
2025年2月6日、GMOは「“ネットのセキュリティ”新事業戦略発表会」を実施。ネットのセキュリティに関する新たな取り組みとして、24時間無料で使える「GMOセキュリティ24」を開始することを発表した。
インターネットをより安全に楽しむために
発表会にはまず、GMOインターネットグループ グループ代表の熊谷正寿氏が登壇。近年、激化しているサイバー攻撃やサイバー犯罪に言及し、「インターネットは悪意を持つ者の道具になってしまったのでしょうか。この現状に深く心を痛めています」と告げた。
GMOは、1995年にインターネットの接続事業を創業。「すべての人にインターネットを」を合言葉に、ドメインやサーバーなど、ネットインフラ事業で1500万契約。ネット銀行、ネット証券などのネット金融事業を含めると1800万契約を超える総合インターネットグループだ。
セキュリティ事業にも2003年に着手。盗聴、改ざん、なりすまし防止、ログイン認証強化のためのSSL(Secure Sockets Layer)販売事業から、なりすまし監視・削除支援、サイバー攻撃対策とセキュリティ事業を展開。現在ではグループ従業員約8000人中、約1100人がセキュリティ関連サービスに従事する国内最大級のセキュリティ事業者へと成長した。
そんな背景から、インターネットをより安全で楽しい空間にするために、「すべての人に安心な未来を」のキャッチフレーズのもと、ネットのセキュリティに関する新たなプロジェクトである「ネットのセキュリティもGMO」を開始。その第一弾として新サービス「GMOセキュリティ24」をスタートする。
「GMOセキュリティ24」。
パスワード漏洩診断やAIチャットボットサービスを提供
「GMOセキュリティ24」は24時間無料で使える総合ネットセキュリティサービス。「パスワード漏洩・Webサイトリスク診断」と「セキュリティ相談AIチャットボット」の2つの機能を備える。
「パスワード漏洩・Webサイトリスク診断」は、メールアドレスやURLを入力するだけで、セキュリティリスクを簡単にチェックすることができる。Webサイト診断では脆弱性、クラウド利用、なりすまし、盗聴の4つの診断項目をまとめて確認できる。これは様々なセキュリティサービスを提供するGMOインターネットグループならでは。
そして「セキュリティ相談AIチャットボット」は、グループセキュリティ各社の知見を学習させ、特別に訓練して開発したAIが、24時間365日、セキュリティの不安や疑問に回答してくれる。
熊谷代表は、泥棒のリスクに対して鍵を点検したり、警察に連絡することを例に掲げ、「インターネットの世界ではサイバー攻撃の脅威を感じても、どう対応していいのかわからないのが実情。そこで24時間無料で問題点を把握できるサービスを行ないます」とサービス提供の背景について説明した。
セキュリティ4社とホワイトハッカーたちが支える新サービス
発表会には同グループが誇るセキュリティ4社のGMOグローバルサイン、GMOサイバーセキュリティ byイエラエ、GMO Flatt Security、GMOブランドセキュリティの各社長が登壇。各社、事業内容について説明した。
GMOグローバルサイン 代表取締役社長の中條一郎氏
「インターネット上でやり取りされる情報を暗号化して情報を守ると共に、盗聴・改ざん・なりすまし防止・ログイン認証強化の事業を展開しています。グローバル展開している4大認証局の中で、日本に本拠地を構えて運営しているのは当社のみです。日本国内シェアは約50%で第1位。一般企業だけでなく、歴代総理大臣、省庁でも多数導入いただいています」。
GMOサイバーセキュリティ byイエラエ 代表取締役の牧田 誠氏
「日本のサイバーセキュリティを守ることがミッション。総勢300人の内、ホワイトハッカーが約120人在籍しています。彼らはハッキングコンテストの世界1位を2年連続で取得したり、多くの大会で優秀な成績を残しています。コンテストで磨いた腕を使ってお客様がまだ気づいていないサイトの脆弱性を多く発見しています」。
GMO Flatt Security 代表取締役社長の井手康貴氏
「Web、クラウド、DXの守りに特化したセキュリティ企業です。国内最高レベルのセキュリティエンジニアによる高度なサービスと、その職人技を自動化するサービスにより、ソフトウェア産業を支えています。これからも日本のDXをより加速させていければと思っています」。
GMOブランドセキュリティ 代表取締役社長の中川光昭氏
「インターネット上のなりすまし行為を発見して、排除することを中心にサービス営業を行っています。企業ブランドだけではなく、有名人や著名な経営者などのなりすましサイトが非常に急増しており、お客様からのニーズも大変高まっています。フィッシングサイトや偽SNSアカウントなどのなりすまし行為による被害を1件でも減少して、安心安全なインターネット環境の提供に貢献していきたいです」。
(写真左から)GMOグローバルサインの中條氏、GMOサイバーセキュリティ byイエラエの牧田氏、GMO Flatt Securityの井手氏、GMOブランドセキュリティの中川氏。
これらのセキュリティ4社を支えているのが、世界をまたにかけて活躍するホワイトハッカーたちを中心としたセキュリティスペシャリストたち。発表会ではGMOが誇る7人のホワイトハッカーたちの紹介も行なわれた。
GMOサイバーセキュリティ byイエラエからは、元国際刑事警察機構(インターポール)に世界で初めて民間出向した福森大喜氏、総務省のサイバーセキュリティエキスパートを務める奥野史一氏、IOTセキュリティの世界的第一人者の林 彦博氏、国連の専門機関で国際標準勧告の策定にも携わった阿部慎司氏、新入成功率90%超という凄腕ハッカーチームを率いる村島正浩氏の5人。そしてGMO Flatt Securityからは、セキュリティ技術の競技大会でアジア代表のキャプテンを務めた米内貴志氏、世界的に有名なセキュリティコンテストでも大活躍する志賀遼太氏の2人が登壇した。
(写真右から)リモート参加した福森氏、奥野氏、林氏、阿部氏、村島氏、米内氏、志賀氏。
今回、スタートする「GMOセキュリティ24」は、これらセキュリティ4社と、様々なセキュリティ分野で活躍するホワイトハッカーたちが支えていく。
診断結果によって一人一人がセキュリティリスクを認識すること
「GMOセキュリティ24」では、「パスワード漏洩・Webサイトリスク診断」と「セキュリティ相談AIチャットボット」の2つの機能を、世界で初めて24時間無料で提供する。発表会ではこれらのサービスのデモンストレーションも行なわれた。
「パスワード漏洩は今、世界的に非常に重要な課題です。2024年にはあるハッキングフォーラムから100億件近くの漏洩したパスワードが公開されました。おそらく本人は気付いていないのだと思いますが、多くの人のパスワードが漏洩しています」とGMOサイバーセキュリティ byイエラエの牧田氏。
同社ではホワイトハッカーによる侵入テストというサービスを提供しているが、この成功率は90%以上にもなると言う。上場企業でセキュリティに予算が使われている大手企業でも、パスワード漏洩の危険性がある。実際に「パスワード漏洩・Webサイトリスク診断」を試してみて、一人一人が課題を認識することが大事だ。
診断方法は簡単で、「GMOセキュリティ24」サイトでメールアドレスやURLを入力。本人確認の意味も含めたメールが届いたら、そのメールのリンクをクリックすることで、パスワード漏洩診断の結果がわかる。Webサイトの診断は結果が届くまでに30分程度時間を要する。
実際にパスワード漏洩診断してみたところ、筆者はなんと5つのパスワードが漏洩した可能性があるという結果になった。漏洩したことがわかれば、パスワードを変更しておく。その際、英数記号を含む強固なパスワードにしたり、二要素認証の導入がおすすめとのこと。またWebサイトリスク診断については、Webサイトに脆弱性があり、なりすましリスクは低いものの、定期的にチェックすることを促された。
パスワード漏洩診断結果。パスワードが漏洩した可能性のあるサイトが5つもあった。
Webサイトリスク診断結果。4つの項目で安全性が診断される。盗聴防止(SSL)診断は数日かかる場合がある。
リスクのある部分について指摘があった。総合的な評価では異常はなかった模様。
「セキュリティ相談AIチャットボット」については、GMOインターネットグループ グループ研究開発本部 AI研究開発室 室長の片野道雄氏がデモンストレーションを行なった。
「セキュリティ相談AIチャットボット」のデモを行なう片野氏。
「GMOセキュリティ24」サイトのタブを「その他のセキュリティ相談」に切り替えて質問すると、原因や結果、対策などの方法をチャット画面に表示する。追加の質問をすることも可能。
筆者は最近、Instagramへの不正ログインのメールが届くので、その対策について質問してみた。そもそも届いたメールの真偽を確認することから始まり、パスワードの変更、二段階認証の導入などについてアドバイスしてもらった。
「インターネットのセキュリティに関する相談は、24時間365日、いつでも無料で気軽にお寄せいただけます。不安や悩みをさらに解決できるよう、セキュリティ各社の知見をAIで活用して、さらに学習させてブラッシュアップしていきます。ぜひお使いください」と片野氏。
GMOインターネットグループではセキュリティに関する様々なサービスを提供している。「GMOセキュリティ24」の診断結果で不安を感じた場合は、セキュリティ対策を有料で依頼することもできる。
それぞれのサービスを実際に使ってみた。パスワードの漏洩がわかった時にはドキッとしたが、その対策などについて促してくれたので安心できた。最近、気になっていたことについて質問できたので、手軽に疑問が解決し、知識を得られるところに頼もしさを感じた。
今回の「GMOセキュリティ24」のサービスは第一弾。GMOインターネットグループではネットのセキュリティに関する第二弾のサービスについても提供を予定する。
取材・文/綿谷禎子