
アクション監督として世界的な活躍を見せる谷垣健治さんに、近年のアクション映画の傾向、技術の進歩による今後の展開などを聞いた。
中国発のアクションが玉石混合ながら増加中
近年は、アクションもドラマのひとつであって、密接に繋がったものという言い方をされます。でもそれは当たり前のことで、むしろリアリティを意識しすぎてドラマにアクションが埋もれてしまうケースも多い。浮かず、埋もれず、アクションとして面白いものを作りたいと思っています。
僕は香港での活動をベースにしていましたが、今は香港映画も人材が減ってきて、予算のかかる映画は中国で撮るようになりました。実は中国の配信には面白いアクション映画が多く、若いチームがトライ&エラーを繰り返していて、玉石混交の中でオリジナリティの高いものがつくられています。
昔はアクションをやる俳優とやらない俳優に分かれていたけど、『マトリックス』のキアヌ・リーブス以降、俳優に必要な身体表現だと自覚され、みんながやるようになり、レベルも上がりました。その分、ごまかしが利く近接で闘う軍隊格闘技に近いアクションが増えています。これって言い方は悪いけどアラが見つけにくい。テコンドーだと足が上がらないとダメだし、武術はごまかしが効かないですからね。その人にしかできないアクションで魅せる、そんな作品が見たいですね。
加えて、スタント・コーディネート出身の監督が手がけた『タイラー・レイク–命の奪還–』がある一方で、北村匠海の『幽☆遊☆白書』がアクション作品として成立しているのが、時代を表わしていると言えますね。
ワンカット風アクション演出の醍醐味
Netflix映画『タイラー・レイク -命の奪還-』
スタント・コーディネートからアクション監督となったサム・ハーグレイブの監督デビュー作。クリス・ヘムズワース演じる元傭兵が裏社会の危険なミッションに挑む。
監督・脚本:サム・ハーグレイヴ 脚本:ジョー・ルッソ
出演:クリス・ヘムズワース、ルドラクシュ・ジャイスワルほか
配信:Netflix独占配信中
〈谷垣的見どころ〉この監督はカットをつなぎ合わせてワンカットに見せるのが定番。次回作の”2”でも、その手腕を発揮!
中国がリメークした『座頭市』に驚愕!!
『盲剣楼』
盲目の賞金稼ぎが復讐に燃えるストーリー。主演はジェット・リーの後継者と評されるシェ・ミャオ。迫力の殺陣は見応えあり!
監督&脚本:ヤン・ビンジア 出演:シェー・ミオ、ガオ・ウェイマン、シャン・ハオほか
配信:U-NEXT Prime Video
〈谷垣的見どころ〉『座頭市』の中国版リメーク。中国発のアクションが今、激アツ! 注目してください。
韓国流おばさんアクションの秀作
Netflixシリーズ『キル・ボクスン』
韓国の女性アクション映画。チョン・ドヨン演じるシングルマザーが実は暗殺組織の伝説的な殺し屋だったというお話。
監督・脚本:ピョン・ソンヨン 出演:チョン・ドヨン、ソル・ギョング、キム・シアほか
配信:Netflix独占配信中
〈谷垣的見どころ〉エンディングが凄い。手前でも奥でも時間軸を越えてどうやって戦っているかワンカットで描かれる。
漫画そのままの再現度が素晴らしい
Netflixシリーズ『幽☆遊☆白書』
『週刊少年ジャンプ』の大人気冒険活劇漫画を、初の実写化。Netflixで2023年に世界配信され、北村匠海の浦飯幽助役など漫画の再現度の高さで話題に。
監督:月川翔 脚本:三嶋龍朗 出演:北村匠海、志尊淳、本郷奏多、上杉柊平ほか
配信:Netflix独占配信中
〈谷垣的見どころ〉特に1、2話の市街地戦はすごい。アクションや衣装造形も含め、漫画実写化のお手本のような作品です。
ドラマに埋もれない面白いアクションを作りたい!アクション監督 谷垣健治さん
日本が世界に誇るアクション監督。幾多の香港映画や『るろうに剣心』シリーズで知られる。最新作に『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』。
取材・文/馬飼野元宏 イラスト/安藤 直 編集/寺田剛治
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