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アメリカのトランプ大統領が「相互関税」の導入検討を指示したことから、早くも影響を懸念する声が上がっている。課税措置の対象には日本も含まれており、自動車にも適用される、との報道もあるからだ。
そんなトランプ関税に関する分析リポートが三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩 氏から届いているので、概要をお伝えする。
トランプ米大統領は相互関税の導入を指示、全貿易相手国の関税や非関税障壁などを調査へ
トランプ米大統領は2025年2月13日、貿易相手国が米国製品に課す輸入関税と同水準まで、米国も相手国製品の輸入関税を引き上げる「相互関税」の導入を指示する文書に署名した。
この文書によると、相互関税の導入は、米国の貿易赤字を削減し、不公正な貿易慣行を是正するためのものであり、導入に向けてすべての貿易相手国を調査するとしている。そのため、日本や欧州連合(EU)も調査対象に含まれることになる。
主な調査項目は図表1のとおりで、米国製品に課される関税や付加価値税、非関税障壁、為替レート、市場参入の不公正な制限など、多岐にわたる見通しだ。
商務長官と通商代表部(USTR)は調査結果を踏まえ、貿易関係の再均衡化を図るための措置を詳細に記した報告書をトランプ氏に提出することになる。米ホワイトハウス高官は同日、記者団に対し、調査期間は国ごとに異なり「数週間から数か月で終わる」との見方を示したという。
■市場にとって即時発動回避は安心材料だが、付加価値税なども調査の対象となり、懸念は残る
米国は相互関税を導入するにあたり、すべての貿易相手国について多岐にわたる項目を国ごとに調査することになるため、発動まで実際にはかなりの時間を要する見込みだ。
市場にとって、即時に発動されなかったことはひとまず安心材料だが、付加価値税や非関税障壁も相互関税の対象となる見通しのため、相対的に付加価値税の高いEUや、ホワイトハウス高官が「構造的な(非関税)障壁が高い」とした日本への影響の懸念は残る。
■日米株もドル円もレンジ相場だが、貿易相手国の関税引き下げの流れなら市場の懸念は後退へ
なお、現時点ではすでに大統領選から約100日が経過したが、第1期トランプ政権では税制改革を先に進めた一方、現在の第2期トランプ政権では関税政策を先に進めている。
そのため、市場の動きも当時と今とでは異なるものとなっており、第1期トランプ政権では、ダウ平均、日経平均株価とも2ケタ上昇し、ドル円もドル高・円安の動きが顕著にみられた(図表2)。
現在の第2期トランプ政権では、ダウ平均、日経平均とも上昇しているが、レンジ相場となり、ドル円もレンジ内でほぼ変わらずの動きとなっている。
ボラティリティ(変動率)は、日米の株価は現在の方が相対的に高く、ドル円は落ち着いている。相互関税は米国経済への影響を考慮しながらの判断になると思われるが、多くの貿易相手国が関税を引き下げる流れとなれば、市場の懸念は徐々に後退していく可能性が高いとみている。
構成/清水眞希