
近年のホラー映画は演出のバリエーションも行き詰まり気味。だが、アイデア1つでブレイクできるのがこのジャンル! テクノロジーとの融合や、ストーリーテリングの巧みさで新たな恐怖を生み出すことは可能なのだ。
アイデアひとつで新たな恐怖感動が生まれる
恐怖がもたらす特殊な感動にはアップデートが少なく、ホラー演出のバリエーションにも進化が少なかったと思っていたので、ホラーをテクノロジーと組み合わせることで、今までにない新たな恐怖体験が作れないかと考え、「株式会社 闇」を立ち上げました。お化け屋敷のプロデュースから、昨年、2か月弱で7万人を動員した『行方不明展』などを展開してきました。
今の時代、ホラーはVRやAIなどのテクノロジーと組み合わせることで拡張が可能になりました。特にSNSはメディアの特性上、短いインパクトを残せるホラーとすごく相性がいい。あと、怖いものってシェアしたくなるんですよ。『リング』の感染のごとく、これまで映画の中だけで完結していたものを、SNSに広げることで皆が楽しめる。SNS上で考察しあって、散りばめられた伏線を、これとこれがつながるのでは? と推理したり、議論がしやすくなったりしています。
大きな音や怖い映像を出すホラー演出の代表・ジャンプスケアーも、見る側はもういいよ、と思っている節もある。これに代わるホラー演出を生み出したいですね。
また、今のホラーは高いレベルのストーリーテリングが求められます。例えば、2016年公開の『ドント・ブリーズ』は、盲目のおじいちゃんと3人の強盗の対決ですが、このおじいちゃんが無茶苦茶強く、強盗たちは、少しでも音がしたら即座に狙ってくるから音を立てられない。ルールをつくったことで、すごい緊迫感が生まれているんです。アイデアひとつで新たな恐怖感動をさせる……そんな作品を動画配信で漁ってみてください。
盲目の老人VS強盗の壮絶バトル
『ドント・ブリーズ』
アメリカ・デトロイトが舞台。盲目の退役軍人の家に押し入った3人組の若い強盗が遭遇する恐怖体験を描いた作品。名作『死霊のはらわた』のリメイクを監督したF・アルバレス監督による一軒家ホラー。
監督:フェデ・アルバレス 脚本:フェデ・アルバレス、ロド・サヤゲス
出演:ジェーン・レヴィ、ディラン・ミネットほか
配信:Prime Video U-NEXT RakutenTV TELASA Lemino
〈頓花的見どころ〉お話はほぼ一軒家の中で進行します。部屋が真っ暗になると、盲目の老人が泥棒チームに対し一気に強くなる。88分の映画ですが最初から最後まで息ができない。発想が上手いです。
20代監督による新感覚ホラー
『黄龍の村』
阪本裕吾が24歳で撮った作品。村の因習系ホラーながらメタ構造になっているのが面白い。流血多めなのでご注意を。
監督・脚本・編集:坂元裕吾
出演:水石亜飛夢、松本卓也、鈴木まゆほか
配信:Prime Video Netfix Hulu DMM TV U-NEXT RakutenTV Lemino
〈頓花的見どころ〉邦画では珍しいスラッシャーもの。監督も若く、映画のフォーマットを破壊してやる! という血気を感じます。
ホラーはアップデートし続けてます
闇 代表取締役社長CCO
頓花(とんか) 聖太郎さん
1981年生まれ。制作会社のアートディレクターを経て、大好きなホラーを仕事にすべく2015年に株式会社 闇を設立。
取材・文/馬飼野元宏 イラスト/安藤 直 編集/寺田剛治
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