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2025年は「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者になり、社会の高齢化が一段と加速する年であることから、介護サービスへのニーズがますます高まりそうだ。
その一方で、2024年4月に行われた介護報酬の改定により、介護が必要な人の自宅での暮らしを支える「訪問介護事業」が大きな打撃を受けたため、要介護状態になった場合に介護施設へ入居する流れが今後は強まっていくと考えられる。
上記のような、介護に関連したテーマへの注目が予想されることから、LIFULL 介護では直近1年以内に介護施設、高齢者住宅(※)に入居した家族、親族がいる人1,873名を対象に「介護施設入居実態調査 2025」を実施したので、結果をお伝えしよう。
※介護施設:介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、健康型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、特別養護老人ホーム、グループホーム、ケアハウス、軽費老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院
入居した施設の入居一時金「なし」が約3割、費用負担「入居者本人+家族・親族」は約7割も
「入居した施設の入居一時金の金額」については、「なし」が最多で25.4%となった。
「入居一時金」とは、施設入居時にまとまって支払うお金で、家賃の前払いなどに相当し、月額利用の料金とは別途かかる費用だ。入居一時金が無い場合、初期費用が抑えられ、利用者にとっては入居のハードルが低くなる。
また、入居一時金の支払いがあり、かつ金額がわかっている人を対象にきいた「入居一時金の負担者」については「入居者ご本人のみ」が26.9%の一方で、最も多かったのは「入居者とお子様」で28.9%となった。
さらに、「入居者と配偶者」が21.9%、「入居者と兄弟・姉妹」が11.5%、「入居者とお子様、配偶者、兄弟・姉妹など複数」が5.4%で、合わせて約7割(67.7%)にもなっていることから「入居者+家族・親族」が負担者となっているパターンが最も多いことがわかる。
入居した施設の月額は「10万円台」が最多、10万円~20万円台がボリュームゾーン
「入居した施設の月額」では、「10万円台」が最多で33.6%という結果に。続いて20万円台が27.3%となっており、合わせて約6割を占めていることから10万円~20万円台がボリュームゾーンとなっていた。
一方、30万円以上も22.3%となっているが、これは比較的元気な人がその状態を維持しながら健康的に暮らすことを目指した高額な介護施設も近年登場していることが背景として考えられる。
なお、介護施設における月額費用には介護サービスの自己負担額や居住費・食費・管理費などが含まれている。
介護施設入居時に「家じまい」をしているのは約2割、空き家状態も約2割という結果に
お金、特に資産という面では住宅も重要なテーマになる。そこで「入居者ご本人が介護施設に入居する際のそれまで住んでいた住宅の状態」について聞いたところ、最も多かったのは「家族・親族が住み続けている」で29.2%だった。
また、「売却した」に関しては18.3%となっており、介護施設入居等に際してそれまでの住まいを売却する『家じまい』を実施しているのは約2割だった。
不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S」において「相続」を理由とした売却査定依頼の割合は年々増えていることから、今後「売却」という選択肢が存在感を増す可能性が考えられる。
その一方で「本人・家族・親族が所有しているが空き家状態」は18.0%となっており、長年の空き家問題が根強いことも明らかになった。
■「LIFULL 介護」編集長 小菅秀樹(こすげひでき)氏のコメント
有料老人ホームに入居するには、まとまった一時金が必要な施設が多いものの、近年では入居一時金の価格を抑えた施設や、入居金なしのホームも増えてきました。
今回の調査では、入居一時金が「なし」の施設を選んだ割合が約3割に上りました。初期費用を抑えたいニーズに応える形で、入居一時金「0円」の老人ホームが一定の人気を集めています。
また、月額費用では「10万円台」が最多、10万円~20万円台が主流であり、多くの入居者が年金+αでの生活を想定していることがうかがえます。
一方で、入居時費用の負担には本人や配偶者だけでなく、兄弟姉妹や子どもも金銭援助するケースが約70%に上ることも判明しました。この背景には、本人や配偶者の負担だけでは支払いが難しく、やむを得ず家族が支えるケースが多い現状がわかります。
さらに、「家じまい(売却)」を行う家庭が約2割にとどまる一方で、「空き家状態」の割合も約2割に上ります。
売却と空き家が同率という結果は、資産活用を進める家庭がある一方で、管理が十分ではなく活用できていないケースも同程度存在していることが分かります。これは空き家の処分費用や管理の負担が課題となっている現状を示しています。
老人ホームへの入居は、介護負担を大幅に軽減する反面、在宅介護と比べて数倍の費用がかかります。入居資金が不足する場合、物件がある程度限定されるものの、リバースモーゲージやリースバックを活用する方法もあります。
介護は突然始まることが多いため、入居のタイミングや家財の処分、入居後の空き家対応について、早めに家族間で話し合いを進めておくことが重要です。
調査概要
調査期間:2024年12月13日~2024年12月17日
調査主体:株式会社LIFULL senior
調査対象:直近1年以内に介護施設、高齢者住宅(※)に入居した家族、親族がいる人1873名
※介護施設:介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、健康型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、特別養護老人ホーム、グループホーム、ケアハウス、軽費老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院
調査方法:インターネット調査
小数点第2位を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合がある。
関連情報
https://kaigo.homes.co.jp/
構成/Ara