
人の体の中のさまざまな活動に携わるたんぱく質。たんぱく質無くして体は機能しません。さらに、年を取るにつれ、若い頃と同じように食べてもたんぱく質の利用率は低下してしまいます。
だからこそ、45歳を過ぎたらたんぱく質は積極的に摂るべきと語るのは、医師で高齢者の栄養に詳しい吉田貞夫先生。たんぱく質というと筋肉というイメージですが、免疫力アップや血糖値の調整、血管や血液の健康にもかかわる重要な栄養素。おいしい「たんぱく質の朝ごはん」を取り入れて元気な体作りを始めてみませんか。
そこで、今回は吉田先生監修の『45歳過ぎたらたんぱく質の朝ごはん』(
たんぱく質は朝に摂るのが正解!
■朝は体がたんぱく質を欲している
毎朝、朝食をきちんと食べていますか? ギリギリまで寝ていたり、朝は食欲がないから食べないとか、コーヒーだけで済ませたりしている人も多いのではないでしょうか。それで大丈夫と思っていても、体の中は、たんぱく質が少なくなって、新しいたんぱく質が入ってくるのを待ちわびている状態です。新しく入ってこなければ、自分の筋肉を分解して不足分を補おうとします。それが毎日続くと……、当然筋肉は減っていきます。基礎代謝量が減り、太りやすくなり、体力も落ちていくという負の連鎖に陥ります。健康的な生活を送りたいなら、朝食でたんぱく質を摂ることがとても大切。ここで紹介しているように、メリットはたくさんあります。
■摂取量が増える
昔と比べて現代人はたんぱく質の摂取量が減っています。とくに食事に気をつけている健康志向な人ほど、意外とたんぱく質が不足していたりするのです。日本人の食生活でありがちなのが、夕食に魚や肉などたんぱく質の多い料理を食べ、 朝食や昼食は糖質が中心というパターンです。なかには朝食は食べないという人も。それではどうしても体に必要なたんぱく質量を摂取できません。朝食で何かしらたんぱく質を多く含む食品を取り入れるようにしてみませんか。チーズ、牛乳、 納豆、ゆで卵など、たんぱく質が豊富なものを1品でもプラスすれば、夜の間に消費されたたんぱく質を補うことができますし、結果的に1日のたんぱく質摂取量を増やすことにつながります。
■筋肉になりやすい
健康を維持するために筋肉は欠かせません。最近は筋トレに励む人も増えましたが、健康な人の場合、朝食にたんぱく質を摂って筋トレをした方が筋肉量が増えるという研究結果が出ています。これは女性に見られる傾向で、残念ながら男性にはあてはまらないそう。でも女性にとっては嬉しい発見ですね。筋肉が増えれば活動的になり、さらに筋肉を増やすことにつながります。
■体内時計が整う
人体には1日のリズムを刻む体内時計があります。実は、この体内時計の周期は約25時間だといわれています。地球の自転より少し長いため、毎日リセットして、時刻を合わせる必要があります。体内時計のリセットに必要なのが、朝日のような強い光を浴びることと、朝食です。朝食では、糖質によるエネルギーとともに、たんぱく質を摂ることが重要です。たんぱく質に含まれるアミノ酸の中には、体のリズムを整える働きをするものもあります。 近年は、時間栄養学という研究分野があり、体内時計と栄養摂取がどのように関わっているのか、つまり、栄養を摂取するタイミングで、その効果がどれくらい違うかについての研究が進んでいます。こうした研究によると、朝食でのたんぱく質の摂取量が多いほど、血圧が安定し、善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールの値は上昇しました。夕食は?というと、夜にたんぱく質の摂取量が多いほど、血糖を下げるホルモンであるインスリンの働きが弱まるという結果が出ています。日本人の死因の第2位である心血管系疾患(狭心症、心筋梗塞、心不全など)の発症を防ぐには、夜よりも朝にたんぱく質を摂るといいようです。
■活動的な1日が過ごせる
やる気を引き出すドーパミンや心を安定させるセロトニン。これらの神経伝達物質はたんぱく質に含まれるアミノ酸から合成されます。たんぱく質から作られるさまざまな物質が、脳の健康に重要な役割をしているのです。脳内でこれらの物質が不足すると、頭がぼんやりしたり、イライラしたりしやすくなって、無駄な1日を過ごすことにも。朝食にたんぱく質を摂取することで、1日の活動量を増やすことができるという研究結果があります。活動量が多いということは、筋肉を増やすことにもつながり、毎日を元気に過ごせるということです。ポジティブな気持ちで1日を元気に過ごしたいなら、朝のたんぱく質です。
■太りにくい
食事をしたあとに体が温まるのは、体内に吸収された栄養素が分解され、熱となって消費されるため。これを、食事誘発性熱産生(DIT;Diet Induced Thermogenesis)といいます。通常の食事では、摂取したエネルギーの約10%が消費されますが、たんぱく質のみを摂取したときは摂取エネルギーの約30%が消費されます。糖質のみの場合は約6%、脂質のみの場合は約4%しか消費されないので、たんぱく質は、他の栄養素よりも多くのエネルギーを消費します。脂肪となって蓄積されにくい可能性があるのです。朝にたんぱく質を十分に摂って、代謝を活発にすることで、体脂肪がつきにくい状態を維持することができます。ただし、たんぱく質のみを摂取するというのは実験上のことで、エネルギー源となる糖質もバランスよく摂ることがおすすめです。
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『45歳過ぎたらたんぱく質の朝ごはん』(宝島社)1320円
監修・吉田 貞夫
医師、医学博士。ちゅうざん病院副院長。沖縄大学健康栄養学部、金城大学の客員教授を兼任。日本栄養治療学会、日本病態栄養学会、日本離床栄養学会指導医。
2004年に沖縄に移住、2018 年より現職。2022年、骨格筋量推定システムで特許を取得。医療・介護従事者向けの講演のほか、一般向けのわかりやすくユニークな講演も人気。
著書に、『患者に話したくなる たんぱく質のすべて』、『患者に話したくなる 食物繊維・腸内環境のすべて』、『高齢者を低栄養にしない20の
構成/DIME編集部