
ヴィーガンは、単なる食の選択ではなく、倫理観や環境意識を反映したライフスタイルだ。世界的にはヴィーガン人口が増加しており、食の多様性が広がりつつある。
目次
近年、健康志向や環境意識の高まりとともに、「ヴィーガン(ビーガン)」というライフスタイルが注目されている。動物由来の食品を摂取しないヴィーガンの食生活は、単なる食の選択ではなく、倫理的・環境的な観点を含んだもの。
しかし、「ヴィーガンとは何か?」「ベジタリアンと何が違うのか?」と疑問に思う人も多いだろう。
本記事では、ヴィーガンの基本的な定義から、食生活、環境への影響、人口動向まで、幅広い視点で詳しく解説する。
ヴィーガンとは?基本的な定義
ヴィーガン(Vegan)とは、動物由来の食品や製品を一切摂取・使用しないライフスタイルを指す。これは単なる食の選択ではなく、動物愛護や環境保護といった倫理的な考え方に基づいている。
■ヴィーガンの食生活とは?
ヴィーガンは、動物性の食品を完全に避ける。そのため、肉類や魚介類はもちろん、卵や乳製品、ハチミツなども口にしない。代わりに、以下のような食品を中心に食生活を送る。
- 野菜・果物:ビタミンやミネラルを豊富に含み、食物繊維も摂取できる
- 穀類(米、麦、キヌアなど):エネルギー源として重要な役割を果たす
- 豆類(大豆、レンズ豆、ひよこ豆など):たんぱく質の補給源として欠かせない
- ナッツ類(アーモンド、カシューナッツなど):健康的な脂質やミネラルを含む
- 植物由来の加工食品(豆腐、大豆ミート、植物性ミルク):代替食品として活用される
最近では、技術の進歩によって植物性食品の選択肢が増えている。例えば、大豆ミートは従来のものよりも食感が向上し、まるで本物の肉のような食べ応えを楽しめる。
さらに、アーモンドミルクやオーツミルクといった植物性ミルクも普及し、乳製品を避けるヴィーガンでもコーヒーやシリアルを楽しむことができるようになった。
■ヴィーガンの歴史
ヴィーガンの歴史は、1944年にまでさかのぼる。イギリスでドナルド・ワトソン氏が「ヴィーガン協会(The Vegan Society)」を設立したのがきっかけで、その際に「ヴィーガン」と命名したといわれている。
「ヴィーガン(Vegan)」という言葉の由来は、「Vegetarian(ベジタリアン)」の頭3文字「Veg」と末尾の「an」を組み合わせた造語だ。これは、「従来のベジタリアン思想の終わりと新たな始まり(beginning and end)」を象徴しているとされる。
その後、食事だけでなく、衣類や化粧品なども含め、動物の権利を尊重する包括的なライフスタイルへと発展していった。
■ヴィーガンの目的と理念
ヴィーガンが動物由来の食品を避けるのには、大きく分けて3つの理由がある。
- 動物愛護:畜産業における動物の苦しみを減らす
- 環境保護:畜産や漁業が環境に与える負荷を軽減する
- 健康維持:飽和脂肪酸やコレステロールの摂取を抑えることで、生活習慣病のリスクを減らす
特に、環境負荷の軽減という点においてヴィーガンの食生活が重要視されるようになっている。畜産業は、大量の水や穀物を消費するだけでなく、温室効果ガスの排出量も多い。
例えば、牛肉1kgを生産するためには約15,000Lもの水が必要とされ、これは大豆の生産に比べて数十倍の水を要する。そのため、ヴィーガンの食生活を選択することで、地球環境への負荷を減らすことができる。
ヴィーガンとベジタリアンの違い
「ヴィーガンとベジタリアンはどう違うのか?」と疑問に思う人も多い。どちらも動物性食品を避けるが、その範囲には明確な違いがある。
■ヴィーガンとベジタリアンの分類
ベジタリアンは、動物性食品の摂取範囲によっていくつかの種類に分かれる。
- ラクト・ベジタリアン:肉や魚は食べないが、乳製品は摂取する
- オボ・ベジタリアン:肉や魚は食べないが、卵は摂取する
- ラクト・オボ・ベジタリアン:肉や魚を避けるが、乳製品と卵は摂取する
- ペスコ・ベジタリアン:肉は食べないが、魚介類は摂取する
- フレキシタリアン:基本的には植物性食品中心だが、動物性食品を時折摂取する
- ヴィーガン:動物性食品を完全に避ける
ヴィーガンは、ベジタリアンの中でももっとも厳格な形態であり、食品だけでなく革製品や動物実験を伴う化粧品の使用も避ける点が特徴だ。
ヴィーガンの人口はどれくらい?
日本では、ヴィーガン人口はまだ少数派とされている。しかし、世界的に見ればヴィーガンの割合は増加傾向にある。
■日本におけるヴィーガン人口の推移
2023年の調査によると、日本でヴィーガンの食生活を実践している人の割合は2.4%だった。一方、ベジタリアンは4.5%で、ヴィーガンよりもやや多い。
また、「完全なヴィーガンやベジタリアンではないが、意識的に動物性食品を減らす」というフレキシタリアンの割合は19.9%にのぼる。
参考:【23年1月】日本のベジタリアン・ヴィーガン・フレキシタリアン人口調査
■海外におけるヴィーガンの広がり
欧米では、ヴィーガンの割合が増えている。イギリスやアメリカでは、ヴィーガンレストランやプラントベース食品の市場が拡大しており、スーパーマーケットにもヴィーガン向けの専用コーナーが設けられている。
■ヴィーガンが増えている理由
近年、ヴィーガン人口が増加している背景には、健康志向の高まり、環境問題への意識向上、動物愛護の考え方の普及がある。ヴィーガン食は、コレステロールを抑え、生活習慣病の予防に役立つとされる。
また、畜産業が環境に与える負荷の大きさが指摘される中、持続可能な食生活の選択肢としてヴィーガンが注目されている。さらに、代替食品の進化により、実践しやすくなったことも普及を後押ししている。
ヴィーガンのメリットとデメリット
ヴィーガンのライフスタイルには、健康や環境面でのメリットがある一方で、栄養面の注意点も存在する。
■ヴィーガンのメリット
ヴィーガンの食生活は、健康面や環境面での利点が多い。
- 健康の維持:コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を抑え、生活習慣病のリスクを低減できる
- 環境保護:畜産業が排出する温室効果ガスを削減し、環境負荷を軽減できる
- 倫理的配慮:動物愛護の観点から、動物の苦しみを減らすことができる
■ヴィーガンのデメリットと対策
一方で、ヴィーガンの食生活には栄養不足のリスクもある。特に、ビタミンB12、鉄分、オメガ3脂肪酸の不足に注意が必要だ。
- ビタミンB12:サプリメントや強化食品を活用する
- 鉄分:ほうれん草や豆類を意識的に摂取する
- オメガ3脂肪酸:亜麻仁油やチアシードを取り入れる
また、外食の選択肢が限られることも課題のひとつ。ヴィーガン向けのメニューを提供する飲食店が増えつつあるが、まだ数は少ないため、事前に情報を調べておくことが重要だ。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部