TURBO」
「スープラ 2000 TWINCAM24 TWIN TURBO・GT TWIN TURBO」
「スープラ 2000 TWINCAM24 TWIN TURBO・GT TWIN TURBO」
1993年に4代目スープラ誕生(A80)
1993年5月24日にフルモデルチェンジし、スープラは4代目(国内向けは2代目)に進化しました。
「スープラ GZ」
2+2ハッチバッククーペボデーは、先代に比べて全長とホイールベースを短くし、トレッドを拡大しました。ボディサイズは全長4520×全幅1810×全高1275mm、ホイールベースが2550mmとなります。
「スープラ RZ」
エンジンは2997cc直列6気筒DOHC24バルブ、最高出力225PS/6000rpmの2JZ-GE(搭載モデル:SZ、SZエアロトップ仕様車)と、ツインターボ版になる最高出力280PS/5600rpmの2JZ-GTE(搭載モデル:RZ、GZ、GZエアロトップ仕様車)の2種が用意されました。
2JZ-GTEエンジン
RZにはドイツ・ゲトラーグ社製の6速MTを採用しています。
「スープラ RZ」
「スープラ RZ」
さらに、新設計の4輪ダブルウィッシュボーンサスペンション、ターボ車にはフロント225/50ZR16、リア245/50ZR16の前後異サイズタイヤ、大容量のブレーキなどを設定しました。
「スープラ SZ エアロトップ」
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※当記事に掲載している価格などのデータは2025年2月時点での記事公開時のものです。
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文/中馬幹弘