
世界で起きる数々の事象は、ドキュメンタリーで知るのが一番。裏の裏まで描かれる欧米のドキュメンタリーは、フィクションより面白い!?
地上波で報道できない事件の裏側
アメリカのドキュメンタリーは、配信サイトの前にケーブルチャンネルの流行があり、最初はスポーツチャンネルの中のドキュメンタリーに人気が出て、盛んに作られるようになりました。
日本の場合は、地上波で報道できない事件の裏側などを、個人的な視点から取り上げて問題提起する作り方が多いですね。大島新監督の『なぜ君は総理大臣になれないのか』はその典型。ただ、動画サイトに限れば、視聴回数を稼ぐため、結果、エンタメ寄りのドキュメンタリーになる。日米でかなり性格が違うんです。
配信ドキュメンタリーは長時間連続で作られているので、細かいところまでじっくり見られるのが魅力です。特に欧米ではニュースフィルムは引用扱いなので、日本のように著作権使用料を取られることがないため大量に使える。ただ逆に視聴回数を意識しすぎて商業主義的なものも多い。アメリカだとサッカーやテニスなどスポーツ系。プロレスのドキュメンタリーは配信サイトの独壇場です。ほかに凶悪殺人など事件ものは鉄板。オカルト心霊現象ものも面白いです。
政治系では『トランプ アメリカン・ドリーム』は、公開中の映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』のベースになった作品。イギリス製作なので揶揄するような形で、投票のからくりや企業献金の使われ方など、大統領選挙の裏側を徹底して描いています。これが手軽にNetflixで見られるのがアメリカのすごさでしょう。
アメリカ不動産王が大統領になるまで
Netflixシリーズ『トランプ アメリカン・ドリーム』
カジノ経営、破産、離婚に不倫、リアリティ番組での復活。がさつな実業家が、大方の予想に反し大統領にまで上り詰めていく軌跡を、友人や仕事仲間の証言で描く。
出演:ドナルド・トランプ
配信:Netflix独占配信中
生まれながらのセールスマン。若い頃はなかなかハンサムな男だが、うさんくささは変わらず。
〈藤木的見どころ〉選挙の金の流れまで徹底して描き、日本人が見るとショックを受けます。
船や飛行機が消える海の真相に迫る!
『バミューダ・トライアングル 呪われた海域』
無数の船や飛行機が行方不明になる魔の三角海域の謎を、科学的に解明。深く巨大な穴「シンクホール」に引き摺り込まれた説を検証するプロセスは圧巻。
監督:オーウェン・パームクィスト
出演:ラシュモア・デヌーヤー
配信:Prime Video U-NEXT Hulu
〈藤木的見どころ〉深海に潜水艇を沈め船の残骸を見つけたり、最新技術を駆使し過去に突き止められなかった謎に迫る1本。
アメリカン・プロレスの光と影
Netflixドキュメンタリー『MR.マクマホン 悪のオーナー』
アメリカのプロレス団体WWEの栄光と転落、訴訟とスキャンダルの数々を、ビンス・マクマホン自身が振り返る。ハルク・ホーガンらの記録映像も多数。
監督:クリス・スミス
出演:ビンス・マクマホン、ハルク・ホーガンほか
配信:Netflix独占配信中
〈藤木的見どころ〉マクマホンがいかにヒールを演じながら、会社を変えていったか。ビジネス的な観点から見ても面白い。
米音楽史を彩る名プロデューサーの生涯
Netflixドキュメンタリー『クインシーのすべて』
昨年他界した音楽界の大物、クインシー・ジョーンズの素顔に迫る音楽ドキュメンタリー。膨大な貴重映像、豪華アーティストの登場も見応え満点。
監督・脚本:アラン・ヒックス、ラシダ・ジョーンズ
出演:クインシー・ジョーンズ
配信:Netflix独占配信中
〈藤木的見どころ〉顔が怖いから音楽業界を牛耳るボスみたいに思われてるけど、リスペクトを集めた人だとわかります。
取材力と映像の質はNetflixが頭抜けてます
フリーライター 藤木TDCさん
1962年生まれ。著書に『アダルトビデオ革命史』(幻冬舎)、『昭和酒場を歩くー東京盛り場今昔探訪』(自由国民社)など。
取材・文/馬飼野元宏 撮影(人物)/大崎あゆみ 編集/寺田剛治