
オンライン大学「ZEN大学」が2025年4月に開学する。
運営するのは学校法人日本財団ドワンゴ学園。公益財団法人日本財団とN高などでオンライン教育にノウハウを持つドワンゴが連携して創る新たなオンライン大学となる。
社会人のリスキニングやリカレントの需要が高まる中、ZEN大学では何を学び、何ができるのか。
出願者のうち21%が社会人
2025年1月31日時点で、出願者数が3000名を突破した。
出願者の内訳は、高校3年生(高等専門学校生を含む)が61%と過半数を占める中、リスキニングを目的とした社会人の出願も目立っており全体の21%が社会人だという。また、系属校であるN高等学校・S高等学校の生徒の割合は全体の47%であった。
(数値はいずれも2025年1月31日時点)
日本財団ドワンゴ学園の広報担当者は次のように言う。
「内訳については公表しておりませんが、男女問わず、10代から70代の方までの幅広い年齢層、様々な職業の方から出願を頂いております」
また、「社会人出願者の半数程度が10代・20代となっており、若い世代の方が中心となっているが80代の方からの出願もあった」(同上)とのこと。
ZEN大学は完全オンライン授業、年間の学費は38万円となっており、日本の大学教育が抱える「収入」「居住地域」の障壁を取り除くことが期待されているが、社会人のリスキニング、リカレントの観点から見ても、場所や時間を制限されずに、経済的負担も少ないことは彼らにとっても大きなメリットとなることは明白だろう。
現時点では出願者3000名のうち21%、つまり600名超の社会人にそのメリットが”刺さったわけだが、今後、そして来年、再来年にはさらに増えても何も不思議ではない。
※画像はZEN大学ホームページより
※グラフの数字は、独立行政法人日本学生支援機構「令和2年度学生生活調査結果」に基づき、株式会社ドワンゴが集計した進学費用シミュレーションより算出した授業料です。「令和2年度学生生活調査結果」には、学年の記載はありません。
※授業料は、減額または減免対象者を含め、実際に納入する額を指します。テキスト・教材、授業料以外の学校納付金、修学費、課外活動費、通学費は含まれていません。
※システム利用料2万円、学籍管理料3万円を含みます。
※履修する科目や課外活動によって別途費用がかかることがございます。
pixivと提携、『【推しの子】』の赤坂アカ先生の授業も
ZEN大学では、「数理」「情報」「文化・思想」「社会・ネットワーク」「経済・マーケット」「デジタル産業」の6分野を横断し、279科目の中から自分の興味や関心に応じて学ぶことができる。
例えば、数学や心理学、社会学、経済学、プログラミングなどのほか、コンテンツ産業の歴史、ゲーム制作論などの授業があり、さらには「pixiv」との提携により、人気マンガ『【推しの子】』(原作)の赤坂アカ氏をはじめとするプロのクリエイターからイラストからデザイン、マンガなどといったクリエイティブ領域の知識やスキルを学べる授業もある。
「社会人の方向け」を謳い開講している授業があるわけではないが、豊富な授業ラインナップにはリスキニング、リカレントとしても応用できる授業がある。
編集部が見つけた社会人におすすめの授業を紹介したい。
AI・DX関連
⚫︎人工知能活用実践
年、人工知能ツールは目覚ましい発展を遂げており、日常生活や業務で人工知能ツールを活用することは、現代社会で活躍するためには必須である。本科目では、人工知能ツールを用いた演習、ツールの使い方に関する考察、アウトプットについての議論を行い、人工知能ツールを賢く使うための基本を身に付ける。思考の整理、データの収集および分析、マルチメディアの作成などに積極的に人工知能を活用する姿勢を身につける。
https://syllabus.zen.ac.jp/subjects/2025/INT-1-A2-1234-005
経営・マーケティング
⚫︎企業経営とファイナンス
本科目では、キャッシュの観点から見たリスクやリターンに加えて事業の資金調達について取り上げる。企業価値の時価をどうやって計算するか、有利子負債と自己資本からなる資本構成をどうやって最適化するかの基礎的な考え方を解説し、理解してもらう。さらに将来のプロジェクトを評価する方法、スタートアップの資金調達、M&Aやグループ企業の財務最適化についての基礎を考える能力を養う。
https://syllabus.zen.ac.jp/subjects/2026/ECON-2-C1-0204-003
⚫︎デジタル・マーケティング
企業マーケティングは、今や日々発生する膨大な量のデジタルデータの処理・分析を前提に進化している。本科目では、企業が利益を上げて設定した成長目標を達成できるための礎となるマーケティング全般の基礎を教示する。具体的には、デジタルツールを用いたデータの収集・集計・分析の基礎を伝え、それら解析結果を活用して、当該企業が顧客に提供する価値がその商品・サービスの購入・消費において的確に伝えられる方策を提示する。
https://syllabus.zen.ac.jp/subjects/2026/ECON-2-C1-0204-004
⚫︎プロジェクトマネジメント概論
プロジェクトマネジメントは、全ての人にとって役立つ知識体系である。本授業では、世界で標準的に教えられているプロジェクトマネジメントに準拠し、さらに、具体的な事例をもとに分かりやすく構成する。本授業では、プロジェクトマネジメントを行ううえで必須となる、次のような内容を扱う。WBS(Work Breakdown Structure)、スケジューリング、見積もり、品質マネジメント、リスクマネジメント、コミュニケーションと合意形成、調達など。なお、アジャイル開発の重要な概念である自律についても学ぶ。
https://syllabus.zen.ac.jp/subjects/2026/INF-2-C1-1030-002
地域活性化
⚫︎地域アントレプレナーシップ
地域は、農業や食、地場産業などの育成や事業承継、さらに少子化、高齢化、人手不足などさまざまな課題を抱えている。こうした課題解決の担い手は一義的には自治体や企業、農協などの組織だが、実際の成否を決するのは個人の活躍である。本授業では地域課題の解決の決め手となる個人の活躍に着目し、そこにおけるアントレプレナーシップの発揮とそれを支える環境やメカニズムをさぐる。すなわち、この授業では地域において組織の中、あるいは外にあって個人が自らの創意工夫を手掛かりに周りを巻き込みながら地域課題を解決していくダイナミズムを「地域アントレプレナーシップ」と定義し、その本質や成立条件を多面的に分析し再現可能性を探求する。なお各回の授業は地域アントレプレナーシップの事例に精通する専門家の協力を得ながら各地の具体例を掘り下げ、また必要に応じゲストとして各地で活躍するアントレプレナーを招き、対談、ヒアリングなどの多様な方法論でアントレプレナーシップの本質とその発揮の方法を学ぶ。
https://syllabus.zen.ac.jp/subjects/2025/BSC-1-B1-0204-014
クリエイティブスキル
⚫︎デジタル画像活用Ⅱ イラストディレクション講座(pixiv提携科目)
この授業ではプロデュース・ディレクションの視点に立ち、エンタテインメントや広告・宣伝の現場における画像を使ったビジネスのあり方と可視化による課題解決を学ぶ。発注のしかたやスケジュール管理など制作管理のフロー、トラブルシュートの事例などを学修し、イラストレーターを始めとしたクリエイトサイドとのコミュニケーションを身につける。デジタル画像活用の授業では、ビジネスシーンにおける画像の役割を広く学んでゆく。
https://syllabus.zen.ac.jp/subjects/2027/CAR-3-C1-0204-002
⚫︎Webデザイン演習
Webサイト制作に必要な基礎知識や、写真加工やイラスト作成を行うグラフィックツールの使い方、ノーコードのWebサイトビルダーの使い方を学び、実際にWebサイト制作を行う。
https://syllabus.zen.ac.jp/subjects/2027/INF-3-C3-1200-019
⚫︎動画クリエイター技術演習
Adobe Premiere ProとAfter Effectsの基本的な操作を学び、実際に動画制作を行いながら動画制作に関する基礎的な技術を学ぶ。
https://syllabus.zen.ac.jp/subjects/2027/INF-3-C3-1200-018
ZEN大学は全5期に分けて出願が行われており、第5期は2025年3月4日から2025年3月25日まで受け付けている。
取材・文/峯亮佑