
がん患者が症状を週1回電子報告するシステムで、QOLが向上し救急外来受診も減少。米研究で進行がん患者1191人を調査、身体機能低下やQOL低下の遅延、救急外来受診回数減少を確認。患者の満足度も高く、症状管理の新手法として期待される。
症状を電子的に報告するシステムががん患者の症状管理やQOLを改善
電子機器を通じて週に1回、自分の症状をケアチームに知らせた進行がんの患者では、通常ケアを受けた患者に比べて生存期間の延長にはつながらなかったものの、身体機能の低下、症状の進行、健康関連QOLの低下、救急外来の初回受診までの期間が有意に遅延し、救急外来の受診回数も減少したとする研究結果が報告された。米ノースカロライナ大学(UNC)医学部教授で腫瘍内科学部長のEthan Basch氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に2月7日掲載された。
今回の研究で検討された患者報告アウトカム(patient-reported outcome;PRO)による症状のモニタリングは、電子的に提供される分かりやすいチェックリストを用いて患者が痛みや運動能力などの日常的な問題の程度を評価するもので、患者はコンピューターやスマートフォンを使って自宅にいながらケアチームにフィードバックを送ることができる。
しかし、こうしたテクノロジーは本当に患者の役に立っているのだろうか。それを明らかにするためにBasch氏らは、米国の26州、52カ所のがん治療施設を、PROによる症状モニタリングを実施する群(PRO実施群)と通常のケアを行う群(通常ケア群)に割り付ける、クラスターランダム化比較試験を実施した。試験には、転移性がん患者が計1,191人登録された(PRO実施群593人、通常ケア群598人)。これらの患者は、年齢中央値が63歳で女性が58.3%、白人が79.5%を占め、26.6%は地方に住んでいた。また、16.9%にはインターネットを利用した経験が全くなかった。
その結果、全生存期間については、PRO実施群と通常ケア群の間で統計学的に有意な差は認められなかったが、PROは患者の健康関連QOLを向上させる可能性が示唆された。以下は、研究結果の一部だ。
・身体機能の低下:身体機能が低下し始めるまでの期間の中央値は、PRO実施群で12.6カ月だったのに対し通常ケア群では8.5カ月だった(ハザード比0.73、P=0.002)。
・健康関連QOL:健康関連QOLが維持された期間の中央値はPRO実施群で15.6カ月、通常ケア群で12.2カ月であり、PRO使用により健康関連QOLの悪化リスクが28%有意に低下した(同0.72、P=0.001)。
・救急外来の受診回数:試験登録から12カ月後までに救急外来を受診した患者の割合は、PRO実施群で48.7%、通常ケア群で54.8%であり、PRO実施群の方が6.1%少なかった。また、1人当たりの受診回数も、PRO実施群で平均1.02回、通常ケア群で平均1.30回と、前者の方が有意に少なかった。さらに、初回の救急外来受診までの期間も、PRO実施群では通常ケア群に比べて有意に延長された(同0.84、P=0.03)。
・満足度:PRO実施群では、自分のケアをコントロールできていると感じた人が84%、PROによってケアチームとのコミュニケーションが改善したと答えた患者の割合も77%に上った。また、ほとんどの患者(91.4%)が他の患者にもPROを勧めたいとの考えを示した。
Basch氏は、この研究で使用されたPROシステムは、事務処理に追われることの多い医師には依存しないものであったと説明している。「PROは、症状の管理やケアのコーディネートを担うことの多い看護師や患者ナビゲーターにより管理されるシステムで、医師が介在することはほぼない。また、技術的に見ても患者にとって極めて使いやすいものであることが証明された」と同氏はUNCのニュースリリースの中で述べている。
Basch氏は、「PROシステムは、さまざまながん種で優れた成果を示した。今回の研究は進行がん患者を対象としたものであったが、将来的には早期がん患者を対象とした臨床試験が行われることが望まれる」と話している。(HealthDay News 2025年2月12日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.nature.com/articles/s41591-025-03507-y
構成/DIME編集部
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