
最近では資産家でなくても、サラリーマンが借入金で不動産投資ができる。
現在、中古のワンルームマンション4室に不動産投資して7年目となったエディターOが、実際の運用状況、運用する中で感じた真偽の両面を紹介していく。
「不動産投資は節税になる」はウソ?ホント?
不動産投資のメリットの1つとして、節税がある。不動産投資は、借入利子や建物の減価償却費を費用とすると、不動産所得が損失となることが多い。
その不動産投資で生じた損失を他の給与所得等と損益通算することで、給与所得等で生じた所得税の還付を受けたり、翌年の住民税を減らしたりすることができる。
実際の節税効果は……実は6年間なかった。毎年不動産所得はプラスで終わっており、他の所得と損益通算することはできなかった。また、もしマイナスとなったとしても、土地部分の借入金に係る利子については、損益通算の対象とならない。
マンションの購入価格はワンルームでもそれに対応した土地部分を合わせた金額となるが、東京の場合だと、価格に対する土地の割合が高くなり、損益通算の対象となる利子部分も少なくなる。東京のような都心を投資対象とすると、空室リスクが低くなるが、その分借入金の利息に対する土地に係る割合が高くなり、その利息に係る損失は損益通算の対象とならない。
したがって、節税効果はそこまで期待するべきではない。また、不動産所得が損失となる理由が、空室や修繕費のせいだとしたら、それは不動産投資がうまくいっていないということにもなる。
「給与の足しになる」はウソ?ホント?
私の物件の利回りは、年率5%前後である。これは、購入価格に対する年利回りである。借入のよる都心中心の中古物件による不動産投資の実際の現金収支はどうかというと、以下となっている。
投資している物件が都心中心であれば空室リスクは低いが、その分利回りは低い。逆に、都心から離れた場所にすると、購入価格が低いためその分利回りは高くなるが、空室リスクは高くなる。
私が投資する物件は都心中心であるため、空室は長くても1か月程度であったが、その分利回りは低いため、年間で10万円程度と、給与の足しになったとは言えない。
むしろ、クーラー等の設備交換があったときや空室が起きると、年によってはマイナスとなることもある。不動産投資で、保有期間中の収益は求めづらいと考えた方がよいだろう。
さらに、最近では金利や管理費が上がってきている。不動産投資の借入金に係る金利は基本変動金利で、かつ住宅ローンに比べると適用金利が高いため、保有期間中の収益は少なくなってきている。
借入での不動産投資は売却して初めて利益となると考えた方がよいだろう。不動産投資の対象となる物件価格は利回りで決まる。そのため、家賃が下がれば売却価格は下がる。
現在7年目で家賃はまだ下がっていないため、査定すると購入価格と同じくらいになっている。その場合、売却価格からローン残高を差し引くと、1室あたり200万円程度の利益となる。ただし、今後家賃が下がれば売却価格は下がる可能性もある。
借入金がある場合、売却代金は借入金残高差引後の残額を受け取ることになるため、借入金残高が大きいと実際に受け取れる金額は少ない。
一方、売却すると譲渡所得として税金がかかるが、実際の手元に残る売却代金より譲渡所得の方が大きくなる可能性が高い。譲渡所得は売却代金から取得費や譲渡費用を控除して計算するが、取得費は購入価格そのものではなく、購入価格からこれまでに計上してきた減価償却費の合計額を控除するため、実際に受け取る代金より譲渡所得が大きくなる可能性がある。
例えば、5年前に1,000万円で購入したマンションを、売却価格1,000万円(譲渡費用控除後)、ローン残高800万円で売却すると、実際受け取ることができる代金は100万円となる。一方、建物部分の減価償却費を毎年25万円計上していたとすると、譲渡所得は、1,000万円-(1,000万円-125万円)=125万円となり、これに税率が課される。
そして、特に5年以内の売却の場合、所得税は税率が30%(住民税は9%)と、5年超で売却したときの税率15%(住民税は5%)の2倍の税率となるため、購入してすぐにたまたま値上がりしたとしても、売却するのは注意が必要だ。
「不動産投資が保障になる」はウソ?ホント?
不動産投資を借入で行うと、借入に団体信用保険を付加する。もし、借主に万が一が起きた場合は、借入金残高はゼロとなり残された家族に不動産を残すことができる。
一方で、不動産投資に係る借入金の適用金利は高く、返済を家賃で行えるようにするために毎月の返済額を抑えることが多い。そうすると、その分返済期間は35年というように長期にわたることになり、その分支払利息の負担は大きく、保障という点においては保険に加入した方がコストが低いのではとも感じる。
私の事例では、保有期間中はそこまでメリットがないかもしれない。
保有期間中は、家賃は空室でない限りもちろん入ってくるが、固定資産税、設備交換日、管理費の支払いもあるため、やはり、それを支払えるよう、家賃を使わないようにとっておかなければならない。また、突然請求される設備費用に備えて、ある程度余裕をもって資金を用意しておく必要もある。そのため、保有期間中には大きなメリットは感じていない。
投資から丸6年が経ち、実際には1件も売却していないが、売却時に利益が出ると考え投資を続けてみている。不動産投資を始める前に、投資の最中のリスクについて下調べおよび心構えをしておくことが得策だ。
文/大堀貴子