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円安や海外の物価上昇などの影響で不振となっている海外旅行。内閣府が発表した令和6年度 年次経済財政報告でも海外旅行者数はコロナ禍前の6割強にとどまっていることが報告されており、海外旅行へ行く人は限られているというのが現状だ。
しかし、そのような中でも人気を集めているのが「フィンランドのオーロラ観賞ツアー」。北欧専門旅行会社「北欧旅行フィンツアー」では40~60万円の高単価商品が飛ぶように売れ、今シーズンの添乗員付きツアーはほぼ完売した。
なぜ、今フィンランドのオーロラ観賞ツアーが完売続出しているのか、その理由や客層を北欧旅行フィンツアーの三輪哲也さんにお伺いした。
オーロラを鑑賞するなら、太陽活動が活発となる“今”が当たり年
北欧旅行フィンツアーの三輪哲也さん。
北欧旅行フィンツアーは1983年に創業し、フィンランドを中心に北欧4か国、バルト三国、アイスランドなどへの旅を取り扱う北欧専門旅行会社。基本的に現地手配も自社で行い、添乗員付きのオーロラツアーはフィンランドでの駐在経験がある社員が添乗してくれるのが特徴だ。三輪さんは2010年に入社し、6シーズンフィンランドに駐在。
現在は添乗員としてオーロラツアーに同行するほか、フィンツアーが運営する表参道の「Hyvaa Matkaa!」で開催されるオーロラツアー説明会の講師も務め、オーロラ鑑賞の魅力や基礎知識を伝えている。
三輪さんが2024年9月にフィンランドのロヴァニエミで鑑賞した、珍しい赤いオーロラ。写真提供:北欧旅行フィンツアー
三輪さんによると、オーロラ観賞ツアーが人気となっている最たる理由は「オーロラの当たり年」ということ。2024年5月には日本でもオーロラが観測されて話題となったが、オーロラ発生条件として重要な「太陽」は約11年周期で活動が活発となり、2023年から2026年ごろにかけて、太陽活動が極大となるとされている。
画像提供:北欧旅行フィンツアー
三輪さん「オーロラは太陽から放たれたプラズマ粒子が地球の裏側に集まり、地磁気に引かれて極地から地球に集まる現象です。オーロラは地上60~500kmの電離層で発生し、みなさんがよくイメージされる緑色のオーロラは地上80~200kmで発生した時に見えるもの。ただしよく写真で見かける緑色のオーロラは実際に見ると雲とわからないほど白っぽく見えることが多く、オーロラか、雲かを判別するにはコツが必要です。
一方、地上200~300kmで発生した時に見える赤いオーロラはとても強く、まさに天体ショーといった現象。その赤いオーロラの発生率が高くなるのが、太陽活動が活発となる“今”なのです」
iPhone 16で撮影したオーロラ。写真提供:北欧旅行フィンツアー
今シーズン人気のフィンランドオーロラ観賞ツアーの料金は、添乗員同行で約40~60万円(7~8日間、時期によって価格は変動)。コロナ以前は同日数で30万円台のツアーも多かったが、今はユーロ高や物価高の影響でツアー料金は高騰。しかし、ほぼ完売という状況だ。オーロラ観賞という高付加価値な体験は、それに見合うと判断する人が多いというあらわれである。
三輪さん「オーロラは“死ぬまでに1度見たい”現象の代表格です。確かにコロナ前より料金は上がっていますが、お客様はみなさまほかの海外ツアーと比較し、納得した上でお申し込んでいただいてると考えています。また、今は高性能な最新スマートフォンであれば、一眼レフではなくともオーロラ撮影ができ、『旅行で撮影を楽しみたい』というニーズにも合っていると思います」