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「東京」と「東京から90分」の2拠点生活をしてみてわかったこと

2025.03.01

「気づいたんだけど、平日に九州、休日に東京っていう二拠点生活、意外に悪くなかったんだよね、やってみない?」

きっかけは夫からの一言。仕事の関係で2年半ほど自然豊かな九州のまちに居を構えていた夫は、月に2~3回地方と東京を行き来する生活をしていた。そんな生活の終盤を迎えた2023年、二拠点生活を夫婦でやってみないかと提案があった。

具体的には、夫が当時暮らしていたワンルームマンションを残した形で地方に中古住宅を購入するというもの。私は都内で広報PRを生業としており、随分と生活に慣れ親しんでいたタイミングだったが、アイデアを聞いた瞬間「面白そう!」と心が躍った。30代後半ですっかり確立した生活環境に、突然現れた「二拠点生活」。

本記事では、二拠点生活の検討から、実際に住んでみて気付いたことまでを紹介していくので参考にしてもらいたい。

「トカイナカ」で気付く、二拠点目に求めていた要素

こうして始まった二拠点目探し。当初、東京とは対極の場所を求めて、東峰村、佐久市、足利市や那須塩原市など幅広く調査した結果、やや迷走気味に。

そんなある日、旅行で訪れた熊本県阿蘇の一棟貸しの宿に滞在した際、その宿から見渡せる美しい緑と地場の木材でリノベーションされた内装に、たちまち心を奪われた。これこそが自分達の求める環境だ!と直感した。

しかし現実的に考えなければならないのは、私たち夫婦はリモートワークと出社のハイブリッド勤務をしており、さらにオフィス回帰の流れが強まっていたこと。そこで、無理なく都内にも通える”トカイナカ”に候補地を絞ることにした。結果、成田空港に近い千葉県佐倉市の緑豊かな住宅街にある中古戸建を購入。都内から90分というトカイナカを選んだことで、がっつりではなく「プチ二拠点生活」を開始することに。

そうはいっても電車は1時間に3本ほど。正直、便利な場所とは言えない。でも家を内見したとき、鳥の鳴き声や朝日の木漏れ日に包まれながら、家の前に落ちる葉や枝を日々掃除している光景が自然と浮かんできた。

何よりもこの「土地に惚れた」という感覚が、二拠点目のまち選びの決め手になった。

都内で暮らしていた分、二拠点目には「自然と共生する人間らしい暮らし」を求めていたのだ、と気付くことができたのだった。

緑豊かな庭に一目惚れして購入を即決

「2つの家で暮らす」ルーティーンの組み立て方

二拠点生活というと、週末を別荘で過ごすイメージをする方も多いかもしれない。これまでは、私もそう思っていた。蓋を開けてみれば、週の大半を佐倉で過ごし、東京での滞在は翌日朝が早い日や仕事が遅くなった日など、週1~2回程度に。自然に囲まれた穏やかな暮らしが心地よかったようだ。

とはいえ移動は疲れるもの。そこで出社の前日には、佐倉で夕食とお風呂を済ませ→東京の自宅に向かう、というルーティーンが編み出された。電車も駅も空いており遅延も少なく、1時間ほど読書をしながら過ごす時間はとても快適。

さらに、仕事内容によっても拠点を使い分けている。対面で打ち合わせが続くときは、仕事モードを維持できるよう職場に近い東京の家に滞在。反対に落ち着いて作業をしたり考えをまとめたい時は、静かな佐倉で仕事、という風に。

これはリモートワークと出社がある程度コントロールできる職種ゆえ、という側面もあるとは思う。

夫婦それぞれ仕事部屋を設けている

「二拠点生活」費用感のリアルと衣食バランス

この二拠点生活について、一番聞かれることといえば「住まいの費用」と「衣食の管理方法」の2つ。

共働きの夫婦が東京で家を購入する場合、今だと中古マンションを探す人が多いのではないだろうか。

「【2024年12月 中古マンション 首都圏版】LIFULL HOME’Sマーケットレポート」(LIFULL HOME’S PRESS調べ 2025年1月掲載)によると、2024年12月の首都圏ファミリー向き中古マンションの掲載物件平均価格は東京23区内で7,624万円。

頭金なしの35年変動ローンで試算した場合、月々の返済額は20万円ほど。これを踏まえ、改めて二拠点生活にかかる費用について算出した。

例えば、私たちの住む佐倉市では、2,000万円台前半でも中古戸建が見つかり、上記と同条件で試算すると、月々のローン返済を5~7万円ほどに抑えられる。これに加え、東京で30m²以下のマンションを賃貸しても、23区に中古マンションを購入する場合に比べると随分とリーズナブル。

私の地域では車が必須で、固定資産税と光熱費の基本料金も二拠点分発生する。ただ、費用の多くは事前に想定でき、今のところはほぼ想定内の出費に収まっている。

衣食については、化粧品や靴、仕事着、バッグなど生活に必要なものを東京の家にも常備し、急な滞在にも対応できるようにしている。

また、東京の家には飲み物以外の食料品をほとんど置いていない。食事は割り切って、惣菜を買うか外食するか。最低限のものしか置かないことで、掃除・整理整頓の手間が省けて気持ちの切り替えも楽になった。

東京の家はモノをストックせず、シンプルにしている

冷蔵庫には飲み物しか入っていない

2つの暮らしがもたらす変化とは

二拠点生活の良さとは、簡単にいえば都会と田舎のいいとこ取りができる点にある。性質の異なる2つの環境に身を置くことで、1つの暮らしでは知ることができなかったものに触れられるからだ。

例えば、東京のワンルームで暮らしていた頃は、私は家や家具にまるで興味がなかった。二拠点生活がきっかけで自分の心地よい暮らしについて考えるうちに、気づけば家づくりや家具に夢中に。去年は家具を求めて6大家具産地の一つである北海道東川町まで足を運ぶまでに!

家具を求めて「北の住まい設計社 東川ショールーム」へ

また、庭の草花の手入れのしかたを勉強し、苦手な虫と対峙しながら土に触れる休日を過ごすことで、デジタルから切り離される時間ができた。ひとつの作業に夢中になれる心地よさや、自然に直接触れることで感じる本能的な安らぎは、これまでの都会暮らしでは得られないもの。

自分の好奇心が枝葉のように、多層的に広がっていく。それが私の二拠点生活で得られたいちばんの気付きだった。

この二拠点生活は、東京から90分とそれほど遠い場所ではなく、きっかけも自分の発案ではなかった。それでも、環境が変わることで新しく学んでみたいことが増え、以前は想像もしなかった”ちょっと不便な自然の中の暮らし”を、今では心地よく感じる。

リビングにもたくさん緑を置いている

いままさに二拠点生活を視野に入れていて、私と同じように慎重派の人は、まずは「プチ二拠点」になりそうな候補先を見てみることをオススメしたい。見るだけならタダ。そこから、これまで自分になかった発想に面白がって乗っかってみると、思いもよらない変化が起こるかもしれない。

文/市川教子(Coe)

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