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■連載/大森弘恵のアウトドアへGO!
豪華な装備を盛り込んだキャブコンに憧れるけれど運転するのが難しそう。
そうイメージするのも不思議ではない。事実、バンクベッド付きで全高2m超えは当たり前なのでアンダーパスや駐車場は今にもこするのではないかと緊張するものだ。それに架装部分が左右に大きく飛び出していると見切りが悪く、これも運転が怖いと感じる理由となっている。
けれども見た目の迫力に反して、キャブコンのベースに用いられているカムロードは最小回転半径が4.9m、トラビオにいたっては4.4m。
ハイエースが5m以上でスーパーロングになると6m超なので思っている以上に小回りが効くのだ。
1月31日~2月3日、千葉・幕張メッセで開催された「ジャパンキャンピングカーショー2025」では、カムロードやトラビオをベース車に採用しつつ、全長5m以下、全幅2m以下に抑えたちょっとだけ小さくて見切りのよいキャブコンの存在感が高まっていた。
マルチルームはないけれどその分ゆったり
▲ナッツRV「ジョリビーType-X グランデ」(798万6000円~/展示車798万6000円)
「コンパクト&ルーミー」をテーマにカムロードを架装した「ジョリビー」のサイズは4790×1960×H2720mm。
これまでナッツRVでは「ジープニー」(4990×2000×H2800mm)が家族にちょうどいいとされていたが、「ジョリビー」はさらにコンパクトにまとめているのだ。
上位モデルと同じ高断熱コンポジットパネル、同社自慢の急速充電システム「エボライト」を標準装備。手にしやすい価格に収められているのに満足度が高いのはさすが。
「ジョリビー」のレイアウトは二段ベッド&マルチルーム付きのWと、マルチルーム無しでダブルベッド&大収納庫を搭載したXが用意されていて”コンパクトなのに広い!”という感動を得たいなら断然展示車両のXだ。
そしてそれぞれに必要装備を搭載したグランデ仕様、装備を抑えたアバンテ仕様から選べる。
後部の常設ベッドは1200×1806mm。ウッドスプリングを用いた寝心地のよさが自慢だ。マルチルームがない分、全体を見渡せるので開放感抜群。
外部シャワーとしても使える蛇口とFRP製シンクを搭載。展示車両のグランデ仕様は60L冷蔵庫も標準装備だ。
ダブルベッドの下は収納庫。クルマの外3方向にドアがあるほか、車内ベッド下からもアクセスできる。
引き出して使うスライド式バンクベッドは大人2名が余裕で横になれる1806×1790mm。また対面ダイネットも1920×900mmのベッドになる。
7人乗車/5人就寝としているが、ひとり分のベッド幅は500mm、長さ1800mmなので、ギュッと寄り添えば7人全員で眠れそう。
だれにも邪魔されない常設二段ベッドモデル
▲エートゥゼット「ACE-M」(764万5000円~/展示車799万7000円)
「ジョリビー」と同じカムロードベースでありながら、さらにコンパクトに仕上げたのが7人乗車/大人4人+子ども3人就寝としたのが「ACE-M」。4650×1940×H2730mm。
対面ダイネット、マルチルーム無しで「ACE-M」は常設二段ベッドを備えている。ダブルベッドの広さは魅力だが寝返りなどで不意に起きてしまうことがある。二段ベッドでひとりずつ眠れば、邪魔されることなくぐっすり眠れるのがいい。
FFヒーターとマックスファンを搭載しても800万円を切るリーズナブルな価格も魅力。
後部の常設二段ベッドは800×1800mmでひとりで寝るには十分な広さ。ほかにサンルーフ付きバンクベッド(1500×1800mm)、ダイネットベッドが備わっている。もちろんクーラーも標準装備。
電子レンジ、49L冷蔵庫、深めのシンクなどコンパクトながら使い勝手のよいギャレーが備わっている。
AT限定免許にうれしいキャンピングカー専用シャーシ
▲キャンパー鹿児島「TaBee-Ks Jr.」(998万9511円~/展示車1108万3175円)
対面ダイネット、2段ベッド、マルチルームとキッチンを備えた同社キャブコン「TaBee-Ks」(4990×1990×H3050mm)の機能性はそのまま、一般的な駐車場に収めやすい4930×1770×H2930mmにまとめたのが「TaBee-Ks Jr.」。
AT限定普通自動車運転免許に対応するいすゞ トラヴィオシャーシがベースで、トラビオのバッテリー電圧やエンジンオイルの交換時期などをスマホで管理できるなど、若いファミリーが手にしやすいキャブコンとなっている。
後部には二段ベッドとマルチルーム、ギャレーを装備。二段ベッドは1650×795mmとややコンパクト。
バンクベッドは1950×1615mmで、こちらは大人が2~3名で横になれる。出入り口の上にエアコン、シンクの上に電子レンジが標準装備。冷蔵庫は買ったモノをすぐに保管できるよう出入り口脇に設置され、その上を作業台として使えるようになっている。
料理好きも納得の充実キッチン
▲ダイレクトカーズ「Osteria」(798万円~/展示車1035万4000円)
カムロードベース
車名はイタリア語で「ワイワイ楽しくカジュアルに料理や酒を楽しめる場所」という意味。4800×1950×H2850mmというコンパクトサイズでありながらカセットこんろではなく一口ガスコンロを装備。深めのシンク、80Lの冷蔵庫などなかなか充実したキッチンが特徴だ。オプションとなるが電子レンジの取り付けも可能で、気に入ったキャンプ場でのんびり料理を楽しむのにもってこい。
バンクベッドの底を利用して大型テレビを配置し、ダイレクトカーズらしさ全開。テレビの脇にはオプションの電子レンジを収納している。
このクラスには珍しいビルトインされたガスコンロ。これだけでも料理のテンションがあがる。ちなみに写真左奥にはマルチルーム、2段ベッドが備わっている。
ダイネット上部には収納棚と並んで、カバーで目隠しされた家庭用エアコンが取り付けられている。
ベッドスペースが個室となる柔軟さが魅力
▲バンテック「ASTRARE TRIAS480」(1104万8000円~/展示車1240万7960円)
カムロード ワイドトレッドを用いた「ASTRARE」シリーズの最新作「ASTRARE TRIAS480」。4800×1960×H2700mmというコンパクトなボディを最大限に活かすためのギミックが満載だ。
そのひとつがマルチスペース。
パッと見はよくある二段ベッドなのだが、仕切りカーテンが付いている。ベッドマットを組み替えることでプライベート空間に、さらにカーテンを閉めれば簡易トイレにもなるという。ユーザーが自由に使える柔軟さがうれしい。
また同社キャブコン「ジル」のようにスライドアウトする外部収納も搭載しており、ゴミや濡れてしまったアウトドアギアの収納にぴったり。
一見、よくある二段ベッドだがじつはいろいろな使い方ができるマルチスペース。
マルチスペース内とシンク脇にはマグネット対応のボードがかけられているなど細かなところまで目配りされた設計だ。
広さを確保するために3人掛けとひとり掛けの横向きシートでテーブルを囲むこの。テーブルは昇降式で、そのまま低くすることでベッドにできるという。
引き出せる外部収納庫。車内に入れるのをためらってしまうモノも気兼ねなく持ち運べる。
従来のライトキャブコンのベース車はタウンエースやボンゴが主流だったが、カムロードやトラビオはそれらよりもパワフル。価格はやや上がるが、似たサイズでも長距離移動がよりラクになる。軽自動車以上の小さめキャブコンで、カムロードやトラビオが採用されるようになったのは大歓迎だ。
取材・文/大森弘恵