
■連載/阿部純子のトレンド探検隊
ワークマンは、「#ワークマン女子」店舗を全面改装、従来の#ワークマン女子よりもメンズ製品の取扱いを増やし、客層を男性・女性1:1にする、新生「Workman Colors」を開始した。
Colorsでは、メンズのベーシック製品、トレンド感を取り入れたレディス製品、さらにキッズ製品を加えてファミリー層に向けて訴求する。
3回目の店名変更の背景にあるワークマンの戦略とは
1980年に創業したワークマンは作業服を中心としてスタートし、80~90年代は980円のニッカポッカや作業パンツが大ヒット。下記画像で女性の着ている作業服は、現在も年間50万着売れているベストセラーだ。
38年間作業服を中心に展開してきたが、2018年にシンプルな作業服にスタイリッシュな流れが加わり、アウトドアやアクティブも充実させた新業態の「WORKMAN Plus」が誕生。路面店だけでなく、ショッピングセンターに出店し、一般向けの衣料も扱うようになった。
そして大きな話題となったのが2020年に誕生した「#ワークマン女子」。機能性を追求したカジュアル衣料で、シンプルで着やすく、プチプラでおしゃれも楽しめると女性客の獲得に成功した。
3月7日には、#ワークマン女子第1号店であったコレットマーレ桜木町店を「Workman Colorsコレットマーレ桜木町店」に全面改装して、首都圏の旗艦店としてオープンする。
「Workman Colors」(以下、Colors)は、2023年に実験店として開業した「Workman Colorsイグジットメルサ銀座店」があるが、銀座店は新生Colorsとは異なるもので、新生Colorsでは女性物のトレンド製品を強化、男性用ベーシック衣料の「快適普段着」を新規投入して男性客も増やす。銀座店も新生Colors店に改装し、今後すべての#ワークマン女子はColorsへ変わる。
株式会社ワークマン 専務取締役 土屋哲雄氏は、新たなブランドWorkman Colorsを立ち上げた背景についてこう語った。
「今回で店名の変更が3回目になりますが、Colorsを発表して『#ワークマン女子撤退か?』という報道もありましたが、アパレルとして進化するため、地方、男性客、路面店を重視するという3つの目的でColorsを立ち上げました。
アパレルは都会、女性志向で、ショッピングセンターに出店しないと集客できない壁がありました。店名を3回進化させたのはこの壁を克服するためで、製品もさらに進化していきます。これはワークマンの社是である『声のする方に進化する』に根差していて、お客様の声に応えて進化しているため、決まった方針を持たないのです。
#ワークマン女子の時は、店舗を作ってからどんな製品を売るか後で考えていました。当初は男女共用のアウトドア製品を女性のマネキンに着せて販売ところ、女性客にブームになり女性専用製品を出した経緯があり、レディス物はトレンド性を加えてさらに進化しています。
当社の開発者は経営者の前で御前会議をやって、製品を見せて売れるか、売れないかと意見を聞くことなどしません。“天の声”を聞いた担当者が自分の作りたいものを作る。しかしこれはセーフティーネットがあるからできることです。
2年ほどでダメだったらやめるし、店内POPが1000点もありますから、店の前面に出してPOPで訴求すれば大体売れてしまいます。セーフティーネットがあるので冒険ができる仮説検証経営だと思っていまして、小さな成功事例を拡大することを重視しています。
ただ、今までの製品でやめた例はなく、絶対だめだと思ったものでもうまくいっています。例えば若手の女性社員が天の声を聞いて、女性肌着を作ると言い出した際、私としては競合が強すぎてやめた方がいいと思いましたが、社是に反するので言えない。ぐっと飲み込んでやってみたら、1年目で60万着、去年の秋冬で195万着、今度の春夏は300万着作るほどになりました。
#ワークマン女子は試行錯誤を繰り返しましたが、レディスはベーシックで成功しました。しかし問題は男性客です。#ワークマン女子の開店の時は問い合わせ電話が殺到しますが、そのほとんどが『男性ものを売っていますか?』というもの。非常に申し訳なく思っていましたが、#ワークマン女子の名が浸透するまでは続けてきたというのが現状でした。
製品についても、メンズはアクティブウェア、アウトドアスポーツといった派手な製品が多く、シンプルなベーシック志向のレディスとテイストがマッチしてなかった。そこで今度は男性ベーシックに参入しようと、Colorsというブランドを立ち上げて、男性用ベーシック衣料『快適普段着』を投入することにしました。
Colorsを機にキッズも本格的に参入を考えています。#ワークマン女子では全体売上の2~3%でしたが、今年で5%、来年は10%を目指します」(土屋専務)
2025年2月20日の時点で、新店1店、改装3店のColors店舗が誕生しており、3月の桜木町の首都圏旗艦店、4月には東北と関西の新店旗艦店が誕生し、新規出店は2032年までに400店舗を目指す。
改装後の桜木町店は女性物トレンド品の強化と男性快適普段着への参入で、25%の売上アップを見込んでいる。