
太陽の表面で起きる爆発「太陽フレア」。2025年は太陽の活動が最も活発化する極大期にあたり、太陽フレアが頻発し、通信障害が起きる恐れがある。最悪の場合は、GPSによる位置情報がずれて、交通事故が発生したり、広範囲で停電が起きたりする可能性があるという。そもそも太陽フレアとはどういう現象なのか、そして太陽フレアに備えてどんな取り組みが行われているのかをまとめる。
日本各地でオーロラが出現。太陽フレアとオーロラのかかわり
冒頭でも述べた通り、太陽フレアとは一言でいうと太陽の表面で起きる爆発である。爆発に伴い、レントゲン検査などに利用されている「X線」などの放射線や電気を帯びたガス「プラズマ」を宇宙空間に放出する。太陽が持っている磁気エネルギーが解放されることで発生する現象だ。
太陽は約11年周期で活動が活発な時期と静穏な時期を繰り返していて、2025年7月に活動の極大期を迎える。2024年は、最も激しいXクラスに分類される太陽フレアの発生回数が前年の記録を大幅に上回る50回以上となった。
太陽の活動が活発化していることが実感できる現象のひとつにオーロラがある。というのも、オーロラは太陽からやってくるプラズマが地球の磁気圏に入り、大気中の酸素や窒素と衝突して発光する現象だからだ。プラズマは太陽の活動が盛んになると多く放出され、それに伴いオーロラが出現しやすくなる。普段は北欧やカナダなどの高緯度地域でしか見られないオーロラが、太陽活動が活発化し、フレアが頻発した2024年は日本各地で観測されて話題になった。2025年はオーロラ鑑賞の「当たり年」と言われ、国内にいながら美しい景色が見られるのではないかと期待されている一方、太陽フレアが引き起こす障害にも備えていかなければならない。
停電や航空機の運休も。太陽フレアの「最悪シナリオ」とは?
太陽から放出されるX線やプラズマは、地球の大気や磁場の効果により地表までは届かず、通常は人体への直接的な影響はないと考えられている。しかし、地球を周回する人工衛星は異常をきたし、GPSや通信などに影響が出る恐れがある。実際に、カナダ・ケベック州では1989年に巨大な太陽フレアが原因でおよそ9時間にわたって停電が起こり、約600万人に影響が出た。2003年に観測史上最大の太陽フレアが発生した際には、人工衛星に障害が起き、なかには搭載されていた装置やセンサが故障して復旧しなかったものもある。
電気の使用量が増え、人工衛星の利活用が進んだ現代においては、暮らしやビジネスにもより大きな被害が及ぶと懸念される。総務省は太陽フレアによる被害の「最悪シナリオ」を2022年に公開した。これは100年に1回の頻度で発生する規模の太陽フレアの発生を想定して作成されたもの。このシナリオによると、2週間にわたって断続的に停電が各地で発生する、GPSに最大で数十メートルの誤差が生じて衝突事故が起きる、消防や救急への緊急通報がつながりにくくなる、全世界的に航空機の運航見合わせや減便が多発するなど、社会インフラがマヒする可能性があると指摘されている。
こうした太陽フレアによる混乱に備えて、どんな対策を打つことができるのだろうか。まず注目したいのが「宇宙天気予報」だ。太陽フレアをはじめ、太陽の活動によって変わる「宇宙天気」の現況把握や予測を宇宙天気予報と呼んでいる。総務省所管の情報通信研究機構(NICT)は、宇宙天気予報を行い、情報発信を続けてきた。2017年には、機械学習とビッグデータを活用した太陽フレア予測モデルの開発に成功した。この手法により、従来の人手による予測では約50%程度だった精度を80%程度へと向上させたという。こうした宇宙天気予報の情報提供に加えて、太陽フレアの影響を示す新たな警報基準の導入を目指す動きもある。
2月5日には、内閣府宇宙開発戦略推進事務局が太陽フレアやサイバー攻撃によって、衛星などの宇宙システムに異常が発生した事態を想定した訓練を行い、宇宙関連企業やインフラ関係事業者などが参加した。この訓練は2021年から毎年行われ、今回で5回目の開催だったという。太陽活動のピーク到来に備えて、宇宙天気予報に注意しつつ、総務省が公表しているシナリオを参考に起こり得る被害、特に大規模な停電や通信障害への対策は一般企業においても講じていく必要がある。
取材・文/井上榛香