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県内の認知度は9割超!実はスゴい「ぐんまちゃん」キャラクター戦略の裏側

2025.02.23

今から遡ること十数年前、2010年台に加熱した地方自治体による「ゆるキャラブーム」を覚えているだろうか。各都道府県が地元の活性化のため、こぞって「ゆるキャラ」を生み出し、群雄割拠の時代が訪れた。当時は全国のご当地キャラの中からナンバーワンを決める「ゆるキャラグランプリ」も盛り上がりを見せ、『くまモン』や『せんとくん』、『ひこにゃん』といったスターが誕生した。

2025年の今、「ゆるキャラブーム」はもはや懐かしいと感じるものになってしまったが、現在も人気が衰えないどころか、地道に認知を広げ続けているキャラクターがいる。2014年に「ゆるキャラグランプリ」で1位を獲得した、群馬県のマスコットキャラクター『ぐんまちゃん』だ。

国民の約半分が認識する「ぐんまちゃん」の人気

(C)群馬県 ぐんまちゃん

「日本リサーチセンターの調査によると、全国におけるぐんまちゃんの認知度は現在49%ほど。日本国民の約半分が知ってくださっています。2014年に『ゆるキャラグランプリ』で1位を獲得した当時の認知度は36%ほどでしたので、この10年間でぐんまちゃんの認知度は年々右肩上がりになっています。県民に限っていえば、その認知度は実に9割超で、ぐんまちゃんの存在を知らない方はほとんどいないのではないかと思います」

そう語るのは、群馬県メディアプロモーション課ぐんまちゃん推進室の小野大成さん。同部署ではぐんまちゃんを基軸とした群馬県のPRを行っており、いわばぐんまちゃんの〝マネージャー〟的存在だ。

「私たち、ぐんまちゃん推進室の究極の使命は『ぐんまちゃんのファンを増やすこと』です。というのも、ぐんまちゃんは群馬県の名前そのものを背負ったキャラクター。ぐんまちゃんを知っていただくことが、群馬県を知っていただくことに直結するのではないかという考えから、ぐんまちゃんを盛り上げることに力を入れています」(小野さん)

意外なコラボグッズも発売されている/(C)藤岡雅樹,小学館 ,群馬県 ぐんまちゃん

ぐんまちゃんに関連するグッズの売り上げは、なんと年間で432億円(2023年)にものぼる。もはや「地方自治体のキャラクター」という括りにとどまらず、全国で支持されるひとつのIPとしてキャラクター戦略が大成功している。

「ぐんまちゃんが誕生したのは、今から約30年前の1994年。群馬県で開かれた『ゆうあいピック群馬大会(第3回全国知的障害者スポーツ大会)』の公式キャラクターとして生まれました。当時から多くの県民に愛され、2008年には銀座に『ぐんまちゃん家』というアンテナショップ(※2022年閉店)ができたり、2012年には群馬県の宣伝部長を就任したりと、県内から県外へと群馬県の魅力を発信する活動を行ってきました。そして、大きなターニングポイントとなったのが、2019年の山本一太県知事の就任です。山本知事が群馬県のエンタメ産業へと力を入れていく中で、ぐんまちゃんもご当地キャラクターの枠を超え、一キャラクターとしてブランド化しようという戦略を掲げるようになりました」

時代に合わせたぐんまちゃんのキャラクター戦略

恐れずに地方自治体の勝手なイメージをいえば、〝先進的な取り組みには消極的で、施策の承認スピードは遅い〟。行政があらゆる施策に対して慎重になるのは当然のことだが、それでは大企業が発信するようなIPと肩を並べるキャラクターへと育てるのは難しい。

そんな中、ぐんまちゃんを取り巻くチャレンジは実に〝今っぽい〟。

XにInstagram、さらにはZ世代を中心に人気を集めるTikTokと、SNSでの発信に注力し、総フォロワー数は2025年2月現在で15万人を超える。しかも、「ぐんまちゃんの周りの人の視点」で投稿される〝事務的でお堅い内容〟ではなく、「ぐんまちゃんの視点」で投稿されるゆるくてシュールな内容が特徴だ。

@gunmachan_official はやってるやつ1ヶ月間ずっと練習してみたよ~🐴こんどこそ…❣️ #ぐんまちゃん #ゆるキャラ #slickback #スリックバック #おもちゃと人形自動車博物館 #きみは次に群馬を好きになる ♬ オリジナル楽曲 – ぐんまちゃん

中高生に人気の「踊ってみた」動画も積極的に投稿している

「ぐんまちゃんの最大の魅力は、かわいくて癒しを与えてくれることです。誰のことも否定しない、どんなことに対しても『よかったね』と寄り添ってくれる、友達のような存在なんです。だから、SNSを見ていただいた方にくすっと笑ってもらえたり、ちょっと疲れを忘れてもらえたりするような投稿を心がけています。ぐんまちゃんと職員たちで会話をしながら、新卒の若手メンバーから歴の長い室長まで、経験の差は全く関係なく意見を取り入れています。

確かに行政は承認に時間がかかる部門もありますが、『ぐんまちゃんをいかに人気者にするか』に専念できるぐんまちゃん推進室が作られているからこそ、そこはスピード感を持って実現できていますね」

アニメ『ぐんまちゃん』より/(C)群馬県 ぐんまちゃん

SNSに注力する背景について、「県内はもちろん、県外の方も気軽にぐんまちゃんと会えるようなきっかけを作りたかった」と小野さんは話す。ぐんまちゃんとの「接点」を増やす取り組みはSNSだけでなく、2021年からアニメ『ぐんまちゃん』がスタートし、2024年にはWebCMが作られた。

WebCMで宿敵『ぐんまさん』を演じる中村俊介さん/(C)群馬県 ぐんまちゃん

「認知度を上げるというミッションに対し、リアルイベントの施策だけでは限界を感じていました。動画であれば、直接会いにくることは難しい県外の皆さんも、オンラインでぐんまちゃんに会うことができる。だからこそ、アニメやYouTubeで視聴できるWebCMを作ることにしました。

昨年制作したWebCMでは、草津町出身の俳優・中村俊輔さんがぐんまちゃんの宿敵『ぐんまさん』を演じてくださっています。すごく攻めた内容だったのでダメ元で依頼をしたのですが、二つ返事でお引き受けくださり、結果として多くの反響をいただきました。

また、アメリカの『Crunchyroll(クランチロール)』 というサービスでアニメが配信され、それをきっかけに北米最大級のアニメコンベンション『アニメエキスポ』に2年連続で参加しました。当日はぐんまちゃんを知らない海外の方からも〝GUNMACHANコール〟が沸き起こり、ぐんまちゃんのかわいさや癒しはアメリカでも伝わるのだと改めて実感しました」

『アニメエキスポ』の様子/群馬県 ぐんまちゃん

愛されるキャラクターを育てるために重要なこととは?

ぐんまちゃんのブランディングを高めていくうえで、群馬県は具体的に何から着手したのか。ぐんまちゃん推進室長の桑名かおりさんは以下のように話す。

「2019年にブランド化の戦略を打ち出した当時、25年以上の歴史を持つぐんまちゃんのプロフィールを緻密に話し合うことから始めました。それまで存在していたのは『人間でいえば何歳くらい?』程度のプロフィール。ぐんまちゃんの生みの親であるイラストレーターの中嶋史子さんと共に中嶋さんの持つぐんまちゃんの世界感を中心に、毎週2時間、半年くらいかけて『ぐんまちゃんとは何ぞや』を突き詰めていったんです。家族はいるのか、どんなことが好きで、日々どう暮らしているのか、と」(桑名さん)

その結果生まれたのが、これまでぼんやりとしか存在しなかった〝ぐんまちゃんを取り巻く世界観〟。世界観が決まれば、キャラクターの輪郭がはっきりと定まっていく。

「ぐんまちゃんは、〝ぐんまちゃん〟という唯一無二の生き物です。生まれた場所は平仮名で『ぐんま』と書く世界。家族もそこに住んでいます。それから、群馬県庁にワープしてやってきて、我々と一緒に群馬県をプロモーションする宣伝部長に就任することになりました。ぐんまちゃんが元々住んでいた『ぐんま』には、お父さんやお母さんがいて、友だちだっている。こんな想像から、『あおま』や『みーみ』というぐんまちゃんを取り巻くキャラクターも誕生していきました。

先ほど紹介したSNSの投稿も、アニメやWebCMも、その世界観を伝える延長として地続きで制作しているものになります。中嶋史子さんが空想の世界でお考えになっていたことを具現化していく中で、ぐんまちゃんのクオリティや信頼といったブランドが確立していったように思います」(桑名さん)

左からあおま、ぐんまちゃん、みーみ/(C)群馬県 ぐんまちゃん

デジタルとリアル、目指すは「いつもそばにいるぐんまちゃん」

(C)藤岡雅樹,小学館 ,群馬県 ぐんまちゃん

「ここまでデジタルに特化した話をしてきましたが、リアルでぐんまちゃんのことを知ってもらう機会もずっと大事にしています。30年愛され続けてきたぐんまちゃんをこれからの世代にも認知してもらうため、マクドナルドのハッピーセット®のように小さい頃からぐんまちゃんに慣れ親しんでいただくため、幼稚園や保育園を訪問するキャラバンを続けています。

また、昨年は30周年を記念して、ぐんまちゃんがホストとなり全国のキャラクターをお招きするリアルイベント『ご当地キャラカーニバル』を開催し、2日間で4.1万人の来場者を記録しました。今のぐんまちゃんの認知度の高さは、こうしたリアルを大切にした取り組みも反映された結果だと思っています。

今後は、ぐんまちゃんを愛してくださっている県民の皆さんが『ぐんまちゃんを応援していて良かった』というキャラクターに育てていきたいし、県外や海外の皆さんには『ぐんまちゃんがいる群馬県へ行ってみたい』と思ってもらえたらうれしい。そんな理想のために、これからも戦略を練ってぐんまちゃんのバックアップを全力でしていきたいです」(小野さん)

2024年9月28日~29日に開催された『ご当地キャラカーニバル』/(C)群馬県 ぐんまちゃん

2月22日には、30周年の魅力が詰まった初の公式写真集『ぐんまちゃんBOOK』(小学館)が発売された。デジタルとリアルはもちろん、〝そばにいる愛されキャラ〟を目指し、ぐんまちゃんの地道なチャレンジは続く。

ぐんまちゃん初となる公式写真集も発売中!

『ぐんまちゃんBOOK』
1,650円(税込)

みんなを癒やす不思議な力で、群馬県民をはじめ、全国のゆるキャラファンの心をつかんできたぐんまちゃん初の公式写真集が登場!30年にわたるぐんまちゃんの活動の軌跡を、地元の観光名所や人気スポットを巡る可愛らしい写真とともに振り返ります。

【Amazonで購入する】

【楽天ブックスで購入する】

取材・文/井田愛莉寿(編集部)

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