
株主還元を強化する企業の決算資料などに、「DOE」の言葉を使う企業が増えています。「DOE」とは何を意味しているのでしょうか。また、「DOE」を具体的に表明した企業名はどれだけあるのでしょうか。そしてこの「DOE」が高いとどうなのかをわかりやすく説明します。※株価は2025年2月21日時点
まず知っておきたい「DOE」とは
「DOE」とは、英語表記で「Dividend on equity ratio」と表されます。これは「株主資本配当率」のことを意味しています。
企業が株主資本に対してどの程度の配当を支払っているかを示す注目の指標です。
具体的には「配当総額÷純資産」で計算されます。
「配当総額÷純資産」を紐解くと、
(配当総額÷当期利益)×(当期利益÷純資産)=配当性向×ROE
つまり、この「DOE」の高い銘柄は、配当性向、ROE、どちらか、またはどちらもが高い銘柄です。そのため、株主還元に積極的と考えられています。
「DOE」を株主還元として掲げた企業の例
実際に「DOE」を指標として発表している企業を見てみましょう。
まず、「DOE」を掲げて株価が上がった例です。2024年4月25日、松井証券(8628)は株主配分の基本方針として、「配当性向60%以上かつDOEを8%以上とする方針」を発表し、ています。そして、2025年1月29日に発表した資料でも同じく「配当性向60%以上、かつ「DOE」を8%以上」と掲げています。2024年4月の基本方針発表直後、好感視されたのか一時的に5%近く株価が上昇したとニュースにも取り上げられました。
有価証券報告書で「DOE」を表明した企業例はほかにも
他にも、「DOE」を表明している企業はとても多いです。
■キリンホールディングス(2503)(株価2,018円、最低投資額20万1,800円)
「一番搾り」や「淡麗」、「本麒麟」などビール類のシェアが、国内で首位級のメーカー。「生茶」や「午後の紅茶」などの飲料も手がけ、医薬の協和キリンを傘下に持っています。
キリンホールディングスでは2025年2月14日に配当方針の変更を発表し、「DOE」5%以上を目安とし、原則として累進配当にすると決定しています。
■日華化学(4463)(株価1,237円、最低投資額12万3,700円)
界面活性剤を製造販売。繊維化学品やクリーニング用洗剤、美容室向けのヘアケア商品を手がける。
2025年2月14日に剰余金の配当(期末配当)に関するお知らせを発表。ここで、「年間配当において、2~3年内に「DOE」(自己資本配当率)3.0%を目安として拡充し、その後も「DOE」向上を継続して検討」すると書いています。
■インターアクション(7725)(株価1,185円、最低投資額11万8,500円)
精密機器メーカーで、CMOSイメージセンサ検査用光源装置の世界トップメーカーとしても知られているインターアクション。
2025年2月13日に株主還元方針の変更(DOE 指標導入)に関するお知らせを発表し、「DOE」を4%以上にすること、また、「安定的かつ財務状況に応じた配当を実施する」との基本方針を掲げました。
■不二ラテックス(5199)(株価1,765円、最低投資額17万6,500円)
避妊用ゴム製品を手がける大手企業。医療製品も販売しています。
2025年2月6日に、配当方針の変更(「DOE」 指標導入)及び期末配当予想の修正(増配)に関するお知らせを発表。ここで、毎期の配当額は 「連結株主資本配当率(DOE)」2.8%以上を目安にすること、また、「持続的成長に向けた適正な内部留保の充実と資本効率を重視した株主への安定的な利益還元」も行っていくと発表しています。
■CARTA HOLDINGS(3688)(株価1,442円、最低投資額14万4,200円)
メディアプランニング、インターネット関連サービス事業を手がける子会社を統括する電通傘下の企業。
「DOE」に関しては、2025年2月13日に剰余金の配当(増配)及び株主還元方針の変更に関するお知らせを発表。「配当額に関しましては、「DOE」5%を目安に決定し、長期安定かつ継続増配としていくこと」を目指すと明記しています。
■ナブテスコ(6268)(株価2,480円、最低投資額24万8,000円)
ナブテスコは機械メーカーで、自動ドアでは世界首位、鉄道用ブレーキや産業ロボット用の精密減速機も手がける企業です。
2025年2月12日に新中期経営計画策定に関するお知らせで「DOE」に言及。2025年度から2027年度の中期経営計画の目標として、「「DOE」 3.5%を目安とした安定配当および機動的な自社株買い」をすすめると決めています。
まずは保有株からキーワード「DOE」に注目してみよう
すべての資料を読みこむのは難しいものです。そこで、自分の保有株から調べてみてはどうでしょうか。企業によっては「DOE」について何パーセント以上を目標とするなど決めている場合もあります。
「DOE」は日本取引所の「適時開示情報閲覧サービス」からも調べられます。
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こちらでは検索期間が1ヶ月となっていますが、決算後に企業がどのような発表をしたのかが簡単に検索できます。
資料を読み込み「DOE」のキーワードを見つけてみるところから始めてみるだけでも、「企業が株主還元に積極的な姿勢がある」ことを理解でき、一歩踏み込んだ投資ができそうです。
文/谷口久美子