
確定申告をして多くの人が受け取ることになる還付金。本記事では、還付金の対象となるケースや計算方法、受け取り時期などについて詳しく解説する。
目次
確定申告の時期になると、「還付金」という言葉を耳にする機会が増えるだろう。個人事業主や年末調整では申告できない控除がある人は、確定申告をすることで還付金を受け取れる可能性がある。
しかし、確定申告で還付金が戻ってくる仕組みや、いくら戻ってくるのかを具体的に理解していない人も多いのではないだろうか?本記事では、確定申告の還付金について、仕組みや受け取り時期、計算方法などをわかりやすく解説する。
確定申告の還付金とは
まずは、確定申告をして還付金が発生する仕組みや、年末調整との関係について見ていこう。
■還付金が発生する仕組み
還付金は「払いすぎた税金が戻ってくるお金」のこと。
私たちは、給与から天引きされる源泉徴収や、事業収入から納める予定納税など、1年を通してさまざまなかたちで税金を納めている。しかし、これらの税金は、年末に確定する実際の収入や控除額などを考慮せずに計算されているため、結果的に納めすぎている場合がある。
例えば、医療費控除や扶養控除など、さまざまな控除を受けられるにもかかわらず、源泉徴収ではこれらの控除が考慮されておらず、本来納めるべき税金よりも多く納めている可能性がある。確定申告をすることで、これらの控除を適用した正確な税額が計算され、過剰に納めた税金が還付金として戻ってくる仕組みだ。
■年末調整との関係
確定申告とよく似た言葉に「年末調整」がある。どちらも税金に関わる手続きだが、還付金とどのような関係があるのだろうか。
年末調整とは、会社員が1年間で納めるべき所得税を年末に精算する手続きのこと。毎月の給料から天引きされている所得税は、あくまでも概算で計算されたもののため、年末に収入や控除を確定させ、払いすぎた税金があれば還付金として受け取ったり、反対に不足分があれば追加で納めたりする調整を行う。
会社員は年末調整があるため、基本的には確定申告をしなくても払いすぎた税金は戻ってくる仕組みだ。ただし、医療費控除など、年末調整で考慮されない控除がある場合や、副業で一定以上の収入がある場合などは、確定申告をして還付金を受け取れる可能性がある。
確定申告の還付金を受け取るための要件
還付金は、確定申告をすれば必ず受け取れるものではない。ここでは、個人事業主と給与所得者それぞれについて、還付金の対象となるケースと対象外となるケースを具体的に解説する。
■還付金の対象となるケース
個人事業主と給与所得者に分けて、還付金の対象となる人、ケースを説明する。
・還付金の対象となる個人事業主
個人事業主の場合は、源泉徴収されている報酬を受け取っている場合や、予定納税を行っている場合が該当する。例えばフリーランスのライターやデザイナーなどは、報酬から源泉徴収されているケースが多いため、確定申告をすることで還付金を受け取れる可能性がある。また、前年の所得税を前払いする予定納税をしている場合も、確定申告で実際の所得に基づいて精算をすることで、還付金が発生する場合がある。
・還付金の対象となる給与所得者
給与所得者とは、勤務先から給与を受け取っている人全般を指す。正社員だけでなく、派遣社員や契約社員のほか、パート、アルバイトなどの人も含まれる。
給与所得者は、年末調整で対応できない控除を適用する場合や、年末調整を受けていないときに確定申告を行うことで、還付金を受け取れる可能性がある。 例えば、医療費控除や住宅ローン控除などは年末調整では対応できないため、確定申告が必要となる。また、年の途中で退職した、給与が2,000万円を超えているなどが理由で、年末調整を受けていない場合も、確定申告の対象となる。
■還付金をもらえない人
確定申告で還付金を受けられるのは、払いすぎた税金がある人だけで、誰でも受け取れるわけではない。
例えば、給与所得者で年末調整を済ませている場合は、すでに税金の精算が完了しているため、基本的には還付金は発生しない。ただし、年末調整で申告できなかった控除がある場合や、年末調整後に扶養家族が増えた場合などは、確定申告をすることで還付金を受け取れる可能性がある。
また、源泉分離課税の対象となる所得のみの場合も、還付金は受け取れない。源泉分離課税とは、預貯金の利子や株式の配当金など、特定の所得に対して収入を受け取る際、あらかじめ税金が差し引かれる制度のこと。この場合、確定申告をする必要がないため、還付金も発生しない。
さらに、そもそも源泉徴収や予定納税で所得税をまったく支払っていない人は、還付金の対象外となる。
確定申告の還付金はいつ振り込まれる?
確定申告には主に税務署窓口や郵送での申告と、e-Taxでの申告があるが、それぞれで還付時期が異なる。それぞれの手続きにおける還付金の受け取り時期を確認しよう。
■税務署窓口・郵送で申告した場合の受け取り時期
確定申告書を税務署の窓口に提出、または郵送で提出した場合、還付金が振り込まれるまでには、約1か月から1か月半程度かかる。
税務署は大量の申告書を一つずつ丁寧に確認しながら処理を進めているため、特に確定申告が集中する2月と3月は、通常よりも手続きに時間がかかる場合もあることを覚えておこう。
なお、還付金の振込手続きが完了すると、税務署から「国税還付金振込通知書」のハガキが届く。ハガキには、手続き開始日などが記載されているため、還付金の入金予定日をある程度予測できる。
■e-Taxで申告した場合の受け取り時期
e-Taxは、インターネットを利用して確定申告を行うシステム。e-Taxで申告した場合、還付金の処理にかかる期間は、おおむね3週間程度。税務署の窓口や郵送に比べて、1週間から2週間ほど早く受け取れる計算だ。
また、e-Taxでは、マイページにログインすることで、還付金の処理状況を確認可能。処理状況は、申告から約2週間後から確認でき、「申告書の内容を確認しています」や「還付金の支払い手続きを下記の日程にて行います」などの表示で、手続きの進捗状況がわかる。