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「冬眠すれば助けられる命が増える」人工冬眠研究のスペシャリスト・砂川玄志郎が抱く情熱

2025.02.23

国民的マンガ「こちら葛飾区亀有公園前派出所」に4年間ずっと寝続け、オリンピックの年のたった1日だけ目が覚める、日暮熟睡男(ひぐらしねるお)という伝説のキャラクターがいる。

警察官にもかかわらず4年に一度しか仕事をしない。ところが、恐るべき超能力で迷宮入りした難事件を次々と解決し、再び4年の眠りにつく。

眠りにつく際はまるで動物が冬眠するかのように、天丼10人前、焼肉20人前など大量の食事と水分を摂って脂肪を蓄えるという冬眠人間だったわけだが、実は近い将来、人間も冬眠できるようになるかもしれない。

「ヒトの冬眠」について本気で研究しているのが、理化学研究所の砂川玄志郎氏だ。砂川氏は冬眠生物学研究チームのリーダーとして、人間の人工的な冬眠を実現させようと日夜研究に励んでいる。

写真提供:理化学研究所

人工冬眠の可能性と夢の実現

たしかに、クマやヘビ、カエルなどの生き物は冬眠すると聞いたことがあるし、超絶ロングスリーパーのヒトも存在すると聞く。人間の冬眠もあながち不可能では無さそうだが、本当にできるのだろうか?

それより、なぜそこまでヒトの冬眠にのめり込んだのか知りたい。

今回、研究で多忙な中、砂川氏に話を聞くことができた。人工冬眠の可能性と夢の実現について詳しく伺った。

――冬眠研究を始めたきっかけから教えてください

「もともと僕は国立成育医療センターで小児科医として勤務し、重症の子どもを診る救急・集中治療科にいました。そこで亡くなってしまう子どもを数多く目にし、助かる命を増やせないか?とずっと考えていたんです」

「ちょうどその頃、「冬眠をするキツネザル」の論文と出会ったんです。マダガスカル島に冬眠するサルがいて、冬眠中の体温は20℃台まで下がるものの、冬眠から覚めると普通に復活すると書かれていたんです」

「ヒトは体温が30℃を切ると死に至る可能性が出てくるのですが、同じ霊長類のサルは何のダメージもなく復活する。しかも冬眠中は代謝が低下しているため、少ないエネルギーで生命を維持できる。サルと同じように、ヒトを冬眠させることができれば、助けられる命を増やせる、多くの子供たちを救えると思い、研究にのめり込みました」

病気の子どもたちを助けたい、その一心で砂川氏は母校でもあった京都大学の大学院に入り直し、まずは睡眠の研究に没頭。2015年からマウスを使って冬眠の研究を本格的にスタートさせた。

「もともとマウスは冬眠しない動物なんですが、ある条件下では数時間にわたって代謝と体温が低下する『日内休眠』という1時間程度のプチ冬眠状態になると知り、その状態に誘導するための方法を確立し、研究を進めてきました」

だが、日内休眠は決して冬眠ではない。動物のリアルな冬眠そのものを追求できていたわけではない。歯がゆさを感じながら研究を続けていたある日、光明が差す。

「マウスの脳の中の神経細胞群に低代謝を誘導できるスイッチのような場所があり、それを刺激するとマウスは約2日間、低体温状態を維持し、日内休眠とはまったく異なる冬眠状態に近づけることができると分かったんです」

これは、2020年に発表された筑波大学・櫻井武教授らとの共同研究による成果で、その神経細胞群を「Q神経」、刺激により引き起こされる低代謝状態を「QIH」と名付け、一躍話題になった。

「本来なら冬眠しないマウスでできたとことが大きな前進ですし、任意のタイミングで発生させられるようになったことが目に見える発見でもありました。これがヒトにも応用できれば、未来の冬眠技術の基盤になると思っています」

冬眠研究のスペシャリストは意外なゲームマニア!?

小児科医であり研究者でもある砂川氏だが、肩書きを尋ねると「プログラマー」との答えが返ってきた。その真意は?

「あらゆる作業の中で1つだけ選んでといわれたら迷うことなくプログラミングを選ぶからです。今でもコードを書くことは大好きですし、仕事に疲れたらコードを書くことがあります」

「最近は、AIの進歩により新しいコンピューター言語を学ぶコストがとても下がったので楽しくてたまりません。もともとPascalが一番好きな言語なんですが、最近仕事上ではRやPythonを用い、趣味ではC# でゲームを作ったりしています」

なるほど(ごめんなさい全然わかりません)

筆者自身、ゲームやプログラミング界隈に全く疎いため何を言っているのかわからなかったが、伝わる人には伝わっているはず。

実は砂川氏、幼い頃から「プログラマー」だった。

5歳の頃には父親のパソコンでプログラムを書き、小学1年生のときには当時発売されたばかりのファミコンに熱中。

そして中学・高校時代はプログラミングとコンピュータゲーム漬けの日々を送り、本格的な子ども向けゲームをプログラミングしていたという。当然、将来の夢はプログラマー。子どもが楽しめるゲームをつくろうと決めていた。だが、

「循環器内科の医師で研究者でもあった父から『子どもの役に立つようなことがやりたいなら、医療がいいんじゃないか?』と提案され、小児科医を目指すことになったんですよね」

写真提供:理化学研究所

現在も忙しい仕事の合間を縫って、ゲームを楽しむ日々。最近のお気に入りを聞くと、

「ハマっているとまでは言えませんが、この数年では「エンダーリリー」が印象的でした。幻想的で美しい世界観と奥深いストーリーが本当に魅力的なんです。そして、つい最近続編の「エンダーマグノリア」がリリースされました!ダウンロードは済ませたのですが、まだプレイできていなくて…(笑)。前作がとても印象的だったので、続編ではどんな物語に出会えるのか、とても楽しみにしています。「エンダーリリー」の良さって、プレイヤーを物語の中に引き込む演出や美しい音楽、そしてなんといっても絶妙な難易度のアクションなんですよね。「エンダーマグノリア」でもその魅力がさらに進化していると聞いていますので、時間を作ってじっくり遊びたいと思っています!」

ゲームの話になった途端、猛烈な勢いで溢れる想いを伝えてくださった。本気すぎるゲーム愛は文面からも感じ取れることだろう。

幼い頃から熱中したゲームの世界は趣味にとどめ、現在は医師、研究者としての道を歩んでいる砂川氏。だが、どちらも根底にあるのは「子どもたちを笑顔にしたい」という使命感にも似た思い。医師の経験を経て、それはより強くなった。

「子どもは自然回復力が高いので、たとえ病気になって重症化の危機が訪れても、「今を乗り越えれば何十年も生きられる」という状況が数多くあるんです。そんな危機を乗り越えられる時間稼ぎとして人工冬眠が役立つはず。救える命がもっともっと増えると思っています」

2040年までの実現へ。人類の可能性を広げる旅路

冬眠の研究を始めて約10年。冬眠動物のメカニズムに今なお、度々驚かされているという。

「特に興味深いのは、冬眠中の動物が低体温や低酸素状態にあっても全くダメージを受けないことです。通常、人間であれば心停止や組織の損傷が起こるような環境でも、冬眠動物はそのまま生き延びることができる」

「たとえば、クマは冬眠中、何ヶ月も動かなくても筋力を失わず血栓もできません。こういった仕組みを人間に応用できれば、医療の分野で大きな革命が起きると思います」

大きな革命とは?

「先にも言いましたが、医療分野では重症患者さんを一時的に冬眠状態にして時間を稼ぐ「時を止める医療」が可能になり、進行が早い疾患も遅くできるかもしれません。また、数十年もかかる宇宙旅行中に冬眠を活用することで、エネルギーや食料の消費を抑えられるという活用法も考えられます」

目指すは、2040年までの実現。ヒトの冬眠を実現させるために今必要なこととは?

「今抱えている重要な課題は、冬眠の仕組みをヒトに安全に適用するための具体的な方法を確立することです。そのためには、動物実験を通じて冬眠を引き起こす薬剤や刺激法の開発を進めるだけでなく、低代謝や低体温が体に与える影響を精密に理解することが求められます」

さらに、壮大な挑戦の成功には多くの力が必要だという。

「この研究が特別なのは、その可能性のスケールが「人類の未来」を変えるレベルにあるからです。人工冬眠が実現した未来を想像してみてください。それは、人類の生き方そのものを根底から変える「ディスラプティブ・イノベーション」の象徴となるでしょう。医学の歴史において、ペニシリンの発見や全身麻酔、iPS細胞の誕生がそうであったように、人工冬眠の実現もまた、人類の限界を超える瞬間になるのです」

「この記事を読んで、「それなら自分も冬眠研究に挑戦してみたい」と思った方がいれば、是非その好奇心を大切にしてほしいです。この分野はまだ新しく、未解明の領域が広がっています。あなたの視点やアイデアが、冬眠技術の未来を切り開く鍵になるかもしれません。一緒に人類の可能性を広げる旅にでかけてみませんか?」

取材協力
理化学研究所 生命機能科学研究センター

砂川玄志郎氏 X

文/太田ポーシャ

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