トランプ2.0発動!アメリカが抱える社会問題が分かる3作
高速で飛ばすトランプ氏だが、足元では難題が山積み。現代のアメリカの真実を知る3作をニキさんがピックアップした。
アメリカの抱える社会問題が見えてきますキニマンス塚本ニキさん
ラジオパーソナリティーやコメンテーターなど幅広く活躍。本誌連載『NIKKIのKINIなる世界』でもおなじみ。大統領選でも現地まで赴き取材を行なった。
1月20日、第2期ドナルド・トランプ政権がスタートしました。現地で3週間近く大統領選の取材をしましたが、集会でトランプ氏は、しきりに「みなさんを苦しめてきた現政権の権力者を倒すために、私をホワイトハウスに送り込んでほしい」とアピールしました。まるでビジネスマン時代から何十年も、時の権力者と良好な関係性を保つことで優位に立ってきた過去を忘れたかのように……。一方で、「トランプ氏は有能なビジネスパーソンで、彼の知見や交渉力、経済を動かす力があれば、私たちの生活はきっと良くなる」や、「彼がリーダーになれば不法移民問題や、行きすぎた多様性ルールが改善され、古き良きアメリカが戻ってくる」と信じて疑わない有権者が数多くいることも事実。
そんなアメリカで政治に限らず、人種や生い立ちによる構造差別が生む格差といった社会問題などの知的欲求を満たす一助となるのが、ケーブルテレビや動画配信サービスです。渡米時には必ず試聴するケーブルテレビ「HBO」では、諸問題をテーマにしたドキュメンタリーやドラマを放送。見た人が最後に希望の持てるエンターテインメント要素も強く感じますが、社会課題の啓発としても機能しているのです。ケーブルテレビや配信サービスは、予算が潤沢で、制作の自由度もあり、共感を集めるテーマで支持を獲得しています。ここに選んだ3つのコンテンツを見れば、少しでもアメリカの抱える社会問題が分かると思います。
アメリカの選挙制度が分かる教科書
Netflixドキュメンタリー『投票のカラクリをダイジェスト』
アメリカの選挙制度を「選挙権」、「選挙は金で買えるか」、「投票のからくり」の3エピソードで深く解説。投票弾圧や選挙権のはく奪といった問題といったアメリカならではの問題にもスポットを当てる。ナレーションをレオナルド・ディカプリオ、セレーナ・ゴメスなどが担当するのも見どころのひとつ。
出演:ドナルド・トランプほか
配信:Netflix独占配信中
〈ニキ的見どころ〉上級向けですがグラフィック、ビジュアル、アニメーションが多く見やすい構成です。民主党のほうが選挙資金は高かった、選挙区割りのからくりも明解です。
貧困層の立ち退き問題をアートな映像で
『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』
祖父が建て、幼少期に住んでいたヴィクトリア朝の邸宅を取り戻そうと奔走する2人の黒人青年が主人公の映画作品。サンフランシスコの都市開発や富裕化で取り残された人々のリアルな姿が描かれている。DVDもTCエンタテインメントより発売中。
監督:ジョー・タルボット 脚本:ジョー・タルボット、ジミー・フェイルズほか 出演:ジミー・フェイルズ、ジョナサン・メジャースほか
配信:Prime Video FOD ほか
〈ニキ的見どころ〉地価高騰を生むジェントリフィケーションで、低所得者層が立ち退きを迫られることが問題化しています。哀愁漂よう映像から今のアメリカが読み取れます。
アメリカ副大統領のサクセスストーリー
Netflix映画『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』
貧困地帯出身で壮絶な幼少期を経て、アメリカ副大統領にのし上がったJ.D.ヴァンスの回顧録が原作。プロパガンダ色も強いが、死に物狂いで勉強しどん底からアメリカンドリームを実現する姿は感動を呼ぶ。
監督:ロン・ハワード 脚本:ヴァネッサ・テイラー
出演:エイミー・アダムス、グレン・クローズほか
配信:Netflix独占配信中
〈ニキ的見どころ〉ラストベルト地帯で暮らす家族とイェール大学のエリート層の間で奮闘するヴァンスの視点から階級社会や格差がまざまざと伝わってきます。
取材・文/安藤政弘 撮影/千川 修(人物) 編集/寺田剛治
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