
昔のMicrosoft Officeのイルカ、と聞いて理解してくれるZ世代はどれだけいるだろうか?
Officeのいずれかのソフトを立ち上げると出てくるイルカ。名前は「カイル」で、困ったことがあれば彼に質問して問題を解決していたものだ。
このような具合のデスクトップアシスタントが流行った時期が、確かに存在した。そんな時代の思い出を蘇らせてくれるようなWindows向けソフトウェア『DesktopMate』が、海外ユーザーから大好評を得ているようだ。
どのようなソフトウェアなのか。早速試してみよう。
ウィンドウやタスクバーの上に座る初音ミク
PC画面は様々な形で満ち溢れている。
たとえば、我々が普段「ウィンドウ」と呼んでいるものは、小さくすれば長方形の図形になる。見方を変えれば、これはちょっとしたギミックになり得る仕組みだ。DesktopMateは、まさに画面の様々な要素をギミックとして活用しているソフトウェアである。
画面内に飛び出したキャラクターが、ウィンドウの上に座ったりタスクバーに寝そべったり、画面端からひょっこり顔を出したり……といったことをしてくれるのだ。なお、この記事では別売りDLCの初音ミクを使っている。利用自体は無料だが、その場合は初期キャラクターの「あいえるたん」のみ。今回は2,200円を投じてミクを召喚してみた、というわけだ。
ダウンロードはゲームソフトプラットフォームのSteamから。立ち上げた直後、キャラクターがいつものPC画面に躍り出て笑顔を振りまいてくれる。おおっ、タスクバーに寝そべったぞ!
ウィンドウの上ではしゃぎ回ったり、カーソルで頭を撫でたら喜んだり……という具合に、その一挙手一投足で画面の前のユーザーを楽しませてくれる。
ダウンロードの6割以上が海外ユーザー
DesktopMateのキャラに、AIアシスタントのような機能がある……というわけではない。
また、初音ミクも含めてこれらのキャラは今の時点ではしゃべれない。これについて開発会社のインフィニットループの公式HPによれば、「『あいえるたん』『DLC:初音ミク』をはじめとして、特に記載がない場合は、キャラクターボイスは搭載しておりません。アップデートでボイスを追加搭載することを検討しておりますので、少々おまちください。また今後登場するキャラクターによっては、最初からボイス搭載が予定されているものもありますので、楽しみにお待ちください」とのこと。
どちらにしろ、現段階ではあくまでも「画面上で動くマスコットキャラクター」に留まっているのだ。
ところが、そんなDesktopMateに大きな注目が集まっているという。このソフトウェアが配信されたのは今年1月8日。それから2週間後の1月22日に、インフィニットループはPR TIMESでこのようなプレスリリースを配信している。
株式会社インフィニットループ(本社:北海道札幌市、代表取締役社長:小野真弘)が展開するWindows用デスクトップマスコットプラットフォーム「Desktop Mate」は、2025年1月8日の配信開始から約2週間という短期間で累計100万ダウンロードを達成する大きな反響をいただいております。
(中略)
特筆すべきは、全体の60%が海外ユーザーからのダウンロードであり、日本国内だけでなく、グローバルな支持を集めるアプリとして成長していることです。
ユーザーの皆さまからは、「画面の隅に癒しがあるのは素晴らしい」「かわいい動きに癒される」といった多くの反響をいただいております。「あいえるたん」や「初音ミク」といったキャラクターたちが、ウィンドウ間をジャンプしたり座ったり、マウスを追いかけたりする姿は、デスクトップ上での新しい体験として、「生活の中の癒し」を求めるユーザーの皆さまから高い評価をいただいております。
(Desktop Mate 100万ダウンロード突破!新たに公式Xアカウントも開設-PR TIMES)
Desktop Mateは日本人にしかウケないソフトウェア……というわけではまったくなく、むしろ日本より海外で注目されていることが数字にはっきりと現れているのだ。
ただ、Steamの評価を見ると案の定「初音ミクなのに声を出せない」という点が指摘され、低評価も呼び寄せてしまっている。このあたりの声をどうフィードバックするかが、これからの課題になるだろう。
日本独自の概念「kawaii」
日本語の「可愛い」は、今やそのまま「kawaii」と書けば英語圏でも十分に通用する単語になった。
そう書くと、「cuteではダメなのか?」と言われてしまうかもしれない。しかし、英語の「cute」とは子供やペットに当てはめる意味合いが強く、人格を確立させた個人やキャラクターに向ける単語ではない。つまり、英語には「可愛い」に相当する言葉がなかったのだ。
上記のプレスリリースにある「かわいい動きに癒される」という文言の「かわいい」は、「cute」ではなく「kawaii」であることは想像に難くない。日本に由来する一概念が、海外に広く受け入れられているのだ。それを示す現象が、Desktop Mateの世界的大好評である。
世界は「kawaii」を待ち望んでいる。
【参考】
Desktop Mate
Desktop Mate 100万ダウンロード突破!新たに公式Xアカウントも開設-PR TIMES
文/澤田真一
月20万円のアイテム課金も!?スナックのママによるライブ配信「のぞけるスナック」が人気を集める理由
日本には「スナック」という形態の飲食店が存在する。 スナックは多くの場合、「ママ」と呼ばれる女性がカウンター越しに接客する酒類提供店で、これは海外ではあまり見な...